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東京23区の新築マンション平均価格が1億3000万円を超えるなか、不動産市場にはある連鎖が起きている。海外投資家が都心のタワーマンションを買い進めた結果、価格が高騰。それによってターゲットを高級住宅街の戸建てへと移した日本の富裕層が、世田谷などの地価を押し上げるという構図である。『2035年 増える富・消える富の見分け方 インフレ地獄を生き抜く資産戦略』(KADOKAWA)より、不動産投資家・小林大祐氏が都心から郊外へと需要が波及していく「局所的なトリクルダウン」の実態を解説する。

マンションが高すぎる…東京から脱出する「子育て世代」

東京から子育て世代が流出している。東京23区の新築マンション平均価格は大幅に上昇しており、不動産経済研究所のデータによると、2025年4〜9月は1億3309万円と、前年同期に比べ20.4%伸びている。首都圏全体で見ても、平均価格は19.3%増の9489万円で、1億円の大台が間近に迫っている。新築の価格が上がれば当然、中古物件の値段も上がるし、賃貸の家賃も高くなる。

少し前までは、大企業に勤める人や公務員、共働きのパワーカップルなど、6500万円ほどのローンを組める属性の良い人であれば目黒区や世田谷区といった人気の住宅地で家を持つことができた。

しかし、今やそれも難しくなっている。一般的な収入の層にはもちろん、高収入の共働き夫婦にも手が届かなくなっており、結果として埼玉や千葉などの郊外に住居を求める層が増加している。

たとえば、最近になって私が購入した世田谷の物件は、少し前までは坪単価250万円だったのが、わずか数年で400万円以上に跳ね上がっていた。しかも、その物件は駅から離れた袋小路で決して好条件とはいえない立地であるにもかかわらず、ここまで高騰している。庶民には逆立ちしても手が届かないエリアというものは昔からあったものだが、それがどんどん広がっていると感じた。

この現象は、「トリクルダウン(富裕層や大企業を優遇する政策を行うことで経済を活性化させ、その経済的な恩恵が徐々に低所得層へと浸透していくとする経済理論)」で説明される。

都心物件は外資が買いあさり、日本の富裕層のターゲットは郊外へ

日本でも特に値段の高い都心のタワーマンションなどの高額物件を海外の富裕層が買いあさって価格が高騰したため、日本の富裕層がこうした物件に手が届かなくなり、超都心からターゲットエリアを拡大し始めた。

すると、高属性の会社員やパワーカップルが住む場所だった世田谷や目黒の物件価格が高騰して手が届かなくなり、どんどん郊外へと需要が流れていく。住みたい街で家を買えない人が、ターゲットエリアを郊外へと拡大し移動していく連鎖が生まれ、千葉や埼玉の中で都心へのアクセスが良く子育て環境の良いエリアの価格も連動して上昇していく構造である。

彼らを受け入れることとなる郊外の都市の中でも、若い人口を増やして税収を確保しようと、移住促進策を積極的に展開する自治体も登場している。子育て支援を手厚くしたり、移住する世帯に支援金を支給したりするなどして、都心から流れてくる子育て世代を呼び込もうとしているのだ。

これは、東京一極集中が緩和されるというより、人口減少という過酷な環境下を生き残ろうと、自治体同士で人口を奪い合っているだけだ。

ちなみに、このトリクルダウン現象はあくまで東京都心と、そこへのアクセスが良い周辺エリアだけで起こっている極めて局所的な現象であることに注意してほしい。このトリクルダウンが東京から地方にまで拡大することは現在の外資流入による東京都心への需要過熱トレンドから見てもまずないし、神奈川や千葉であっても都心から遠いエリアにまで波及することは残念ながらあり得ない。

小林 大祐

不動産投資家