Photo: 山之内 渉

正直に言うと、最初はハーマンミラーの代名詞「アーロンチェア」がお目当てでした。アーロンを選んでおけば、まず間違いないだろうと。

ところが、ショールームであるチェアと座り比べた瞬間に、その考えは吹き飛びます。店員さんの「エンボディは深く座って、後ろに体重を預ける人ほど相性がいいですよ」という言葉通り、背中を預けたときのフィット感が段違いだったんです。

当時の価格は約25万円。震える指で決済ボタンを押しましたが、結論から言えば「大満足」でした。購入から1年半、週6日・1日8時間以上座り続けて分かった 「エンボディチェア」の良さを語らせてください。

とにかく座り心地がいい

座り心地は、「座っている」というよりも、体重が分散されて「浮いている」感覚に近いです。長時間座っていても、お尻が痛くなったり、太ももの裏がしびれたりすることがほとんどありません。

この独特な座り心地を生み出しているのが、エンボディチェアの特徴でもある「ピクセル構造(Pixelated Support)」です。

Photo: 山之内 渉
座面裏

座面裏にはバネ状のパーツ、背面にはマトリックス状の樹脂パーツがびっしり。これら一つひとつが独立した「点(ピクセル)」として機能し、身体の凹凸やわずかな動きに合わせて、沈み込んだり反発したりします。

一般的なオフィスチェアのようにクッションでまとめて支えるのではなく、無数の小さな支点で身体を支える。

この仕組みのおかげで、姿勢を変えても特定の場所に負荷が集中しにくく、座面や背面が身体に追従してくれるんです。

Photo: 山之内 渉

そしてもう一つ、このチェアを語る上で外せないのが、一際目を引く背面のデザインです。

部屋に置いたときに放たれる、ただならぬ存在感。奇抜にも見えますが、もちろん単なる飾りではありません。この不思議な見た目も、実は機能を突き詰めた結果なんですよね。

中央の「スパイン(背骨)」と、そこから伸びる「リブ(肋骨)」。人間の骨格を模したこの構造が、人によって異なる背中の「S字カーブ」にピタッと寄り添って、理想的な姿勢をキープしてくれます。

Photo: 山之内 渉

「ピクセル」が動きに追従し、「スパイン」が姿勢を正す。

これまで多くのオフィスチェアを使ってきましたが、ここまで身体との一体感を感じたのは初めて。長いチェア探しの旅の果てに、ようやく「たどり着いた」。そんな確信があります。

調整機能もかなり細かい

自分だけの特等席を作り上げるための「調整機能」の細かさも、エンボディチェアならでは。

Photo: 山之内 渉

座面右後ろのノブを回して、背もたれの角度を自分の背骨の形状に合わせる「バックフィット調節」。 座面の前のハンドルを持ち上げて、太ももの長さに合わせて座面を伸縮させる「座面奥行きの調節」などなど。

これらを一度バチッと決めてしまえば、もう他の椅子には戻れません。自分の体型に合わせてあつらえたオーダースーツのようなフィット感が手に入ります。

Photo: 山之内 渉

あと、地味に感動したのが、アームレストの出来の良さ。

高さや幅が自由に動かせるのはもちろん、表面のクッションが絶妙に柔らかい。長時間タイピングをしていても肘が痛くならず、適度な弾力で押し返してくれる感覚があります。

所有欲を満たす「細部の作り込み」

そして、細部の質感も抜かりなし。操作レバーやノブのしっかりとしたクリック感、脚部のマットな仕上げや造形の美しさなど、プロダクトとしての完成度の高さが伝わってきます。

Photo: 山之内 渉

ただ、そのぶん価格もズバ抜けて高い。最新モデルは約30万円。でも、毎日体を預ける時間と、それによって得られる集中力や健康への「投資」だと考えれば、その価値は十分にあると個人的には思っています。

Photo: 山之内 渉

もっとも、座り心地に特徴がある椅子なので、いきなりポチるのではなく、ぜひ一度お店で座ってみてください(さすがにこの金額をノールックでポチる人はいないと思いますが…笑)。

もしそこで身体にハマれば、エンボディチェアは日々のデスクワークを支える、心強い味方になってくれるはずです。