「叱らない育児」や「体験させなきゃ」に疲れたら。子どもの自己肯定感を育てる、本当に大切なこと
家庭環境によって子どもが経験できることに差が生まれる「体験格差」や、「ほめて伸ばす子育て」が注目されています。「なにをどこまでしてあげるべき?」と迷う人も多いのではないでしょうか。子どもの成長に本当に大切なこととは? 教育機関と連携しながら研究を行う「いこーよ 子どもの未来と生きる力研究所」に聞きました。
※ この記事は『自立した子どもになるための やらない子育て』(扶桑社刊)より一部を抜粋し、再編集しています。

体験を与えることが“親の愛情”ではない
育児について調べると「あれをすべき」、「これをすべき」という情報であふれていることに気がつきます。こうした情報を目にするたびに、「自分はダメな親だ」と暗い気持ちになる人も少なくないはず。
「できていない」と自信を失い、落ち込むことは親にとって不幸ですが、よかれと思って情報どおりに子どもに押しつけることも、子どもにとっては不幸です。
休日に話題の場所に連れて行ったり、特別な体験に申し込んだり、“特別ななにかを与える”ことが、親の愛情というわけでは決してありません。これらができていないからといって、「愛情がたりていない」と心配する必要はまったくないのです。
親のいちばんの役割は、子どもにとって安心できる居場所になること。なにかを与えるのではなく、そばで見守り、全力で支えるスタンスでいることが重要です。
その安心感があれば、子どもは親を信頼し、「失敗しても大丈夫」と、自分のやりたいことに夢中になったり、果敢に挑戦したりと、本来自分が持つ力を存分に発揮できるようになります。
もちろん、失敗することもあるでしょう。ですが、親という安心できる居場所があれば、再びチャレンジする力を取り戻すことができるはずです。
親が安定した支えとなることで、子どもの自立のサイクルは自然と回り始めるのです。
「体験を与える」より大事にしたい“親の役割”

親が安心できる居場所になるためには、子どもが失敗したときも、否定せずに受け止めてあげることが重要です。
これは、昨今ビジネス分野で重要視されている“心理的安全性”の考え方に通じています。
Google社が行った調査では、失敗を過度にとがめるなど、率直な意見が言えない心理的安全性が低い職場では、社員がアイデアを出せなくなったり、チャレンジしなくなったりして、結果として会社全体の生産性の低下につながることがわかっています。
社員が否定され続ける環境では、「言ってもどうせ却下される」と考え、挑戦する気力を失ってしまうのです。
子育てにおいてもまったく同じことがいえます。むしろ、大人でも心理的安全性が担保されていない状態で自分の意見が言えないのであれば、子どもの場合はなおさらでしょう。
「これをしたい!」と言っても、「あなたには向いていないと思う」「そんなことより、ほかにやるべきことがある」などと否定されれば、子どもは自分のやりたいことにフタをしてしまいます。
失敗したことを非難されれば、「がんばっても意味がないんだ」と、挑戦する前からあきらめてしまうでしょう。
「特別なことを子どもに与えられていないかも…」と心配するくらいなら、子どもが安心してなんでも言え、伸び伸びとできる状態に、自分を、家庭を整えることを心がけましょう。
これこそが、親の唯一の役割と言っても過言ではありません。
ほめられて、叱られて、子どもはすこやかに成長する

巷にあふれる情報になにが正しいのかと迷いがちになりますが、結論から言えば、そのときの状況や子どもの性格によるものの、叱るのもほめるのもどちらも必要です。
ほめられてばかりで育った子どもよりも、ほめられ、かつ叱られもして育った子どもの方が自己肯定感が高いという研究結果も出ています(※)。
ただし、叱る場合は問題行動について叱り、人格を否定するような言い方は避けること。そして叱ったあと、その行動をやめたらその変化をほめてあげること。すると子どもの自信につながり、叱られても自己肯定感を下げずにすみます。
とはいえ、毎日続く親子関係。つい叱りすぎた、言いすぎたということはあると思います。
親としての自分を責めがちですが、そのときはクールダウンしたときに「ごめんね、言いすぎちゃった」と素直に謝れば大丈夫ですよ。「あなたがきらいで叱ったわけじゃないよ」と優しく静かに伝えてあげればOKです。
※ 『子供の頃の体験がはぐくむ力とその成果に関する調査研究 報告書[平成29年度]』(国立青少年教育振興機構)P98 4. 子供の頃にほめられた・叱られた経験と社会を生き抜く資質・能力の関係
