「東大に行けるのに行かない」“地方の秀才”の問題点。「アンダーマッチング」が子供の選択肢を奪ってしまうワケ
せめて、先輩(モデルケース)がいれば、その人に聞けるのに。
日本で一番東大合格者が多い開成をはじめとして、毎年東大合格者数を2桁以上出す学校はある程度同じ顔触れがそろいます。
それは、「校内順位○位くらいが東大合格ライン」「遊んでばかりいた○○先輩ですら、東大に行ったらしい。なら、俺も……」と、とにかく参考にできる情報が多く、東大受験へのハードルが低いことが大きな要因なのです。
100人以上の学生が「とりあえず東大」と挑みに来ては散っているのです。例年の合格者数を見る限りは、せいぜい上位150〜200名あたりまでの学生までしか、勝算はないというのに。
これは、同校の「東大を受けやすい雰囲気」が多分に影響しているのではないでしょうか。
学力や指導体制だけをみれば東大生が続出してもおかしくない学校は全国にごろごろあります。
ですが、「医学部進学」「地元旧帝大進学」のモデルが「東大進学」より多いがゆえに、東大志望者自体がなかなか出ない。
バットを振る回数が少なければ、必然的にヒットも少なくなる。ヒット数が少ないから、バットを振るのが怖くなる……。そんな負のループが、今も全国の進学校で繰り返されています。
地元を出るのが怖い。お金で苦労をかけたくない。そもそも、自分にそんな実力があるのかわからない。だって、東大生なんてひとりもみかけたことがないのだから。
その結果、優秀な学生たちが、今年もまた地元の学校に引きこもってしまう事態が発生しているのです。
◆大人世代が「自由になる練習」を
確かに、東大や京大など、難関大進学が全てではありません。
ですが、「東大に行こうかな?」と考えてから「東大より、地元の大学に行きたい!」と選んだ場合と、東大進学をハナから諦めて、「行けそうな範囲」で選んだ場合では、全く意味が異なります。
挑戦できなかったと気づいたとき、その後悔は重くのしかかるでしょう。
挑戦に成功するか失敗するか、そしてその価値をどうとるかは本人次第です。私は「挑戦のタイミングすらわからず、機会を見送ってしまう子どもたち」を、日本からなくしたい。
日本の子どもたちに今一番足りないのは、英才教育を与える塾でも、屈強な体を鍛えるジムでもなく、きっと「夢を見る余裕」です。
挑戦するには、夢がいる。そして、私自身が深く実感していますが、夢を見るには、金が要るんです。
子どもたちが、足元ではなく、上を見て安心できる世界を作る。そのために、我々大人ができることとはなんでしょうか。
少なくとも、「勉強をしろ」と行動を縛るものではないことだけは確か。きっと言葉では伝わらない抽象的な思いの伝播が必要です。
我々大人世代が、率先して「自由になる練習」を行うべきなのかもしれません。
<文/布施川天馬>
―[貧困東大生・布施川天馬]―
【布施川天馬】
著述家、教育ライター。 一般財団法人「ドラゴン桜財団」評議員。 1997年生まれ。世帯年収300万円台の家庭に生まれながらも、効率的な勉強法を編み出し、一浪の末東大合格を果たす。著書に最小コストで結果を出すノウハウを体系化した『東大式節約勉強法』、膨大な範囲と量の受験勉強をする中で気がついた「コスパを極限まで高める時間の使い方」を解説した『東大式時間術』など。株式会社カルペ・ディエムにて、お金と時間をかけない「省エネスタイルの勉強法」などを伝える。MENSA会員。(Xアカウント:@Temma_Fusegawa)
