ドラマ『月夜行路─答えは名作の中に─』放送記念スペシャル鼎談

写真拡大 (全3枚)

ドラマ「月夜行路 ─答えは名作の中に─」のクランクイン直後、実現した今回の特別鼎談。原作者の秋吉理香子さんは、本作で「名作文学×ミステリー」という新しい切り口を生み出しました。

主演を務めるのは波瑠さんと麻生久美子さん。文学オタクのバーのママ・ルナと、家族にないがしろにされる主婦・涼子という、凸凹コンビを演じます。

波瑠さんと麻生さんが抱える役柄への葛藤と意気込み、そして秋吉さんの創作秘話など、作品への想いを余すところなく伺いました。

異色のバディが織りなす「未知」の謎解紀旅へ

秋吉 今回はルナ役、涼子役を引き受けてくださり、ありがとうございます。以前から映画やドラマを拝見していて大好きな波瑠さんと麻生さんに、ドラマに出演していただけるなんて、夢みたいです。

波瑠 こちらこそ光栄です。私が演じるルナさんは文学オタクであり、バーのママでもある濃ゆいキャラクター。小説を読みはじめた時は自分が本当に演じられるのかを考えながら読んでいましたが、気づいたらルナさんに魅了されていて。さらにルナさんと涼子さんが巻き込まれる事件やふたりの旅の行く末も気になって、夢中で読んでしまいました。

麻生 私もあっという間に読んでしまいました! 主婦がバーのママと一緒に昔の恋人を探しに行くっていう設定も新しいし、名作文学を「謎解き」の鍵にするというルナさんの独創的な切り口にも驚かされました。私自身、名作文学を読むのに憧れていた時期があって。梶井基次郎の『檸檬』など実際に読んだことのある作品もお話に登場したので、読んでいて嬉しくなりました。秋吉先生はどういったきっかけで、この物語を着想されたのですか。

秋吉 じつは20年ほど前から、枠組みだけは頭の中で仕上がっていました。過去の恋人を忘れられない主婦が、小説家志望の友人と一緒に恋人を探す逃避行の物語。私には知的で美しくユーモアもある友人がいて、彼女と一緒に旅できたら楽しそうだなと思ったことが、構想のきっかけでした。

ただその頃に私は純文学を書いていて、このお話の枠組みも純文学のテーマとして考えていたことでした。文芸誌「メフィスト」で連載を依頼された時も、最初はミステリーとして書くつもりはなかったんです。途中から編集者さんとやはりミステリーにしようということになり、大阪文学ゆかりの地を巡りながら謎解きをする話に方向転換していきました。大阪は地元ですし、文学ゆかりの地を散歩しながらインスピレーションをもらっていました。

秋吉 ルナの相棒になる涼子は上が女の子、下が男の子とふたりの子どもがいて、麻生さんと同じですよね。配役が決まった時、ご自身と重なる部分があるのではないかと思っていました。じつはうちの息子が思春期真っ只中で、涼子は私自身の想いが強く乗っているキャラクターでもあります。

麻生 そうなのですね! では、先生になりきって演じます(笑)。私は涼子のように家庭内で孤独は感じていないですけれど、上の子が少し反抗期に入ってきて、そこに向き合う大変さを知ったので涼子を応援する気持ちで読んでいました。平凡な主婦という設定の中で「涼子らしさ」をどう出していくのか、悩みながら取り組んでいます。

秋吉 それは予想外でした。私は麻生さんのことを、どんな役でもこなせるカメレオン俳優さんだと尊敬しているんです。ドラマ「MIU404」のキリッとした警察官役も格好よかったし、「unknown」での吸血鬼のお母さん役もキュートでしたし。信頼する波瑠さん、麻生さんにお引き受けいただいて、もしかしたら私は前世でとってもいいことをしたのかもしれません。

「一人芝居」の執筆で 人物をよりリアルに

秋吉 俳優さんって一度にマルチなことができる、特殊なお仕事ですよね。カメラの前で全身を気遣いながら台詞を口にして、表情や身体で演技もして……、私には到底できないなと思っていて。そもそも台詞を覚えるだけでも大変そうなのに。おふたりはどうやって台詞を覚えているのですか。

麻生 私は何度も練習を重ねる方法が一番合っていますね。以前、舞台をやらせていただいた時に、何回も何回も練習することで自分の中に台詞が入っていく感覚があって。長い台詞を覚えるなら十日はいただけると安心です(笑)。

秋吉 麻生さんはコツコツタイプなんですね! 波瑠さんは?

波瑠 私は麻生さんとは逆で、何日かかけて覚えようとするとフーッて台詞がどこかに消えちゃうんです。なので、撮影の前日に詰め込みます。「今日この台詞が覚えられなかったら、明日はないぞ!」と自分を奮い立たせています(笑)。

秋吉 ええっ! それはすごいですね。

麻生 私もびっくりしたんですけど、ドラマの撮影初日と二日目はルナさんの謎解きシーンで、波瑠ちゃんはとんでもない台詞量だったんです。何十ページしゃべるんだろうってくらい。なのに全部の台詞が波瑠ちゃんの頭の中に入っていて、撮影がサクサク進んで、予定より早く終わったんです! 「どうやって台詞を覚えてるの?」って私も興味津々で聞いちゃいました。

秋吉 そのシーン、ドラマで拝見するのが楽しみです。

麻生 波瑠ちゃんは本当に頼りになるんです。涼子がルナさんの推理に聞き入るみたいに、私も「ついていきます」って気持ちになる(笑)。

波瑠 ルナさんのクレバーな雰囲気を前面に出す撮影だったので、終始ドキドキしながら臨んでいました。でも合間に麻生さんと交わした、ちょっとした雑談が楽しくって! あの会話で肩の力が抜けてリラックスすることができました。

秋吉 カメラが回っていないところでも、バディの絆が深まっているのですね! 素晴らしいです。

波瑠 私も秋吉先生に聞いてみたいことがあります。ルナさんと涼子さんというまったく違うタイプの女性を、どちらも生き生きとしたリアルな存在として描かれているじゃないですか。一つの作品の中でどのように切り替えながら、ふたりの気持ちを書かれているのか気になりました。

秋吉 執筆と演技って、少し似ているのかもしれないと思うことがあります。たとえば登場人物が怒っているシーンを書く時は、私も怒った顔をしてみたり、潔癖症の登場人物がいたら手をよく拭いてみたり。そうしているうちに台詞だけじゃなく、彼らの行動を書く地の文も自然と浮かんでくるんです。

波瑠 なるほど! 演技しながら執筆されることで、登場人物をリアルにさせているのですね。たしかに秋吉先生の文章からは、ライブ感が伝わってきます。

秋吉 ありがとうございます。もしかしたら執筆は一人芝居みたいなものかもしれませんね。『月夜行路』に絡めて、もうひとつ質問を。このお話は「もう一度会いたい人」が主軸となっていますが、おふたりがもう一度会いたい人はいらっしゃいますか。

麻生 私は七、八年前に亡くなったペットの犬にもう一度会いたいです。大切にしていたし、たくさんの思い出があるけれど、亡くなる時に立ち会えなくて。「あの時、ああしておけば」と後悔する気持ちがいまだにあります。できるならもう一度会って、いろいろお話しできたらいいなと思います。

秋吉 私も同じです! 子供の頃から生き物が大好きで、犬とか猫とか鶏とか、いろいろなペットを飼ってきました。時にはかわいそうな別れもした歴代の子たちに会って「私がママでよかった?」と聞いてみたいです。波瑠さんはいかがですか。

波瑠 私も愛犬と別れたことがあるので、会ってみたい気持ちがあります。あとは中学生の時の担任の先生に会いたいかな。役者の仕事をはじめる時に応援してくださった方なんです。ふと「今も教員をされているのかな、お元気かな」と思い出す時があります。

秋吉 波瑠さんの素質を見抜いていらっしゃったのかしら。素敵な先生ですね。今日はおふたりとお話しできて楽しかったです! これからも撮影が続くと思いますが、頑張ってくださいね。

麻生 私も秋吉先生のチャーミングなお人柄に触れながら作品について語り合えて、幸せな時間でした。『月夜行路』はストーリーが面白いので、見てくださる方にもきっと満足していただけるはずです。バディ感が画面を通して伝わるように、ルナさんとも、波瑠ちゃんとも、これからもっと関係を深めていきたいです。

波瑠 そうですね。秋吉先生が書かれた小説『月夜行路』は、大切な人を見つめ直すきっかけを与えてくれる物語です。ドラマでも小説と同じ温もりが伝わるように、麻生さんとタッグを組んで頑張ります。

秋吉 楽しみにしています! お二人の胸をお借りして、ドラマが素晴らしい旅になりますように。本日はありがとうございました。

(二〇二六年二月 聞き手・構成/山口真央)

波瑠(はる)

1991年生まれ、東京都出身。2015年にNHK連続テレビ小説「あさが来た」でヒロインを務め、一躍全国的な人気を獲得、2017年に第41回エランドール賞を受賞。近年の出演作に映画『アナログ』ドラマ「わたしのお嫁くん」「こっち向いてよ向井くん」「グレイトギフト」「アイシー〜瞬間記憶捜査・柊班〜」「フェイクマミー」など多数。

麻生久美子(あそう・くみこ)

1978年生まれ、千葉県出身。1998年に映画『カンゾー先生』でヒロインに抜擢され、第8回日本映画批評家大賞新人賞、第22回日本アカデミー賞最優秀助演女優賞を受賞。近年の出演作に映画『ラストマイル』ドラマ「MIU404」「unknown」「ぼくたちん家」など多数。2024年にはNHK連続テレビ小説「おむすび」でヒロインの母親役を熱演した。

秋吉理香子(あきよし・りかこ)

兵庫県出身。早稲田大学第一文学部卒業。ロヨラ・メリーマウント大学大学院にて映画・TV番組制作修士号取得。2008年、第3回 Yahoo! JAPAN 文学賞を受賞し、2009年に『雪の花』でデビュー。主な著作に『月夜行路』『悪女たちのレシピ』『終活中毒』『無人島ロワイヤル』『暗黒女子』などがある。

『月夜行路 ―答えは名作の中に―』連続ドラマ化!

主演 波瑠 麻生久美子

日本テレビ系 2026年4月〜6月 水曜よる10時放送中

春ドラマは女優・波瑠を中心に回っていた!…「麻生久美子とのW主演」に加えて「夫や元パートナー」の作品に業界が大注目