不良少年の覚醒── マイク・タイソンが初めて力に目覚めたとき
史上最強かつ最凶の男マイク・タイソンが自らの半生を赤裸々に綴り、刊行直後から全米を騒然とさせた『真相──マイク・タイソン自伝』の邦訳版がついに発売!
彼にまつわる数々の伝説の“真相”が語られた本書から、特にハイライトとなる場面を本連載では紹介していきます。第1回は、気弱なタイソン少年が怪物へと変貌を遂げた衝撃のエピソードが描かれた部分を紹介します。
力に目覚めたとき
大きくなるにつれ、注目を浴びたいという願望を持つようになった。「俺はここらで1番のワルだ」とか「俺の鳩は最高だぜ」とか。だが、そうなるには内気すぎたし、不器用すぎた。それでもある日を境に、観衆の称賛を浴びるのがどんな気持ちか理解できるようになった。
その日はクラウン・ハイツ界隈に行って、年上のやつと盗みに入った。なんと現金が2200ドル! 600ドルの分け前をもらった。それで、ペットショップに行って100ドル分の鳩を買った。店員がかごに入れてくれ、店長が地下鉄に乗せるのを手伝ってくれるくらい大量の鳩だ。鳩を隠している廃墟までは、近所の知り合いが手伝ってくれた。ところが、そいつが近所のガキどもに鳩の話を言いふらした。
そしたら、ゲーリー・フラワーズというやつが仲間と盗みにやってきたんだ。おふくろが見かけて教えてくれたから、俺は通りに飛び出して、急いで隠れ家に向かった。俺が来たのを見て、やつらは鳩をつかむ手を止めたが、ゲーリーはまだコートの下に1羽隠していた。そのころにはまわりを群衆が取り囲んでいた。
「鳩を返せ」俺は恐怖心を押し殺して叫んだ。
ゲーリーはコートの下から鳩を取り出した。
「鳥が欲しいのか? こんなものが? なら返してやるよ!」次の瞬間、あいつは鳩の首をねじ切って俺に投げつけた。頭とシャツに血がべったりついた。哀れな鳩の胴体が、道路にぐったり横たわっている。俺の大切な鳩が……。
「やっちまえ、マイク」俺の仲間の1人がけしかけた。「やっちまえ!」
