@AUTOCAR

写真拡大 (全8枚)

最新マクラーレン 富士で検証

スポーツカーの頂点に君臨するスーパーカーにとっても、環境性能の向上は避けざるべき課題。ということでマクラーレン・アルトゥーラである。

【画像】ランボも、ポルシェも開発 PHEVスーパーカー【アルトゥーラと比べる】 全127枚

マクラーレンと言えばF1。


富士スピードウェイの複合コーナーを攻めるマクラーレン・アルトゥーラ。    神村聖

世代的な問題もあると思うが、筆者の場合はブルース・マクラーレンとデニス・フルムが真っ先に頭に浮かび、Cam-Amシリーズの活躍も。

生マクラーレンを始めて見たのは富士グラチャンのM12だった。座っただけだがアイルトン・セナのMP4のコクピットに収まったこともある。そんなマクラーレンを“富士スピードウェイ”で駆ることになろうとはそれだけで感激。ファン心がないまぜの試乗となった。

閑話休題。アルトゥーラのパワートレインは3L 120度V6ツインターボ/8速DCTを核にしたパラレル式ハイブリッド。外部充電機構も採用する、いわゆるPHEV(プラグインハイブリッド車)である。

GPF(排ガス微粒子フィルター)を備えるなど、超高性能の達成だけでなく、環境負荷軽減を配慮した現代的なパワートレインだ。

位が高ければ……の約30km

アルトゥーラが今日的なのはパワートレインだけではない。

マクラーレンでは初採用のEデフ(電子制御デフ)や電子制御ダンパーなどの電子デバイスを用いる。もちろん、ADASも備わり、クルマ自身が状況に応じた走りの最適化を行う「考えるクルマ」でもある。


とりわけ美しいのが横から見た姿ではないだろうか。モーター音だけで走り出す姿は「強者の優しさというか、ノブレス・オブリージュ(位高ければ、徳高きを要す)」と筆者。    神村聖

まずは電動走行。駆動モーターの最高出力は95ps(70kW)である。

Eモードを選択している状態ではバッテリー蓄電量が規定値以下になるまでは全開でも純電動走行を維持。すなわちMAX95psの走行。

立体的に成型されたカーボンモノコックの採用などにより車重は1.5tを切るのだが、電動の大トルクをしてもなお加速性能はほどほど。NA軽乗用相応といったレベルである。

それを欠点として挙げているわけではない。フル充電の航続距離は31kmだが、住宅地などの生活環境から幹線道路への繋ぎに用いるなら十分。リエゾンモードとでも考えられる。

要するに、周りに人・住宅が多い状況ではEモードで排ガスを吹きかけず静かに走行。強者の優しさというか「ノブレス・オブリージュ」というか、そんなマクラーレンの心構えなのだろう。

全開へ 200km/hを超えて 

試乗案内でピットアウトから1コーナー前までEモードを推奨されていたが納得。

ちなみにピットへ戻る時も自発的に最終コーナーからEモードを選択。人の多いところはEモードですよね、と独りごちる。


静止状態から3秒で100km/hに到達するパワートレインは、ゼロから新設計したもの。V6のPHEVながら車重は1.5t切り(1498kg)。    マクラーレン・オートモーティブ

そのせいかEモード時のドライバビリティは“電動感の演出”がほとんどない。

穏やかさと滑らかさの低中速域のコントロール性を主眼としたもので、ドライバーへも外部へも刺激を抑えたもの。状況に応ずれば十分な動力性能なのである。

最終コーナーを立ち上がって、横Gが完全に抜けた状態から全開。数秒で200km/hオーバー。

この試乗会では200km/h前後を制限速度としているので、その後はパナソニックブリッジ辺りまで200km/h強でのツーリング。

深く踏み込んで長々とした加速はヘアピンから300Rの区間くらいで、パーシャルスロットルでコントロールする時間が圧倒的に長い。

最大トルク発生回転数は2250-7000rpm。この回転数の間で全開にすれば約73kg-mのトルクが得られる。

“戸惑いなし”で走れるワケ

アクセルペダルストロークの単純割りなら半分踏み込めば36kg-m、つまりNA 3.5L級全開のトルクが得られる計算。

と、数値を並べると神経質なペダルコントロールを想像させるが、予想以上にコントロールしやすい。


ステアリングから手を離さずモード変更できるスイッチ。左手の指先が触れるところにハンドリング(H)、右手の先にパワートレイン(P)のコントローラーを配置した。    神村聖

ひとつはストロークに対する発生トルク。深くなるほどに大きくなるような感覚。

もうひとつは踏み込み初期反応で、唐突な反応を抑えて予見性の高いトルク立ち上げを示す。

700ps級のスーパーカーを慣熟なしで乗せられて戸惑うこともなく走れたのは、そういったドライバーの感性に合わせて造り込まれた“いい対話感”がパワーと速度の圧迫を大幅に減らしてくれていた。

この試乗の凄さ。「あくまで自己責任ですが、ヘルメットの着用は任意です」とのこと。

一応、ヘルメットやレーシングスーツなどを持ち込んでいたのだが、お言葉に甘えてノーヘル/普段着で試乗させてもらった。

曰く、先導車付きでストレートも約200km/h制限。1コーナーやダンロップコーナーのブレーキングは回生距離を大きく取ることもあって安全マージンは感覚的には倍くらい。

一般的にはかなりの高速とはいえ、アルトゥーラのポテンシャルからすればツーリングである。

連続するコーナー どう攻略?

とはいえブレーキングを詰めていないだけで、100Rやヘアピンから300Rの高速コーナーは限界に近い領域まで至ってしまう。

MRの高速コーナーでのオーバーステアは致命傷になりかねない。きっちりと弱アンダーステアを維持する必要があり、そのとおりアルトゥーラは深めの舵角を維持。


ブルーノ・セナも同日に富士をテスト。アルトゥーラの良さが一番出るのは、テクニカルなコーナーが連続するセクションと語った。理由は、「新しいパワートレインはバランスが取りやすいから」。    神村聖

限界近ければ追い舵の回頭も鈍り、加速させればグリップバランスを乱さずラインを孕ませる。

という具合に高速コーナーに合わせればタイトコーナーの捌きが難しくなるものだが、前輪の逃げが大きくなるものの、減速でのターンインもトラクションを活かした立ち上がりも操舵主導で綺麗にラインに乗っていく。

高速コーナーもタイトコーナーもいい感じで操れてる、と思わせてくれるのが心憎いところだ。

操る感覚とは何? 鍵は手応え

ドリフト走行時には車体スリップアングルを安定させる制御機能が盛り込まれているそうだ。「そうだ」としか言えないのは試していないためだが、それを考えても相当高度な運転アシストあるいは運動制御が備わっていると考えるべき。

しかし、クルマに乗せられている印象は非常に少ない。


日本仕様は、ハンドル位置を左・右どちらも選べる。ACC、レーン・デパーチャー・ウォーニング、ハイビームアシストといった運転支援システムをマクラーレンとして初搭載。    神村聖

感じるのは自身で「機械」を操る「生っぽさ」。

パワステに油圧式を採用するなど、操る感触はアルトゥーラのこだわりのひとつなのだが、電子制御による完璧な管理をドライバーに意識させないことに感心させられた。

タイトターンと高速コーナーの特性からして運動性の理想を求めているのは明白なのだが、磨き込み過ぎずに微妙に雑味とか揺らぎを感じさせるのが妙味。

急操舵の揺れ返しなど運転ミスも含めてドライバーに返してくれる。しかも走行に影響が出ない微小な量でだ。それが機械を直に操っている手応えになる。

700ps級をストレスなく操れるのも「電子制御ありき」は間違いないのだが、生の機械の味わいも上手に共存。ハイブリッドの使い方も同様であり、現代のスポーツカーの在り方を実感させられた。

アルトゥーラ スペック

価格:3070万円〜
全長:4539mm
全幅:1913mm
全高:1193mm
最高速度:330km/h
0-100km/h加速:3.0秒
CO2排出量:104g/km
車両重量:1498kg
パワートレイン:2993cc V6ツインターボ+モーター
使用燃料:ガソリン
駆動用バッテリー:7.4kWh(実容量)
最高出力(エンジン):585ps/7500rpm
最大トルク(エンジン):59.6kg-m/2250-7000rpm
最高出力(モーター):95ps
最大トルク(モーター):23kg-m
最高出力(システム総合):680ps
最大トルク(システム総合):73.4kg-m(720Nm)
ギアボックス:8速DCT


マクラーレン・アルトゥーラ    神村聖