酒好きなら外せない! 中田英寿「CRAFT SAKE WEEK」10年目は、さらにスゴイぞ!【前編】
元サッカー日本代表・中田英寿さんが代表を務める「JAPAN CRAFT SAKE COMPANY」が主催する、国内最大規模の日本酒を中心とした食文化の祭典「CRAFT SAKE WEEK」(以下、CSW)。10周年を迎えた今回は、さらにスケールアップして東京・六本木ヒルズアリーナで13日間の日程で開催中です(4月29日まで)。東京にいながらにして、全国の名酒蔵めぐりができるこのイベントの、まずは初日の会場と、スペシャルな試食会を体験してきました。
「出羽桜」4代目の愛娘が推すスパークリングを!
毎年毎年、スケールアップしているなとは感じていたが、今年はとくにすごい! 「CRAFT SAKE WEEK 2026 with OMAKASE byGMO at ROPPONGI HILLS」と銘打たれた10周年記念の今回は、過去最大130もの酒蔵が、日替わりで毎日10蔵ずつ、「注目度MAX!いまいちばん熱い酒蔵の日」「ニュースタンダード、進化する酒蔵の日」など、その日のテーマに合わせて登場している。もちろん“酒のアテ”になる食も大充実で、こちらは3〜5日ごとに有名レストランなどが出店。とにかく酒好きなら(とくに今年は)見逃す手はないイベントなのだ。
4月17日、15時の開場を前に、入場ゲートやコイン売り場(会場で販売される酒や食事はCSW専用コインでしか買えない)には長蛇の列ができていた。みんなが、このイベントの価値を知っているからだ。
主宰者の中田英寿さん(上写真)は、これまで500以上の酒蔵をめぐり、そこで醸(かも)された酒の味、つくり手の想いや技術などをその目と舌でたしかめてきた。その中田さんや日本酒の専門家ら200名による試飲会を経た酒が、このCSWに集まってくる。ファンはそのことをよ〜くご存じなのだ。
スターターセット(オリジナル酒器とコイン14枚で4800円)を無事にゲットし、さーて、何から楽しもうかなとあたりを物色していると……。
「山形県天童市の出羽桜です! スパークリングはいかがですか?」
と、明るいお姉さんが声をかけてくれた。仲野みのりさん、出羽桜酒造のご令嬢だ。さっそくオススメの「出羽桜 AWA SAKE」を、コイン7枚を払って注いでもらった。シュワシュワとしっかりした泡。呑めばさわやかで、ドライなシャンパンといった味わい。この日のCSW日本酒のテーマ「祝・10周年。Awa酒で乾杯の日」にピッタリだ。
「ちょっといいお値段はするのですが、その分手間ヒマをかけて、シャンパンと同じシャンパーニュ製法でつくっています。ビン内二次発酵で天然の炭酸を閉じ込めていますので、後から炭酸を注入したものとはまったく違う泡感を楽しんでいただけると思います。ウチは田んぼでの米づくりから手がけてもいたりして、田植えは社員たちでやっています。1892年の創業から134年、手づくりにこだわっています」
と、みのりさん。彼女は3人姉妹の末っ子で、昨年2月に結婚。ご主人の洋輔さん(冒頭写真の左端)が仲野家に婿養子に入り、いま出羽桜酒造の5代目となるべく、群馬県の酒蔵で修行中なのだという。ちなみに、冒頭写真の真ん中が4代目でみのりさんの父、益美社長だ。
「私には娘が3人おりまして、(酒蔵の)跡継ぎはどうなるのかなと思っておりましたが、みのりの夫が、婿養子に来て、5代目になってくれると。ありがたい限りです」
と、目尻を下げっぱなしの益美さん。娘夫婦や社員挙げての出店を、ことのほか喜んでいるようだった。
「陸奥八仙」「七賢」に「梅すき焼きコロッケ」を!
続いて、青森県八戸市「八戸酒造」のブースへ。「陸奥(むつ)八仙」などのブランドで有名な酒蔵だ(筆者も訪ねたことあり)。八仙ガールズさんにコイン9枚と引き換えに注いでもらったのは「8000 DRY SPARKLING 2025」。甘めのものも多いスパークリング界にあって、名のとおりたしかに辛口! そして強めの酸を感じる。これで引き締まった味になっている。味づくりがうまい!
そうこうしているうちに、今度は利き酒師の平野さんに薦められて、有名ブランド七賢の「空の彩(ソラノイロドリ)」を。1750年創業の山梨県北杜(ほくと)市「山梨銘醸」の貴醸酒(きじょうしゅ)スパークリングだ。もちろんやや甘いのだが、甘ったるくはない。軽やかに呑めて、実にうまい!(そればっかり)
だが、日本酒だけ呑み続けていては、すぐ酔っ払って味の比較ができなくしまう。何か食べないと。だが、そこはCSW、人気レストランなども多数出店しているから安心だ。コイン5枚で東京・渋谷“ひとりしゃぶしゃぶ”“ひとりすき焼き”で人気の「七代目松五郎」の「梅すき焼きコロッケ」を購入。ムシャムシャやりながら酒も呑む。黒毛和牛の稀少部位ネックと、ジャガイモきたあかりを合わせた逸品だ。うまくないわけがない。
そしてCSWは、日本酒だけではなく違うお酒も呑みたいという人や、そもそも酒が苦手な人にも対応している。たとえば4月17日から4日間だけ出店していた上写真上の「みなべクラフト梅酒」。日本一の梅の産地である和歌山県みなべ町からやってきた「CU9」代表の高田遼さんが、祖父から受け継いだ梅園の梅でつくった、世界初のジン梅酒「Yii(イー)」は……アルコール度数26.1%とは思えない呑みやすさ。メッチャうまい!
そして中田英寿さんの会社は、実は日本茶もつくっている。上写真下の「HANAAHU TEA」がそれで、日本の四季それぞれをイメージしてブレンドした、料理に合う“究極の食中茶”を出している。「KUSAWAKABA(春)」「AOMOMIJI(夏)」「AKIZAKURA(秋)」「FUYUTSUBAKI(冬)」で、私は夏が一番好みかなあ……。
10年連続ミシュラン星「La BOMBANCE」も出店!
CSWの10周年もスゴイが、こちらもスゴイ! なんと10年連続でミシュランの星を獲得している名店が、東京・西麻布にある。和食の枠にとどまらない日本料理の店「La BOMBANCE(ラ・ボンバンス)」(以下、ボンバンス)だ。オーナーシェフの岡元さんは新潟県出身。日本料理の伝統をベースに、フォアグラやトリュフといった素材を積極的に採り入れた進化形和食をつくり続けている。
そんな名店が、4月26日〜28日の3日間限定でCSWに出店している。その珠玉の料理たちを、ボンバンス店内で特別に試食させてもらった。もちろん、CSWに登場した日本酒、福井県「黒龍酒造」の「九頭龍 純米」に合わせて、だ。
「まずお酒に合うことを考えたメニュー構成にしてありますので、味はしっかりめ。ですので、お酒を飲みながら、ワーッと華やぐ感じで召し上がってください」(岡元さん)
まさに、これまで食べたことがないクオリティの食材と、その組み合わせの妙。そこに岡元さんたちの技術が加わると、以下のような素晴らしい料理になる。
春先に出回る小さいヤリイカに数の子のバラコを詰めた料理。薄味の醤油出汁(しょうゆだし)につけてあって、酒が進む! 山わさびがさわやかに香り、大豆と桜海老は甘めの唐揚げで、おせち料理を思わせる味わい。正月、おせちとくれば、お屠蘇(とそ)。ハイ、これまた日本酒に合うに決まってますね!
「ボクはお酒に一番合うのは出汁(だし)だと思っていて、出汁を飲みながらお酒を飲むと、本当に互いを高め合いますから」
こう岡元さんが言うとおり、鶏の出汁がよ〜くきいて、酒粕もゴマも入った汁物が、とにかく酒を呼ぶ! 浮かべられたネギが、これまたいい仕事をしているのだ。
えっ!? 高級食材フォアグラを煮つけに?
「今回のCSWに合わせてつくった新作です。まずフォアグラを煮つけにするんですが、フォアグラって脂だから溶けちゃうんですよ。ですので乳化させて、また固体に戻して、熟成した甘みのある干し柿に詰めています。これだけでお酒が5〜6杯いけそうですね」
と笑う岡元さん。ポテトサラダについてはこう解説する。
「食感を奏でるものにしたかったので、山キクラゲや揚げ豆、紅白なますを入れてあります。紅白なますってお正月くらいしか出番がなくて、それも寂しいなと思って、こういうハレの舞台用につかってみました。上には茶葉をマリネにしたものを載せています」
見慣れた牛タンとはまったく違う、鮮やかなロゼ色!
「3時間かけて低温調理しているので、牛タンのお刺身のような感覚で味わっていただけますが、しっかり火は通っています。そしてこのネギだれが、お酒によく合うと思います」(岡元さん)
はい、そのとおり! 牛タンらしいコリコリ感は少しあるが、それより、ねっとりした肉の旨みが感じられる、驚きの逸品だ。
山口県萩市の銘柄牛のフィレ肉、そのなかでも芯の最高級部位をつかったローストビーフだ。岡元さんいわく、
「塩やニンニクで3日間マリネした後、これも3時間かけて低温で火を通しているので、とてもやわらかいです。そして長萩牛は赤身に旨みがあっておいしいんです。手前の(結晶が)ピラミッドのような形のお塩は、旨みがあるキプロス(共和国)のものです」
とのこと。たしかに、肉は厚切りなのに、驚くほどのやわらかさ! 塩は昆布出汁が入っているかと思うほどの旨みがある。
「ご飯ものは、私が新潟出身なんで、新潟のもち米をつかっておこわにしました。春らしく釜揚げしらすと、添えたのは春に摘んだ蕗と越後味噌でつくった蕗味噌。これもお酒が進んじゃいますね」(岡元さん)
この試食会では日本酒だけでなく、前述のブレンド日本茶、HANAAHU TEAもふるまわれていた。このデザート+佃煮は、そうしたお茶にも、お酒にも合うすぐれもの。
「今回の料理は、お茶とのコラボということも考えて、茶葉や抹茶を入れました。そしてこの昆布は、毎日出汁をとるのにつかった、主に日高昆布を、切って、炊いたものです」
と岡元さん。こうしたミシュラン店でも、しっかりサステナブル、“もったいない”を意識しているのだ。
というわけで、こんなに素敵なボンバンスの料理がCSWでいただけるのは4月28日まで、CSWの会期も29日まで。さあ、六本木ヒルズアリーナへ急げ!
Photo:横江 淳、CSW(中田さん)、舩川輝樹(ボンバンス) Text:舩川輝樹(FRaU編集長)
