「みんなで大家さん」はなぜ《危ない投資》に見えなかったのか…老後資金を入れた人が見落とした《安心材料の正体》

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不動産投資の小口化商品として知られる「みんなで大家さん」をめぐる問題が、いまなお収束の見えない泥沼の様相を呈している。

事態が決定的に表面化したのは、2025年夏のことだ。主力商品の分配金支払いが突如として停止。これを契機に出資者による集団訴訟が相次ぎ、返還請求額は200億円を超える規模にまで膨れ上がった。

前編『行政処分、配当停止、集団訴訟、終わらない混乱…「みんなで大家さん」が大問題化した《本当の理由》』では、「みんなで大家さん」の成田プロジェクトが抱えていた不自然な資金循環と、その末路としての資金枯渇を見てきた。

なぜ、これほど多くの個人が、この案件を「危ない投資」とは受け止めず、むしろ手堅い運用先として選んでしまったのか。

“危ない”どころか、“これなら大丈夫そうだ”と思わせる材料がそろっていたのです」--不動産鑑定士の小原正徳氏はそう語る。

その中身をたどると、現代の個人投資家が知らず知らずのうちに足をすくわれてしまう、“安心感の正体”が浮かび上がってきた。

投資家に安心感を与えた“国のお墨付き”

多くの出資者が投資を決めた最大の理由として挙げるのが、公的な認可である。「みんなで大家さん」は、不動産特定共同事業法(不特法)に基づいて運営されていた。

「テレビCMを大々的に打ち、行政の許可を得て営業している。こうした事業者がまさか大きな問題を抱えているとは思わない、という心理は自然なものです。

しかし、役所の認可はあくまで『事業を行う資格』の確認であり、事業の成功や元本を国が保証するものではありません。この境界線が曖昧なまま、強い“安心材料”として機能してしまいました」(小原氏、以下「」も)

実を言えば、「みんなで大家さん」が行政処分を受けるのは今回が初ではなく、2013年にも一度、60日間の業務停止処分を下された過去があるのだ。

「当時も解約騒ぎが起きましたが、その後に『危機を乗り越え、元本割れせずに分配金を出し続けてきた』という実績を強調しました。一度つまずいても立て直したというストーリーは、日本人にとってかえって信頼感に繋がりやすいです。それに不動産という実物資産があり、インバウンド需要の追い風もある。そう説明されれば、信じてしまう人がいるのも無理はありません」

不動産のプロが「年利7%」を怪しんだ理由

しかし、不動産投資の実務を知る立場から見れば、この「年利7%」という数字には明確な違和感があったと小原氏は指摘する。一般の投資家が見落としやすいのは、その利回りが「何によって」成り立っているのかという点だ。

「通常、不動産投資で高いリターンが出る理由は、銀行融資による『レバレッジ』を効かせているか、あるいは『極めてハイリスクな物件』を扱っているかのどちらかです。ところが、成田プロジェクトなどは借入金を使わない全額出資スキーム。レバレッジなしで、経費を引いた後の純利益から7%を継続して出すのは、都心のオフィスビルでも不可能な数字です」

レバレッジを使わずに7%の配当を出せるということは、事業自体が猛烈にハイリスクであるか、あるいは前編で触れたような「身内取引」による無理のある資金循環があるか、そのどちらかしかない。

「最近では、YouTube広告などで利回り10%を謳う商品まで出ていました。都心部の土地で、レバレッジなしに10%というのは、通常の家賃収入ベースでは考えにくい。分配金の原資が本当に第三者のテナントから来ているのか、そこを見極める目が必要です」

もう一つ、投資家の背中を押していたのが「いつでも途中解約できる」という説明だ。有事の際には資金を引き揚げられるという流動性の高さが、出資のハードルを下げていた。

「この言葉が、実は最大の罠でした。実際の手続きは単純な契約解除ではなく、出資者としての『地位を運営者に譲渡する』という仕組み。つまり、運営会社が買い取ってくれるから返金されるというだけで、会社に現金がなくなれば止まってしまいます。案の定、2024年の行政処分後の解約殺到により、運営側は手続きを停止しました。出口の鍵を握っているのは、実は運営側だったのです」

株式や上場J-REITのように市場でいつでも売却できる商品とは、流動性の意味がまったく異なる。表向きは換金しやすく見えても、実態は運営会社の資金余力という「細い糸」にぶら下がっている構造だったのである。

見落としやすい、“投資ではない投資”の正体

投資に失敗した人を「自己責任」と切り捨てるのは簡単だが、同じような構図の案件は、名前を変えながらこれからも現れるだろう。そのため、私たちは今回のできごとから“判断の基準”を学ばねばならない。

「まず見るべきは、現場の実態です。完成予想図ではなく、本当に開発が進んでいるか。現地に行けなくても、Googleマップの航空写真を見れば一目瞭然です。次に、収益の源泉。誰が賃料を払い、その金がどう分配金に回っているのか。身内同士の取引で数字が作られていないかをみます」

さらに欠かせないのが、運営会社の財務状況である。決算書を見て、自己資本比率や手元資金を確認する。そこを見ずにお金を出すのは、投資ではなく「運営会社への無担保の信用供与」に等しい。

「高利回りには必ず理由があります。その理由を自分で理解し、納得できない限り、大切なお金を入れるべきではありません。今回の問題が明らかにしたのは、『認可がある』『実績がある』といった表面的な材料だけでは、安全性は判断できないということです」

本当に見るべきなのは、その商品が「何で稼ぎ、どこから分配金を出し、本当に換金できるのか」という基本。そこを見誤れば、安心そうに見える商品が、実は最もリスクの高い劇薬だったという悲劇を繰り返すことになるのだ。

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