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総資産約4億4,000万円。600坪の土地と多額の現金を保有する父親(90代)を持つFさん(60代)が直面したのは、「1億円を超える相続税」という現実でした。かつて納税のために土地を手放した経験があるなか、残された資産を再び失うわけにはいきません。そこで浮上したのが、土地評価の見直しによって相続税を大きく圧縮するという選択肢でした。相続実務士・曽根惠子氏が実例をもとに解説します。

相続税を半分にする“土地評価”の盲点

Fさん(60代)のご家庭では、90代のお父様の相続を試算したところ、相続税が1億2,850万円にのぼることが明らかになりました。

財産総額は約4億4,760万円。その中でも大きな割合を占めていたのが、自宅の土地600坪でした。しかし、この土地を詳しく調べていくと、実は「評価額が大きく下がる可能性」があることが見えてきました。

そこで、当方と税務の専門家である税理士が連携し、早い段階で現実的な土地評価を行うことにしました。

まずは現地調査を実施し、利用状況を確認。自宅、空き地、庭、雑木林などに区分したうえで、それぞれの実態に応じた評価を進めていきました。

600坪の土地の実態

Fさんのご自宅は、先祖代々受け継がれてきた広い土地の上に建っています。敷地は約600坪。しかし、そのすべてが有効に利用されているわけではありませんでした。

現地の状況を確認すると、次のような状態です。

・敷地の中央付近に自宅が建っている
・南側には庭がある
・奥の土地は傾斜が強く、山林のようになっている
・木が伸び放題で、手入れや伐採も行われていない
・家の手前にはかつて貸家があったが、老朽化により解体され、現在は更地

つまり、600坪の土地といっても、実際に活用されているのは一部に限られていたのです。

特に奥の斜面は傾斜がきつく、容易に立ち入ることも難しい状態でした。このように利用が困難な土地は、評価額を引き下げる要因となります。

路線価で計算すると評価は「約2億円」

相続税における土地の評価は、一般的に路線価方式で算出されます。この土地についても、前面道路の路線価を基準に計算したところ、評価額は約2億円という結果になりました。

しかし、この評価はあくまで「600坪の宅地」として一律に算出されたものです。土地の形状や利用状況を十分に反映しているとは言えません。

実際には、

・傾斜地が多い
・奥は雑木林のような状態になっている
・宅地として利用しにくい部分がある

といった事情があります。

つまり、「実際の利用価値」と「税法上の評価」にズレが生じている可能性があるということです。

評価を大きく下げた「地積規模の大きな宅地」

そこで検討したのが、「地積規模の大きな宅地」という評価方法です。これは、一定の条件を満たす広い土地について、評価額を減額できる制度です。簡単に言えば、「広すぎる土地はそのままでは使いにくい」という考え方に基づいています。

たとえば、

・一度に購入できる人が限られる
・分割や開発に手間やコストがかかる
・利用効率が低い

といった理由から、一般的な宅地よりも価値が低く見積もられるのです。

Fさんの土地についても、この制度の適用を検討しました。その結果、土地の評価額は約2億円から約1億円へと、大きく引き下げられる可能性が見えてきました。つまり、土地だけで約1億円の評価減が見込めるということです。

評価は専門家によって大きく変わる

ここで重要なのは、土地評価は「誰が計算するか」によって結果が大きく変わるという点です。

実際には、

・土地の形状
・接道状況
・利用状況
・傾斜
・奥行き
・周辺環境

など、さまざまな要素を総合的に判断する必要があります。そのため本来は、相続が発生してから専門家に依頼するケースが一般的ですが、今回は生前の段階で税理士に正式な評価を依頼しました。

相続が発生してから慌てて評価するのではなく、生前のうちに正確な評価額を把握しておくことが非常に重要です。なぜなら、評価額が明確になれば、

・本当に節税対策が必要なのか
・どの程度の対策が必要なのか
・どの方法が最も効果的なのか

を具体的に判断できるからです。

相続対策は、「正確な数字」が出て初めて設計できるものなのです。

土地評価は相続対策の出発点

今回の土地評価の見直しによって、相続税の計算は大きく変わりました。

そしてここから、

・贈与
・資産の組み替え
・土地活用
・納税資金対策

といった、本格的な相続設計が始まっていきます。

相続対策というと、すぐに節税方法を探そうとする方が多いものです。しかし、本当のスタートはそこではありません。

出発点となるのは、「財産を正確に評価すること」です。

 【今回の重要ポイント】

・広い土地は評価が下がる可能性がある
・「地積規模の大きな宅地」で評価減できる場合がある
・ 土地評価は専門家によって大きく変わる
・相続対策は「正確な評価」から始まる

曽根 惠子
公認不動産コンサルティングマスター
相続対策専門士
相続実務士®

株式会社夢相続 代表取締役

「相続対策専門士」は問題解決の窓口となり、弁護士、税理士の業務につなげていく役割であり、業法に抵触する職務を担当することはありません。