IT・ソフトウエア株が軒並み急落するなか「それでも投資の妙味が高まる」IT関連株5選

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上場会社が大株主に名を連ねるIT関連銘柄

「AIがソフトウエアを滅ぼす」―そんな物騒な見立てが市場を席巻している。

米AIベンチャー「アンソロピック」の最新モデル「クロード」がシステム開発の内製化を促し、外部への発注需要を根こそぎ奪うとの懸念(いわゆる「SaaSの死」=サブスクリプション型業務ソフト市場の縮小シナリオ)が広がり、IT・ソフトウエア関連株は日米ともに急落した。2025年末比で3〜4割下落した銘柄も続出し、バリュエーション(株価収益率など投資指標)は市場平均並みにまで切り下がった。

一方、企業がIT投資の手を緩めているのかといえば、答えはNOだ。日銀が4月1日に発表した短観3月調査では、全規模・全産業のソフトウエア投資計画(含む金融機関)が2026年度で前年度比+11.3%と、1年前の同時点(+5.9%)から上昇している。「先行き不透明だからこそAI導入とDX(デジタル変革)を急ぐ」という逆説的な需要構造が、数字として浮かび上がっている。

こうした環境変化を象徴するのが、住友商事によるSCSKの完全子会社化だ。生成AIの進化はDXのステージを飛躍的に押し上げ、現場とエンジニアの意思決定を従来以上に迅速化させる必要性が高まっている。互いに上場企業である親子間には、少数株主への利益相反配慮という「資本の壁」が障壁となっていた。

住友商事が約8,820億円を投じ、TOB(株式公開買付)価格を6回も引き上げてまでもSCSKを完全子会社化に踏み切った背景だ。さらに東証改革による親子上場解消圧力も業界再編の追い風となる。株価がさらに下落する局面では、上場企業の傘下にあるIT・ソフトウエア関連銘柄への投資妙味が高まる可能性を見据えておきたい。

インターネットイニシアティブ〈3774〉

・4月10日終値2,535円 配当利回り(予)1.54%

生成AIが普及すればするほど、データ通信量は爆発的に増大する。同社の事業の軸足はAIに代替されやすいアプリケーション層ではなく、サービスを支えるITインフラおよびネットワーク領域にある。AIブームは脅威ではなく、同社にとって追い風に他ならない。業界全体への売り圧力でITインフラ株まで割安に放置されているならば、「巻き添え安」と言ってよいだろう。

同社の大株主にはKDDI(9433)が名を連ねており(所有割合11.5%)、自社ネットワークサービスとSI(システムインテグレーション)を組み合わせた一体型提案が競合との差別化につながっている。大手企業や官公庁との取引実績を積み上げてきた結果、2026年3月期第3四半期(10〜12月)末時点のSI受注残高は291億円と、前年同期比29.6%増となった。顧客基盤も2025年3月末時点で約16,000社に達した。2027年3月期からはネットワークサービスの価格改定効果が顕在化し、マージン(利益率)改善が株価の再評価を後押しする展開が期待される。

野村総合研究所〈4307〉

・4月10日終値4,418円 配当利回り(予)1.67%

同社はAIに代替される受け身の立場ではなく、AIを積極的に内部実装して生産性向上とコスト削減を実現する攻めの姿勢を打ち出している。すでにシステム開発のテスト・開発フェーズでのAI活用を進めており、今後は要件定義からリリースまでの全工程への適用を見据えている。

注目すべきは、同社の優位性をさらに高めようとしているバディがアンソロピックであることだ。2026年3月には、アンソロピックの日本法人「Anthropic Japan」とのパートナーシップ拡大を発表し、国内企業向けにクロードの導入を支援する事業を開始した。「AIに食われる」どころか「AIを売る側」に回ったとも言える。

日本特有の言語特性・セキュリティ・規制要件に対応したAIサービスの支援・サポート契約は新たな収益源となり得る。社内でも要件定義からリリースまでの全工程にAIを適用し、2027年3月期以降のコスト削減に直結させる構えだ。筆頭株主の野村HD(8604)が議決権比率23.0%(間接保有3.8%含む、2024年3月末時点)を握っており、金融ITの共同利用型プラットフォームは、ライバルが一朝一夕に模倣できる代物ではない。

JMDC〈4483〉

・4月10日終値3,530円 配当利回り(予)

同社の強みは、健保組合・国保・自治体・医療機関から収集された非公開の一次データ(生データ)を持つことだ。生成AIがインターネット上の公開情報を学習しても、絶対に手が届かない領域である。むしろAI活用の進展はデータ需要を押し上げるため、AI普及は同社の追い風となる。

同社は疫学データ(大規模な人口集団を対象とした健康・疾病データ)の収集・利活用のパイオニアとして、健保組合を中心とした国内最大規模のヘルスビッグデータを構築してきた。電子カルテや国保・自治体由来のデータも拡充しており、データの質・量・多様性において強固な参入障壁を有している。

DPCデータ(診断群分類包括評価データ)への強みは製薬企業向けの高付加価値サービスに直結し、中期的に20%台の営業利益成長継続が見込まれる。2023年にTOBで出資比率を引き上げたオムロン(6645)は2025年9月末時点で54.21%を保有しており、バリュエーション調整が進んだ今、追加TOBの素地は整いつつある印象だ。

オービックビジネスコンサルタント〈4733〉

・4月10日終値6,187円 配当利回り(予)1.79%

技術面だけで言えば、AIが同社製品の機能と肩を並べるレベルまで進化したことは否めない。上場企業の中でも屈指の高収益力を維持することが困難になるとの市場のシナリオは排除しづらいものがある。ただし、既存顧客の離反を容易には招かない強固な優位性と、市場成長の余地を持つ点は見逃せない。

同社の「奉行シリーズ」は、会計・給与・販売管理・在庫管理という企業の急所に深く食い込んでいる。基幹業務には法令準拠・監査対応・セキュリティ水準の充足が絶対要件で、AIに丸投げすることへの心理的・法的障壁は高い。一度導入すれば顧客データはシステムに蓄積され続け、乗り換えには多大な工数・リスク・コストが伴う。

また、同社が主要顧客とする中小企業にとって、基幹業務を生成AIによる内製化へリプレース(システム入れ替え)することや、サポート体制を構築するコストとリスクは計り知れない。複数のハードルをすべて超える必要を考えれば、AIで代替するよりも「勘定奉行におまかせあ〜れ」とする方が得策だろう。オービック(4684)が36.8%を保有する筆頭株主であり、財務基盤の安定性の高さも株価の下落局面では魅力を高める要素となる。

デジタルガレージ〈4819〉

4月10日終値2,140円 配当利回り(予)2.20%

筆頭株主であるりそなHD(8308)は出資比率を30.95%まで引き上げており、同社はりそなHDの持分法適用会社(議決権の20%以上を保有される関係会社)となっている。東証改革による親子上場解消圧力の高まりとバリュエーション調整が重なる現局面は、りそなHDとの関係強化にとって好条件が揃う環境でもある。

事業面では、りそなHD・JCB・DGの3社が共同で取り組む「ステーブルコイン(法定通貨の価値に連動するデジタル通貨)を活用した個人向け決済インフラ」の構築が中期的な企業価値向上の鍵となりそうだ。2027年度の実用化を目指しており、りそなHDの個人顧客基盤とJCBの加盟店ネットワークを活用できる点は、単独では到達し得ない普及速度をもたらす強力な援軍となろう。

決済インフラはネットワーク効果(利用者が増えるほど価値が高まる性質)と高い参入障壁を有している。AIが直接代替しにくい領域だ。生成AIを開発プロセスに積極的に活用し、開発スピード向上とコスト効率化を図る方針も明示しており、「AIを武器にする企業」としての再評価を期待したい。

国内ITのM&A件数は10年前の約3倍に達している。NTTは2025年9月にNTTデータグループを2兆3,700億円で完全子会社化し、NECは2024年10月にNECネッツエスアイを約2,400億円で取り込んだ。東証も親子上場を維持するハードルを引き上げており(2025年2月「親子上場等に関する投資者の目線」公表)、AIの進化が国内IT企業の再編をさらに加速させる公算は大きい。

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