世界バンドル格安で「キャリアノートPC」時代がくる

日本の量販店の店頭ではすっかりおなじみとなった低価格ノートPC「ネットブック」だが、データ通信回線とのセット契約の格安販売が急成長している。この格安販売は、市価4-5万円のネットブックが1円から数百円で購入できるものもあり、売れ行きも好調だ。こうしたネットブックのバンドル格安販売は日本だけではなく海外にも広がっており、通信事業者自らが割り引き販売を行っているケースも多い。

海外の先進国ではすでに携帯電話加入率が100%に近い国も多く、新規加入者を獲得することは困難になりつつある。そのため2回線目の需要としてのデータ通信契約にも力を入れているわけだ。HSDPAなどのUSBモデムとデータ回線のセット売りはもちろん、最近では通信モデムを内蔵したネットブックが増えており、通信事業者の店舗内にネットブックが展示されていることも珍しくなりつつある。通信回線の高速化と安価なネットブックが時期を同じくして登場してきたことにより、ネットブック販売は通信事業社の新しい稼ぎ頭になりそうだ。

とはいえ通信事業者が扱うネットブックはノートPCメーカーブランドの製品、いわば市販品の販売である。そのため仕入価格や販売価格を通信事業者だけではコントロールしにくいというデメリットもある。また通信事業者の販売店で携帯電話ではない製品を取り扱うとなると、個々の商品の説明が必要になるなど販売サイドにも負担がかかるのが実情だろう。

これが携帯電話であれば「キャリアブランド品」としてメーカーに大量発注し、SIMロックをかけた上で無料で提供するといったことはヨーロッパではよく行われているが、その「キャリア端末」をネットブックにした製品がVodafoneから登場したのだ。8月から香港のSmarTone-Vodafoneが発売開始した「Vodafone Vitesse」で、白地の本体にVodafoneのロゴがあしらわれたVodafone販売専用ネットブックである。家電店で「ノートPC」としての販売は行われず、SamrTone-Vodafoneの直営店で「Vodafone端末の一つ」として販売が行われている。なおVitesseとはフランス語で「スピード」の意味。高速データ通信モデムを内蔵していることをアピールしたネーミングなのだろう。

Vodafoneブランドのネットブック、Vitesse

さて、気になるVodafone Vitesseのスペックは1.6GHz Intel Atom N270 CPU、10.1インチ-1024x600ピクセルディスプレイ、1GB RAM、16GB SSD、7.2Mbps HSPAモジュール、Wi-Fi、1800mAh 3セルバッテリ、重量1kgなど。最近のネットブックとしてはごく標準的な仕様だ。有線LANが非搭載なのは携帯事業者が販売するモデルであることから割り切りが図られたとも考えられる。USBタイプのモデムとは違い、ネットブック本体にSIMカードを装着して利用するため、いつでもどこでも思い立ったときにインターネットアクセスが可能だ。

通信事業者が専用ネットブックを販売するメリットはどこにあるのだろうか。最大のメリットはコストだろう。前述したように事業者がOEMメーカーと直接取引できるため、仕入価格はメーカー品ネットブックより引き下げることが可能だ。特にグローバル事業者であれば世界各国のグループ企業向けに大量の発注が可能となる。また自社向けに製品をカスタマイズできるメリットも大きい。プレインストールソフトウェアの指定など内部のカスタマイズはもちろん、Vodafone Vitesseは外装にVodafoneロゴのみを配するなど、Vodafoneの製品であることが一目でわかる仕上がりにされている。これは自社製品としてのブランド力を引き上げる効果も高い。

Vitesseのスペックをみると内蔵ストレージ容量が少ないが、あえて安全と高速性のSSDを選択している。これは「安価なノートPC」ではなく「モバイル向けのインターネット端末」に特化させているからだろう。メーカー製ネットブックを取り扱うとなると製品にはノートPCメーカーの意向が出たものになってしまい、どうしても「小型ノートPC」としての機能や使い勝手−たとえばストレージは大容量がよいだろうから160GBのHDDを搭載−を反映したものになってしまっただろう。消費者に「手軽なインターネット環境」と「持ち歩いても安心」という2つの明確なメッセージを伝えるためにも、事業者が自らの専用モデルを投入する意味があるわけだ。

8月上旬から香港で発売されたVodafone Vitesseは、契約更新や端末購入にショップを訪れた客からの注目度が高い。学生やビジネス層以外にも、年配者などが価格や性能を質問する光景も増えている。メーカー品ノートPCであれば「これは難しいもの、自分には関係ないもの」と考えてしまう一般層でも、事業者のロゴの入った専用品であれば「なんだろう」と興味を示すようだ。さらに香港販売のVitesseは3480香港ドル(約4万3500円)と、同性能のメーカー品ネットブックより割安なこともあって高い注目を浴びている。ちなみにSmarTone-VodafoneとHSDPA契約(約4000円/月)を24ヶ月契約すると価格は実質無料だ。

Vitesseのカタログ(香港)。スタイリッシュなインターネット端末、という売り方をしている

今後Vodafone以外の通信事業者も専用ネットブックを販売するようになれば、ネットブック=データ通信モデムを内蔵した通信事業者が販売する製品、という時代が来るかもしれない。価格もすでにバンドル販売により割引販売があたりまえになっている。そうなると既存のノートPCメーカーにとって、将来は事業者ブランドのネットブックが大きなライバルになっていくかもしれないだろう。

山根康宏
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