この記事をまとめると

■2024年夏にアウディが直列5気筒エンジンの生産中止を発表した

■1990年代から2000年代初頭まではさまざまなメーカーが5気筒エンジンを作っていた

■5気筒エンジンはV6よりも搭載するのにスペースが必要でメリットが少ない

ついに5気筒エンジンが市販車から消える!?

 2024年を振り返ると、自動車業界には多くのグッドニュースといくつかの残念なニュースがあった。そんな残念ニュースのひとつに「アウディが直列5気筒エンジンの生産を終了する」というものがあった。

 より正しくいえば、コンパクトボディのホットハッチ「RS3」のマイナーチェンジに合わせて、「本モデルが最後の5気筒エンジン搭載車になる」と発表されたわけだが、WRCで活躍したビッグクワトロにも搭載されていた直列5気筒エンジンが、アウディのラインアップから消滅してしまうという発表はある意味で衝撃的だった。

 そのくらいアウディのハイパフォーマンスモデルは5気筒エンジンを連想させる存在だった。そうして、いつの間にかアウディのオリジナリティを示すエンジン形式ともなっていった直列5気筒だが、かつてはアウディ以外でも多くのメーカーが直列5気筒エンジン搭載モデルを販売していた。

 個人的に試乗経験があるクルマを思い出しても、トヨタ・ランドクルーザー70、ホンダ・ビガー/インスパイア、ボルボV70、クーペフィアット(後期型)などなど、1990年代から2000年代にかけて、直列5気筒エンジン車はけっこう選べるほど存在していたのだ。

 ちなみに、上記で示した車種の駆動レイアウトを記すと以下のようになる。

■ランドクルーザー70:縦置きディーゼル・パートタイム4WD

■ビガー/インスパイア:縦置き・FF

■V70:横置き・FF(ターボ・4WDもあり)

■クーペフィアット:横置き(ターボ)・FF

 このように、非常にバラエティに富んだレイアウトにおいて採用されたのが直列5気筒エンジンだった。

 その理由は、まさに5気筒というシリンダー数にある。この時代、軽自動車は3気筒、コンパクトカーは4気筒、プレミアムカーは6気筒という風にエンジンのシリンダー数でポジショニングが決まる雰囲気があった。そのため、コンパクトカーとプレミアムカーの中間的なポジションを与えたいモデルに5気筒エンジンを積むというのは、マーケティング的にもわかりやすかったのだ。

 また、このころからエンジンのモジュラー設計思想が広まっていったことも、5気筒エンジンが増えた背景にある。

V6がある現状では5気筒のメリットは少ない

 ご存じのように、モジュラー設計エンジンとは、同じボアピッチや同一のボア×ストロークに固定し、シリンダー数を変えることで排気量や目標スペックに合わせ込むというエンジン設計の考え方。

 最近でいえばBMW系のエンジンで見かける1.5リッター3気筒と2リッター4気筒のラインアップがモジュラー設計の好例だ。

 シリンダー数によるポジショニングとエンジンのモジュラー設計という自動車業界のトレンドが多くの直列5気筒エンジンを生んだといえる。

 5気筒エンジンは、モジュラー設計の場合であれば4気筒エンジンより出力を稼げることにある。加えて、完全バランスの6気筒ほどではないにしても、4気筒よりはエンジン由来の振動を抑制できるのも5気筒エンジンのメリットといえる。

 結果として、適度にパワフルで快適性アップというのが5気筒エンジンのもつイメージだった。

 ただし、現在のアウディRS3を見てもわかるように、FFプラットフォームに5気筒エンジンを横置きで搭載するということは、かなりギチギチになってしまう。車幅を広げてタイヤを外に配置しないと物理的にステアリング切れ角を確保できないこともある。

 合理的に考えると、同じパワーを求めるのであれば、4気筒エンジンをハイブーストで過給するなりしたほうが有利であるし、ブランド的に多気筒がほしいのであれば、V型6気筒エンジンのほうがスマートに搭載できるというのも事実だろう。

 そんなわけで、直列5気筒エンジンというのは、乗用車においてはニッチとなり、冒頭で記したように消滅の危機に瀕している。

 電動化の流れがハイパースポーツでも進んでいくなかで、もしかすると5気筒エンジン+モーターというハイブリッドシステムを搭載することがあるかもしれないが、おそらくアウディRS3の生産終了をもって、直列5気筒エンジンを新車で購入できる時代は終わってしまうだろう、残念なことだが。