侍ジャパンと対戦したチェコ代表【写真:ロイター】

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連載「ベースボールの現在地」 チェコTV局のレポーターに聞いた野球人気

「THE ANSWER」では、5日に開幕したワールド・ベースボール・クラシック(WBC)に合わせて参加各国の野球を紹介する連載「ベースボールの現在地」を展開する。チェコ代表は2023年の前回大会で初出場、初勝利。世界にその存在を示したが、国内での野球熱はその半年前から高まっていたという。今大会も現地で取材したチェコ国営テレビ局のレポーターに実情を聞いた。

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「チェコ野球のターニングポイントは2023年のWBCではないと思います」

 中国戦での初勝利、侍ジャパン相手の奮闘……。3年前の前回大会、チェコ野球がついに世界でスポットライトを浴びた。しかし、国内での盛り上がりの転機はその半年前。初の本戦出場を決めた2022年9月のWBC予選にあった。そう証言するのは、国営放送「チェコTVスポーツ」のレポーター、マルティン・コザーク氏だ。今大会も代表チームを追いかけ、2月末の宮崎キャンプから来日していた。

「チェコがWBCに出場するということで、国内では『ワオ!』と大きな話題になりました。もちろん中国戦での初勝利は世界に衝撃を与えましたし、ショウヘイ・オオタニが脱帽して敬意を示してくれた日本戦もSNSで大きくバズりました。間違いなく2023年は大きな大会でした。しかし、それ以前にチェコで野球人気がなかったわけではありません。それまでも人気はありましたよ」

 同局では前回大会も全試合を生中継。特にチェコ戦は試合前後にスタジオでの特別番組も組まれた。チェコが日本と戦った一戦は約100万人が視聴。「視聴率はかなり高く、アイスホッケーの世界選手権に匹敵するレベルでした」。国内でサッカーに次ぐ人気スポーツと張り合うほどの注目度を誇ったという。今大会も18試合をチェコ語の実況付きで全国放送。その野球中継の歴史は意外にも長い。

「約20年前、チェコで初のスポーツ専門チャンネルが開局しました。それがチェコTVスポーツです。開局当初、放送枠がたくさん空いていたんです。そこでサッカーや野球の放送を始めました。野球の試合は3時間ほどあるので、長時間の枠を埋めるスケジュールの都合上、ちょうど良かったんです。シーズン中は週に2、3試合放送していました。そう、開局と同時に野球の放送も始まったんです」

2023年WBCからの一番の変化は「自信」

 当初から野球を担当していたコザーク氏。「だから今いる選手たちのことは、彼らがU-12やU-10でプレーしていた子どもの頃から知っています。私が入局した時にはまだ生まれていなかった選手もいますね」と目を細めた。WBC初出場、初勝利を果たした歴史的な2023年大会を経て、一番大きく変わったことは何かと問うと、こんな答えが返ってきた。

「自信ですね。間違いなく選手たちの自信です。このチームのほぼ全員がアメリカの高校や大学に行っています。考え方が変わりました。ご存じの通り、チェコは約40年間共産主義の支配下にありました。人々はみな画一的であると考えられ、自信を持っていませんでした。しかし、今の世代は全く違います。アメリカ的アプローチと言えますね。

 自信があり、前向きで、自分たちは勝てると知っています。グラウンドに出てきて『よし、勝つぞ!』と言うんです。20年前なら『日本と試合するけど、どうせ無理だよね……』という感じでしたから」

 今大会、チェコは残念ながら4連敗でプールCの最下位に沈んだ。しかし、前回王者の日本を相手に7回まで0-0の接戦を演じた。結果的に0-9と大差がついたものの、その戦いぶりは確かに3年間の成長を感じさせるものだった。

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 3月5日に第6回ワールド・ベースボール・クラシック(WBC)が開幕し、熱戦が展開されている。2006年に第1回が行われてから20年、過去3回優勝した日本の強さが世界に認められる一方、国際大会を通じて世界の野球の距離は着実に縮まってきている。「THE ANSWER」では大会期間中「ベースボールの現在地」と題し、選手やスタッフが“国際野球”に挑む思いを伝える。他の種目と競技人口を比較すればマイナーと言われることもある野球。ただ世界中に、このゲームを愛する人がいる。注目される数年に一度の機会だからこそ、世界の野球の今を知り、ともに未来を考えるきっかけを作る。

(THE ANSWER編集部・鉾久 真大 / Masahiro Muku)