J1で大躍進のアビスパ、開幕3連敗からV字回復で首位に立った最大の理由は? 思い出される“史上最強の3位”時代
クラブ創設30周年を迎える今季、福岡を次のステージに導くことを求められて就任した金監督の言葉は、当然のことながら今季のチームのベースとなる考え方。新しいシーズンに向けて準備を重ねたプレシーズンも、開幕3連敗と苦しんだ時も、そしてリーグ戦7戦負けなしと着々と勝点を積み上げている今も、その姿勢に少しのブレもない。その姿勢こそが3連敗からV字回復を果たして首位に立った最大の理由だ。
いたずらにボールを持つことを良しとせず、素早く人数をかけてゴールに迫る。「自分たちは変化している」。宮崎キャンプでは誰もが手応えを感じていた。
ただ開幕後は3連敗とつまずいた。明らかにプレースタイルには変化が見られ、キャンプで取り組んでいたことも垣間見られるシーンもあったが、突如としてエアポケットに落ち込んだように守備が乱れ『安い失点』を繰り返した。
当然のようにチームには危機感があふれ、金監督も「まだ最適解を見つけられていない」と口にした。だが誰も下を向いてはいなかった。
「個人の判断とチームとしての連係という部分が、開幕から3節を過ごしていくなかで少しずつ積み上がっているものもある。こういう失敗を重ねて、次にはないようにという意識は、毎試合、毎試合上がっているものもあるし、それが得点シーンや失点シーンに表われないところですごく出てきている」と語っていたのは田代雅也。
紺野和也も「やはり監督が代わった最初の数試合は難しいところがあると思う。最初の3試合は負けていましたけど、やっている内容は開幕戦からどんどんどんどん良くなってはいたので、一つ勝てば変わるというふうにはみんな信じてやっていた」と振り返る。
まるで試合さながらに激しくぶつかり合うのは始動日から続く姿勢。全体練習が終わり、クールダウンをする選手たちが、ジョグをしながら、あるいは車座になって話し込むのもいつもの光景。
そして宮崎キャンプの時からの課題であった1トップの攻守にわたる役割を整理して徹底させた。それはチームが掲げる「ゲームの中での気づき、選手の特長を活かしながら、常にフレキシブルにいろんなものを取り入れながら進化する」ためのものだった。
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何かを大きく変えたわけではない。チームの軸はぶらさずに微調整を重ねた。
その中で新しい戦力の発見もあった。ボールを引き出してチームを前進させる役割を担う北島祐二。3バックの左に入り、時に3枚に、時に5枚に、さらには4枚にも変化する最終ラインで存在感を発揮する志知孝明。まだゴールはないものの、攻守にわたって最前線で相手の脅威になり続けるシャハブ・ザヘディ。初のJ1の舞台ながら相手チームのエースをことごとく封じ込める安藤智哉。もちろん他の選手も負けてはいない。ピッチに立つ誰もがその実力を余すことなく発揮している。
その結果が形に表われたのが、3連敗のあとの7戦負けなし。この間に喫した失点は、わずかに3。一方、10試合で放ったシュート数134本は、最も多い清水よりも4本少ないリーグ4番目の数字。昨年までの堅守と今季取り組んでいる攻撃面の活性化が融合している。
だが誰も満足はしていない。金監督は次のように話す。
「まだまだ首位に躍り出るような内容ではない。結果とそこは一致していないというのが単純な印象。粘り強く戦っているが、首位で走り続けられるような戦いを90分間にわたってチームとしてやれているかというと、まだ物足りない。まだまだ満足できるほどのゲーム内容ではないというのがチームの共通認識」
その言葉の通り、試合後のミックスゾーンでは手放しで勝利の喜びを口にする選手はおらず、誰もが「もっと良くしていかないといけない」と口にする。
ミックスゾーンで選手たちとそんなやりとりをしながら、あの時と同じ雰囲気だと感じている。それは「史上最強の3位」という称号を得て、J1昇格を果たした2015シーズン。あの時も選手たちは、試合が終わると次の試合に向けて何をしなければならないのかということばかりを話していた。
クラブ30周年にして初めての首位。だが稀にみる大混戦のJ1は勝点3差の中に9チームがひしめき合う。このまま首位を堅持するのは難しい。紺野は話す。
「1試合、1試合しっかり目の前の試合を全力で戦っているからこその結果。でもまだ先は長い。順位を考えずに目の前の試合を全員で1試合、1試合戦っていくことで、たぶん、最終的にそういう順位のところにたどり着くと思う。一喜一憂せずに続けてやっていきたい」
その先に、きっと新しい福岡の姿があるはずだ。
取材・文●中倉一志(フリーライター)
