俳優・田中圭31歳「いま“迷う”もの…」写真集発売記念インタビュー
いま日本でもっともその姿を見られている俳優のひとり――そう伝えると本人は謙遜していたが、ここ数年のテレビやスクリーンでの出演数を見れば、俳優・田中圭が各方面からどれだけ求められている存在か、一目瞭然だろう。
先日終了した連続ドラマ『家族ノカタチ』に出演した際も、ある週の次回予告で、次回より彼が作品に登場することが判明した瞬間、「田中圭きた!」とSNSが爆発的に盛り上がった。制作側だけでなく視聴者もまた、俳優・田中圭に大きな信頼を寄せているのだ。彼を取り巻くその状況は、日に日に増している感がある。
そんな田中圭の約4年ぶりとなる写真集『R』(ぴあ刊)は、“誰もが知っているはずの田中圭の、誰も知らなかった顔”を知ることができる一冊だ。また巻末のインタビューでは、現在の自分に対して「迷い」という言葉を漏らしている。
誰からも求められる男・田中圭は、いま、なにを思う?
“俳優・田中圭の素”が出た写真になった
――写真集『R』は、いわゆるオフショット的な作品ではなく、でも俳優として誰かを演じているわけでもない。よく知っているはずの田中さんの、初めて見る姿が写し出された一冊でした。ご自身で完成品をご覧になっていかがでしたか?
「いい意味で“軽くない作品”になっていたので、それはよかったです。僕は写真チェックを一切しないので、全部カメラマンの前(康輔)さんにおまかせして。そうしてできあがったものがこれだったので、よかった、というのが素直な意見ですね」
――軽いものにしたくない、というのは、当初からの思いだったのでしょうか。
「それこそ、僕はもう3冊目の写真集を出させていただくっていう、よくわからない環境なんですけど(笑)、すべてにおいてそれは思っています。
どうしても俳優としてのちっぽけなプライドというか……プライドというよりは、こだわりや意地のようなものがあって。本当はダメなんですけど、芸能人としての自覚があまりないので、<俳優だから作れる作品にしたい>というのをいつも思っているんです。
かと言って、俳優がなにをできるんだ、と言われたら、なにもできないんですけど。なにかひとつ、普通にイメージする写真集というものと、ちょっとかけ離れているほうがいいなあと。そういう意味で、出来上がりを見てこの3冊目の『R』がいちばんかけ離れていたので、作らさせてもらってよかったなと思います」
――“素の田中圭”ではなく、“俳優・田中圭”を意識して作った本なのですね。
「や、本人は意識していないですけどね。普通にただキャッキャ、キャッキャして撮られてるだけなんですけど(笑)。それこそ映像作品をやっていても、もちろんお芝居をしているときは別ですけど、じゃあ現場にいてカメラが回ってないとき、ずっと俳優として毅然としているのかっていうと、そうじゃないし。でもやっぱりどこか俳優としてスイッチが入るときはあって。
写真集って、台詞もなくて役もなくて、与えられたものを演じるわけじゃないから、やっぱり恥ずかしいんです。でも今回、いいバランスで“俳優としての田中圭”と、“俳優としての田中圭の素”が写真に出ていて、そういうものを前さんが引き出してくれたのは感謝ですね。
終わってから前さんに『田中圭の素ではないけど、俳優・田中圭の素はすごく撮れた気がする』って言われたんですけど、嬉しかったです」
『自分なんていなくていいじゃん』と思うときもある
――“俳優としての素”、というのが面白いですよね。その絶妙なバランスが、この写真集の「まだ見たことがない田中圭」という印象につながっているんだと思います。
「僕自身も、写っているのは僕ってわかっているんですけど、『お前誰だよ』って思います(笑)。そうなったのは、よかったなって」
――自分で自分の表情に驚いたカットはありますか?
「いや、ほとんどそうですよ。こんな顔するんだ、って。撮影のときのことを覚えてないわけじゃないんですけど、なにを考えて撮られてたんだろう?と。なんていうか、撮られているときはそうは思っていなかったけど、“俺であって俺でない感覚”というのが、改めて思うとあったのかなって。
そういう写真をチョイスしてひとつに紡いでくれたみなさんがいるから、こういう本に出来上がって。逆にそうじゃない写真を集めたら、もちろん違う作品になっただろうし。そういう意味では、お仕事させていただいてよかったな、って思える方たちと、作らさせていただいた一冊です」
――そういう重厚な世界観に浸ったあとで、巻末のオフショットの笑顔を見ると、そのギャップに萌えてしまいますね。
「……まあ、オフショットに関しては、知らないすけどね(笑)」
――巻末のインタビューで、いまのご自身について「迷い」という言葉を使われていたのが印象的でした。田中さんは現在31歳。自分にできることとできないことが、だんだんわかってきて、結婚や転職など人生の転機を迎える人も多い時期ですよね。そんな中で、いま田中さんはどのようにご自身の仕事に向き合っているのでしょうか。
「……まあ、自分にしかできないことがあると信じているだけ、ですかね」
――自分にしかできないこと、ですか。
「お芝居で、っていう話ですけどね。表現の仕方だったり、そこで生まれてくる感情だったり。
17年間ずっとお芝居をやらせていただいていて、やっぱりいい意味で貪欲にはなっているし、自信もついてきているし。じゃあ、かと言って『自信があるの?』と言われると、そんなにないし、『そんなに意欲あるの?』と言われると、それもそんなにないし。すごく難しいところで。
でも、なんて言うんですかね、自分がこの仕事をやらせていただいている意味というものを、たまにふと思わないと、『やーめた』ってなっちゃうから。『自分なんていなくていいじゃん』と思うときも多々あるし。でも、『じゃあどこいくの?』って言われても行くところはないし、しがみつくしかないので。
でも、やっぱり、『俺、お芝居が好きだな』っていう瞬間がたびたび現場で訪れるので、それに救われている感じですかね」
――お芝居が好きだという思いは、昔から変わらないものですか?
「そうですね。自分で『俺、芝居好きだなあ!』なんて思ったりはしないんですけど。どっちかというと台詞は覚えたくないし、朝は早く起きたくないし、毎日遊んで暮らしたいと思ってるんですけど、実はそうでもないなって」
「例えば仕事が暇になると、わかりやすく堕落した生活になったりして、『意外と仕事人間なんだな』って気付かされたり。すごく嫌なことがあっても、お芝居している瞬間は忘れていたり。俳優という仕事に救われているところはあると思います。
まあ、『なにを考えているのか』と言われても、具体的なことは出てこないんですけど。でも、言葉にならない自分の思いを信じて、自分はとにかく歩いていかないといけないのかな、と」
――迷ったときは、自分の思いに立ち返る、と。
「自分から『お芝居って楽しいな』と思っているわけじゃないんですけどね。気付かされるんです。お芝居をしていて、『俺、いま、めっちゃ楽しいな』 と、たまに思うくらいで。舞台稽古とか、本当に嫌いなんですけど(笑)、でも稽古をしていると、たまにそういう瞬間があるから、多分やれているんだと思う んですけど」
――そんな田中さんが次に挑むのが、舞台『夢の劇 -ドリーム・プレイ-』です。いま、まさに稽古中かと思いますが、今回は俳優としてどんなものを求められているのでしょうか?
「戯曲として、すごく難しい舞台です。それをひとつのエンタテインメントとして作っているなか、ひとりも納得してお芝居をしている人がいないんじゃないかと思うほど、台詞が難解で。ひとつの人物をやっと作れたと思ったら、また別の役になる、みたいな。なんでこんな難しい作品を選んだのかなぁっていう、これは白井(晃)さんへの愚痴(笑)。
いまよりあと2コくらい深いところに、この作品をやる意味があるような気がしているんですけど、そこまでどうやっていけるのか。本番まであと10日しかないんですけど(取材日は4月2日)、10日であと2コ潜れないでしょう、と。それこそ、夢が醒める前になにか掴みたいな、という。もう1ヵ月くらい稽古しているんですけどね(苦笑)」
――相当手強いんですね。
「いや正直、やる側としては、本当に大変な作品で……(笑)。でも幕が上がるまでに、一回くらいはたどり着いておきたい場所があって。そこを残りの時間で必死に探す、という感じですね」
想像もできないほどの多忙な日々の中で、悩み、迷い、苦しみながら、目の前の仕事にひとつひとつ向き合っていく。“誰からも求められる男”というイメージからは程遠い、31歳・男子の等身大の姿を垣間見た取材だった。
写真集『R』は、広大な砂丘の彼方へと駆け抜けていくショットで終わる。砂の上にしっかりと刻まれた足跡のように、これからも「自分にしかできないこと」を信じて、道なき道を歩んでいくのだろう。取材を終えた彼は休憩時間もなく、「ありがとうございました、ういっす」と告げて、多くのファンが待つ写真集発売イベント会場に、軽やかな、しかし確かな足取りで向かっていった。
田中圭写真集「R」 発売中
撮影:前康輔
2700円 (税込)
A4ワイド判・136ページ
『夢の劇-ドリーム・プレイ-』チケット発売中
【原作】ヨハン・アウグスト・ストリンドベリ
【構成・演出】白井 晃
【台本】長塚圭史
【振付】森山開次
【作曲・編曲・演奏】
阿部海太郎、生駒祐子、清水恒輔、
トウヤマタケオ
【出演】
早見あかり/田中 圭/江口のりこ/玉置玲央/那須佐代子/森山開次
山崎 一/長塚圭史/白井 晃
久保貫太郎/今里 真/宮河愛一郎/高瀬瑶子/坂井絢香/引間文佳
【日程】
神奈川公演
2016年4月12日(火)〜30日(土)(4/12と4/13はプレビュー公演)
KAAT神奈川芸術劇場<ホール内特設ステージ>
松本公演
2016年5月4日(水・祝) 〜5月5日(木・祝)
まつもと市民芸術館 実験劇場
兵庫公演
2016年5月14日(土)〜5月15日(日)
兵庫県立芸術文化センター 阪急中ホール
