「トイレで涙がブワーって」入社直後にセクハラ被害、激務で生理が8か月ストップ…元TBSアナ・木村郁美(53)が語る“アナウンサー時代に迎えた心身の限界”
〈飲み会で“胸を触られて”大泣き、周りからは「それくらい普通だよ」と…元TBSアナ・木村郁美(53)が明かす、マスコミ業界で受けた“セクハラ被害”〉から続く
現在はフリーとして活動する、元TBSアナウンサーの木村郁美(53)。TBS時代、レギュラー9本を抱えるアナウンサーとして忙しく動き回る裏で、“悪魔”と呼ぶ元夫から預金を奪われ、連帯保証人にされた結果、計3億4000万円もの借金を背負うことになったという。
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そんな彼女に、入社時のマスコミ業界では当たり前だったセクハラ、激務を極めていた局アナの日々、レギュラーを抱えすぎていることから局内で浮上した“影武者いる説”などについて、話を聞いた。(全6回の2回目/3回目に続く)

木村郁美さん ©石川啓次/文藝春秋
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「入らないでください!」ロケ先のホテルで押し問答したことも…
――マスコミの世界に入るや、セクハラが待ち受けていたと。
木村郁美(以下、木村) マスコミに限らずセクハラは、どの世界でもあったと思います。セクハラを受けた時は、帰りの電車で泣いたこともありましたね。
ロケに行った時も、ホテルの部屋のドアで「入らないでください!」って押し問答したこともありました。
――そういった経験を重ねるうちに、本来ならつけなくてもいい耐性がついてしまうものなのでしょうか。
木村 どうやりくりして、うまいことかわしていくか。そういうことを覚えちゃうんですよね。でも、若い頃はそんな術を身につけることが異常だって気付かないんですよ。
かわし方を覚えられない子もいて。とっても真面目でまっすぐだから、そんなことできないんですよ。本当はそれが当たり前なんですけどね……。
私はそこまでひどい目に遭ってないほうなのかもしれないですけど、やっぱり近年とは違い、ハラスメントに鈍感な時代だったと思います。
「得がたい経験ができた」それでもアナウンサー時代が楽しかったワケ
――お母様には、そういった話をされたりは。
木村 後々になって話はしましたけど、その時は心配をかけたくないじゃないですか。アナウンサーになったことをすごく喜んでくれてたので。マスコミのそういうところは画面に映らないし、知る必要もないかなとか思ってましたね。「まあ、頑張るしかないか」って。
――それでも振り返ってみると、アナウンサー時代は楽しかったですか。
木村 トータルで言うと楽しかったです。まあ後半は、いろいろプライベートのこともありましたけど、得がたい経験ができたので。「ほかの職業だったら絶対できなかっただろうな」ってことがあまりに多くて。
まだ私がいた頃はロケにもお金をかけられたので、海外にも行けましたし。いろんな経験をさせてもらえて、すごく楽しかったです。
楽しかったけど、当時思っていたことがあって。
子供から「アナウンサーになりたい」と言われたら…賛成しないと考えていた理由
――はい。
木村 自分の子供が生まれて「お母さんみたいにアナウンサーになりたい」って言ったら、賛成はしないだろうなと。さすがに今は違うと思いますよ。
もっと守られてるし、働き方改革もあるから、ちゃんとお仕事ができると思うので。だから、今だったら応援するかもしれないですけど。
――アナウンサー志望の学生から相談されることもあったのでは?
木村 そういうときが一番キツかったです。夢を抱いている子たちに、あんまりそういう話をするのもどうかなって。そればっかりじゃないし、良いこともたくさんあるので。
とりあえず学生さんたちには、「一旦立ち止まってみて」と話していました。
「あなたはもっといろんな可能性を秘めていて、その中の1つの選択肢がアナウンサー。アナウンサーになれたらいいけど、いまは『なりたい』というだけで、もっと向いてるものがあるのに、その芽を潰してしまっている可能性もある。
なので、一度俯瞰で見て立ち止まって。それでもアナウンサーと思ったら、もう一回私のとこに来てください」って。まずはそう話すようにしていました。
「木村さんには影武者がいる」とまで言われた多忙すぎるスケジュール
――入社2年で多忙になったとのことですが、一番記憶に残っている激務なスケジュールはありますか。
木村 朝の番組が終わったら、玄関に車が止まってて、そのまま6時間かけて車で富山に行き、映画の撮影をして。映画ってポンポンポンってスムーズにいかないし、待ち時間もあるじゃないですか。かといって、皆さんが真剣に撮影しているのに自分だけ寝るわけにもいかないし。
東京に戻らないといけないギリギリの時間になったので、「次の日のオンエアに間に合わないんですけど」と言って撮影して、また6時間掛けて車でTBSに戻ってきて、そのまんまオンエアに突入っていう。あの時はさすがに運転手さんも「いや〜、大変ですね。こんなのなかなかないです」って驚いてました。
――出ている番組が多くて、TBSでは「木村さんには影武者がいる」と言われていたそうですね。
木村 「絶対に影武者いるでしょ」って言われてました。生放送の現場で目の前に私がいるのに、「あれ、いまロケにも行ってない?」と驚かれたこともあります。
――相当ですよね。
木村 つらいと思うと余計きつくなるから、あんまり考えないようにしていた時期があって。
でもアナウンサーって、番組のピースのひとつにすぎないんですよね。やっぱり番組って、チームで作っていくものじゃないですか。チームでやってる感がすごい好きだったので、自分だけが忙しいとか、自分だけがつらいわけじゃない。
スタッフもみんなそうなので、文句なんて言えないし、忙しくて当然だと思ってましたし。それで数字が良かったり、番組がいい感じに完成するとうれしかったですし。
「生理が8か月ストップ」「帯状疱疹が出た」多忙すぎる日々に心身の限界を迎え…
――気持ち的にはそうであっても、体は悲鳴を上げそうですよね。
木村 帯状疱疹が出たりとか、生理が8か月ストップしてて、そのあともずっとピルを飲まないと来なくなったりとか、婦人科系は結構きつかったですね。膀胱炎になったりとか。
――そうした不調は、誰かに相談していましたか。
木村 それを言うと、いわゆる愚痴になっちゃうんですよ。言ったところで改善されるわけでもないので。産業医の方もいらっしゃいましたけど、行かなかったですね。
あと、今は労働時間って決められてるんですけど、私のときは残業を青天井につけられるような時代ではあったので。オファーが来たお仕事、やっぱり「木村と一緒にやりたい」と思ってお話をくれた仕事は断りたくないじゃないですか。
私が退社するぐらいのときって、もう労働時間が決められていたから、オファーが来てるのにそれを引き受けられない子とかもいたりして。私は来たもの全部をやりたかったので、そこは自己責任なんですよ。
だから愚痴を言ったり、会社に訴えたりっていうのは、「じゃあ断ればいいじゃん」っていう話なので。
「あの時代があったから今の自分がいる」
――その考え方、我々の世代だとよく分かります。
木村 私たちより下の世代の子たちは、ある意味でかわいそうだなと思うこともありますよね。
――どういった意味でかわいそうだと?
木村 あくまで私の意見ですけど、やっぱり厳しくされるほうが、自分の成長はあるし。たとえば料理の世界って、師弟的な面で厳しいように見られるじゃないですか。叱られながらも、そこで技を自分のものにしていくという。
私、食の関係のお仕事もやらせてもらってるんですけど、お会いする大将や親方は、そういう経験をしてきた世代なんです。
だけど今はつらいとすぐ辞めちゃうから、昔ながらの厳しい修業じゃだめで、褒めに褒めると。どっちがいいんだろうなって。
私はやっぱり自分がそうだったからかもしれないですけど、ゆくゆくは財産として残るのは厳しいほうなのかなって。あの時代があったから今の自分がいる、と堂々と言い切れるので。
「下着、靴下、洋服って並べて…」1分1秒でも長く寝るために、生活を効率化
――東京と富山を往復した話をお聞きしましたけど、多忙すぎて自分が今どこにいるのか分からなくなるようなことはありましたか。
木村 いっぱいあります。起きたときに、「私、日本のどこにいるんだろう」とか「昼? 朝? 夜?」とか。そんな感じですよ。ちゃんと冷静になってからじゃないと、自分がどこにいて、何をするのかわからない。
とにかくもう、寝るか仕事するか。ご飯を食べる時間も削る感じで。朝の番組に出る時は、出勤するための動線を部屋に作っとくんですよ。下着、靴下、洋服って並べて、シューって行けるような。すこしでも効率化させて、とにかく1分1秒でも長く寝たい。
――「ヘンゼルとグレーテル」みたいな動線を作るまでに。
木村 朝の番組に出て本気で厳しい時は、CMが30秒とか1分入った間に「ちょっとごめんなさい」って後ろに行って、一瞬だけ横になって「はい、起きました」と戻ってきたりとか。もう周りも「あ、木村さん寝まーす」「はい、起きまーす」みたいな。
ある日トイレで涙があふれ「いかん、病院に行こう」と…
――生理が8か月も止まってしまったときは、さすがに焦りましたか。
木村 それがですね、変な話、来ないと楽なんですよ。ピリピリとかイライラもないし。良くないんですけど。おまけに病院行く時間も惜しいので、そのまんまほっといたんですけど。
でも、公衆トイレに入ると、生理用品が捨ててあったりするじゃないですか。なんかそれを見たら涙ブワーって出てきて、「あ、ちょっとこれ私、止まっていることへのプレッシャーがどっかにあるんだな」と気づいて。「いかん、病院に行こう」と。頑張って病院行って、そこからピルを処方してもらうようになったんですけど。
――生理が止まっていることへのプレッシャー。
木村 当たり前ですけど、生理来ないと子ども産めないじゃないですか。そういうものが怖さに繋がったんでしょうね。普通に生理が来ることがうらやましくなって。
状況として異常といえば異常じゃないですか。その異常に対して、脳が「いい加減、気づきなさい」って警告を送ってたのかもしれないです。
撮影=石川啓次/文藝春秋
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(平田 裕介)
