Xのおすすめ表示「アルゴリズムをオン」で保守寄りの傾向に パリ経済学校が米国Xユーザーを分析調査
X(旧Twitter)の「おすすめ」表示で、時系列表示からアルゴリズム表示に切り替えた利用者は、政策課題や時事問題への見方が保守寄りに動く傾向がみられた。パリ経済学校(フランス)などの研究グループが、米国のX利用者を対象にフィードアルゴリズムの影響を分析した論文を、英科学誌「Nature」に発表している(https://doi.org/10.1038/s41586-026-10098-2)。研究では、投稿をアルゴリズムで選ぶ表示と、フォロー中のアカウントの投稿を時系列で並べる表示を比較。利用者の政治意識を変えるのか。
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SNSのフィードアルゴリズムは、利用者が目にする投稿の順番や内容を左右する。これまでも、政治的分断や誤情報との関係が議論されてきたが、実際にどの程度意見を変えるのかは明確ではなかった。過去にMetaのFacebookやInstagramを対象にした大規模研究では、アルゴリズム表示を時系列表示に切り替えても、政治意識への明確な影響は確認されなかった。今回の研究は、逆に「アルゴリズムをオンにする」効果も含めて調べた点が特徴だ。
トランプ大統領への捜査を「受け入れがたい」とする傾向
研究では、2023年夏に米国在住のX利用者を募集し、最終的に4965人が分析対象となった。参加者は、Xの「おすすめ(For you)」に当たるアルゴリズム表示か、「フォロー中(Following)」に当たる時系列表示のどちらかに無作為に割り当てられ、平均7週間、その設定を使うように求めた。
その後、Xの利用状況、支持政党、政治的分極化、政策課題への優先順位、ドナルド・トランプ大統領への刑事捜査に対する見方、ウクライナ戦争への態度などを調べた。さらに一部の参加者については、実際に表示された投稿や、実験後にフォローしていたアカウントの種類も分析した。
結果は非対称だった。もともと時系列表示を使っていた人がアルゴリズム表示に切り替わると、Xの利用は増え、インフレ、移民、犯罪など共和党支持者が重視しやすい政策課題を優先する傾向が強まった。トランプ氏への捜査を「受け入れがたい」とみなす傾向や、ウクライナ戦争をめぐるロシア政府寄りの態度も強まった。一方、もともとアルゴリズム表示を使っていた人が時系列表示に切り替わっても、同様の変化は確認されなかった。
政治意識の変化はすぐに戻らない可能性も
なぜ一方向の効果だけが出たのか。研究チームは、表示された投稿内容とフォロー行動に注目した。アルゴリズム表示では、時系列表示に比べて「いいね」やリポスト、コメントの多い投稿が目立ち、政治投稿の中では保守系の内容がより多く表示されていた。伝統的なニュースメディアの投稿は減り、政治活動家の投稿は増えていた。
さらに、アルゴリズム表示に切り替えた利用者は、保守系アカウントや保守系の政治活動家アカウントをフォローしやすくなっていた。いったんこうしたアカウントをフォローすると、後で時系列表示に戻しても投稿は表示され続けうる。このため、アルゴリズムを切っただけでは政治意識の変化がすぐには戻らない可能性がある。
一方で、支持政党そのものや、相手政党への感情的反発を示す「感情的分極化」には、有意な影響はみられなかった。短期間で動きやすいのは、党派的アイデンティティーよりも、個別の政策課題や時事問題への見方だったといえる。
研究は、2023年時点のXと米国利用者を対象にしたもので、他のSNSや時期にそのまま当てはまるとは限らない。それでも、SNSのおすすめ表示が、利用者の政治的態度やフォロー行動を形作りうることを、実験で示した点は重要だ。アルゴリズムの影響を考えるうえで、表示内容だけでなく、その後の利用者行動まで含めて見る必要がありそうだ。
文/吉田光男 内外タイムス
