《W杯開幕》「なんでこんなに点が入らないの?」「なんで横パスばかりするの?」サッカー観戦が“面白くない”と感じる人も…日本人が知らない“サッカーの秘密”
なぜサッカーは他の球技に比べて、あんなにも点が入らないのだろうか。野球やバスケットボールと比べても際立って得点数が少ないその裏には、人間が「足」でボールを扱うという構造的な難しさと、失点の致命的なリスクを避けるための高度な心理戦が隠されているという。
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ここでは、スポーツライター・木崎伸也氏の著書『世界一やさしいサッカーの見方 40個のポイントで試合が劇的におもしろくなる』(朝日新聞出版)より一部を抜粋して、サッカーの得点数が少ない理由を紹介する。(全2回の1回目/2回目に続く)

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他のスポーツと比べてサッカーはなぜ得点数が少ないのか
他の球技と比べたときに、サッカーの最大の特徴のひとつは「得点の少なさ」です。
他競技の1試合あたりの平均得点数(両チーム合計)を見ると、2025年のプロ野球が6.59点で、24─25シーズンのバスケットボールのBリーグが157.2点。
それに対してサッカーのJ1では2.40点にすぎません。
J1は2025年に全380試合行われ、得点が入らないゴールレスドロー(0対0)が33試合ありました。
2014年W杯準決勝のブラジル対ドイツ(1対7)のように得点がたくさん入る試合もありますが、ゴールが少ないのが基本。
サッカーを見始めた多くの人が「なんでこんなに点が入らないの?」という疑問を持つのではないでしょうか。
なぜ点が入りづらいのか?
最大の理由は「足でやるためミスが日常茶飯事」だからです。
あのリオネル・メッシですらパス成功率が100%にならない現実
人間は二足歩行によって手が発達して道具を使えるようになりましたが、足は勝手が違います。足は立ったり、歩いたりする目的で進化し、足そのもので細かい作業をするのは難しくなりました。
その器用ではない足でやるスポーツがサッカーです。
ボールを手で触れられるのはゴールキーパーのみで、フィールドプレーヤーは(スローインを除いて)足でボールを扱わなければなりません。
手と足の差は、ミスの回数を見れば一目瞭然です。
2025年のプロ野球における失策(落球や悪送球などのミス)は1試合あたり0.99回のみ。一方、サッカーにおける失策(トラップやキックのミス)は日常茶飯事。トップレベルでもパスの成功率は80%台で、頻繁にボールを失います。
イチローさんのプロ野球とメジャーリーグにおける28年間の失策数は56回でした。1年に平均2回のみです。サッカーではリオネル・メッシですらパス成功率は試合で100%になりません。
ヨーロッパで「サッカーはミスのスポーツ」と呼ばれる所以です。
パスでさえ完璧に実行するのが難しいのですから、シュートはさらに難易度が上がります。相手チームのDFは打たせまいと必死に守備をするし、何と言ってもゴールマウスには唯一手を使うことが許されているGKがいます。2025年のJ1において、シュート10回のうち約1回しかゴールにつながりませんでした。
手より力のある足だからこそロングシュートを打つことも可能ですが、そういうメリットよりもデメリットが上回ります。
足でやるので、思い通りにボールを動かせない。ミスが頻繁に起こるためそもそも相手ゴールに近づくだけで一苦労。仮にシュートにたどり着けたとしても正確に蹴るのは簡単ではありません。
致命的なカウンターを受けかねない「縦パス」のリスク
「何で前へボールを蹴らず、横へばかりパスするの?」ともどかしい思いをした経験はないでしょうか。その理由は、先ほど説明したサッカーにおける得点数の少なさと密接に関係しています。
得点がたくさん入るのであれば、リスクを冒して攻められますが、サッカーではそうはいきません。相手に先制を許してしまうと、相手は守備を固めることが多く、失点を挽回するのが難しくなります。
2025年のJ1において、先制したチームが勝利した確率は68%でした。2022年カタールW杯で日本がドイツとスペインに逆転勝利しましたが、あくまで例外的な出来事で、大会全体としては先制したチームが勝利した確率は75%でした(PK戦になった試合は引き分け扱い)。
サッカーでは1失点が致命傷になりかねません。
それゆえにほとんどの監督が、まずは失点を防ぐことを重視します。
守備のために走れる選手を多く入れたり、コーナーキックでやられないために背の高い選手を入れたり。攻撃のラッキーパンチに頼ったら、コンスタントには勝てません。ヨーロッパには「いい攻撃が勝利を決め、いい守備が優勝へ導く」という格言があるくらいです。
そういうリスク管理の思考から導かれるのが、サイドへのパスです。
サイドにパスを入れて奪われたときと、中央にパスを入れて奪われたときを比較してみましょう(図1)。
サイドで相手に奪われても、自分たちへのゴールまでの距離は長く、素早く戻って陣形を整えることができます。
それに対して中央で奪われると、自分たちのゴールまでの距離が短くなり、陣形を整える余裕がなくなってしまいます。
距離の要因だけでなく、人数の要因も絡んできます。一般的に守備側は自分たちのゴールへ直線的に迫られないように、中央に人数をかけて集まっています。その選手たちが一気に前へ出てくるため、カウンターの危険度がさらに上がります。
不用意に中央へ縦パスを入れて奪われると、致命的なカウンターを受けかねない。だから横方向のパスばかりになるのです。
え、それだと見ていておもしろくない? その通りです!
サイドにメッシのような特別なドリブラーがいたり、デビッド・ベッカムのような低空高速クロスをあげられる選手がいたりしない限り、「横パスサッカー」は行きづまります。
ミスを恐れて横パスばかりしているチームは、良いチームではありません。
ドイツではそういうチームがあると、すぐに「Feigling!」(臆病者)と野次られます。
〈なぜサッカー選手は“なかなかシュートを打たないのか”? W杯観戦中に「シュートを打て!」と叫ぶ日本人が知らない“世界的にシュート数が減ってる現実”〉へ続く
(木崎 伸也/Webオリジナル(外部転載))
