中東情勢をめぐってトランプ大統領とネタニヤフ首相の間に亀裂が入っているという見方が出ている。

【映像】トランプ氏がネタニヤフ氏に大激怒(実際の発言)

 ニュース番組『わたしとニュース』では、この両国の関係とアメリカ国内への影響について、早稲田大学の中林美恵子教授と国際政治学者の三牧聖子氏とともに深掘りした。

■「私がいなければ刑務所に…」トランプ氏の警告とネタニヤフ氏の思惑

 アメリカのニュースサイト「アクシオス」は8日、トランプ氏がネタニヤフ氏との電話会談で、「イスラエルがイランとの戦闘を再開するならアメリカは支援せず、孤立無援で戦うことになる」と警告したと報じた。

 実は今月1日の電話会談で、レバノンへの攻撃をエスカレートさせるネタニヤフ氏をトランプ氏が怒鳴ったと報じられていた。

「一体何をやっているんだ。お前は正気じゃない。私がいなければ刑務所に入っていたはずだ。今や誰もがお前を憎んでいる」(トランプ氏)

 3日、「Pod Force One(New York Post)」のインタビューでは「(Q.本当に彼を怒った?)そうだ。怒っていたとは言わないが、彼がレバノンと絶えず争っていることに少し困惑していた。『やめなければならない』と言ったんだ。彼とはとても良い関係でともに成果をあげてきた」と語った。

 トランプ氏の仲介で停戦したにもかかわらず、その後もレバノンへの攻撃を続けたイスラエル。ネタニヤフ氏は「現時点では合意は成立していない。ヒズボラが反対しているためだ」と主張した。

 ネタニヤフ氏がレバノンを拠点とする武装組織・ヒズボラの攻撃にこだわる理由について、中林氏は次のように分析する。

「イスラエルの国民は、ヒズボラからの攻撃に対して非常に反感を持っている。ネタニヤフ氏が強い態度でヒズボラに対抗することを望んでいる国民が多い状況の中で、10月には首相選挙も控えていて、何とか地位にとどまりたいと考えている。ヒズボラからの攻撃を、アメリカから言われたから何もしないとなると、今度はイスラエル国民の不信につながる行動になってしまう」(中林氏、以下同)

 さらに、トランプ氏とネタニヤフ氏の関係の行方については次のように語る。

「ネタニヤフ氏が考えていたほど簡単にイランの体制の転換はならなかった。したがって、イラン攻撃前のトランプ氏とネタニヤフ氏の蜜月関係と、イラン攻撃後、特にホルムズ海峡が事実上の封鎖となり、またイランの体制転換もできないという今の時点では、相当思惑がずれてきてしまっているのが現状だ」

■「アメリカの大統領は誰なんだ」強まるイスラエルファーストへの批判

 トランプ氏はネタニヤフ氏を止めることはできないのだろうか。三牧氏は次のように語る。

「今、アメリカ国内でも『アメリカの大統領は誰なんだ』という議論がある。結局、多くの国民が望んでいないイラン戦争を、トランプ氏はイスラエルが続けたいという限り続ける。ガソリン価格や物価が上がって国民が苦しんでいるのに、トランプ氏はイスラエルに寄り添っていて、『アメリカファーストではなくイスラエルファーストではないか』という批判がかなり強まっている」(三牧氏、以下同)

「トランプ氏としては、そうした国民の疑念を払拭するためにもネタニヤフ氏を厳しく叱るポーズを見せるが、国民は冷静に見ていて、『ポーズではなく、実際に休戦や戦闘終結に向けた交渉に巻き込めるのか』というところまで見ている。何度か厳しく叱っていることに関しても、国民はまだ納得していない」

「結局、戦闘開始してエスカレーションしている状況で、イスラエルからすれば怒られたけれども、トランプ氏は戦争をやめることなくまた戦ってくれた。アメリカ国民から見れば、いつものパターンで、厳しく注意はするもののイスラエルに引きずられる形でだらだらと戦争を続けるという失望がある。軍事支援もしているのでアメリカの方が優位にあるはずなのに、立場が逆ではないかという見方も相当強まっている」

■中間選挙への影響は?国際政治学者が懸念する「ゲリマンダー」

 アメリカ国内の経済状況に目を向けると、石油価格の高騰やインフレーションが起きており、国民の生活は厳しい。それにもかかわらず、トランプ氏は「インフレなんて別にどうでもいいじゃないか」と発言し、メディアで大きく取り上げられている。

「国民がいくら苦しんでいても戦争をやめてくれず、ずっとイスラエルの方を見ている。なぜこんなにもイスラエルに物が言えないのか。『イスラエル・ロビーなどの献金があるからではないか』『ネタニヤフ氏に弱みを握られているのではないか』といった報道も絶えず行われている」

 こうした状況下で迎える中間選挙の見通しはどうなるのか。三牧氏は、与党・共和党の苦戦を予想しつつも、ある懸念を示す。

「中間選挙はそもそも与党を審判するものであり、もともと与党は苦戦する。そうした中、トランプ氏はイラン戦争、物価高対策、関税政策など様々な政策に不支持が多い。普通にいけば下院、もしかすると上院の多数派も民主党が取るという見立てがある。一方で、今アメリカでは『ゲリマンダー』という選挙区割りの変更が非常にやりやすくなっており、共和党はこれで自分たちに有利なゲリマンダーを積み重ねることで、何とか中間選挙で多数派を死守しようという動きがすでに出ている」

「本来は国民を満足させ、支持してもらって選挙に勝つのが王道だが、国民を満足させられないから選挙の区割りをうまく変えて勝ち切るという動きが共和党で活性化していて、先が見えない状況だ」

(『わたしとニュース』より)