(※画像はイメージです/PIXTA)

写真拡大

Googleの「クチコミ」は、いまや会社やお店の評価を大きく左右する指標のひとつ。ですが、虚偽の内容や悪質なクチコミに悩やまされるケースも少なくないといいます。では、どのようなクチコミが「名誉棄損」として認められるのでしょうか。弁護士の森大輔氏が詳しく解説します。

Googleのクチコミ、どこからが名誉棄損?

飲食店やクリニック、サロン、企業のサービスページ。 今やGoogleのクチコミは集客にも評判管理にも欠かせない存在です。「参考になった」「この店を選んでよかった」といった声が、新たな顧客を呼び込むケースも少なくありません。

一方で、事実と異なる内容や感情的な罵倒や断定的な非難、従業員個人を名指しした攻撃的な表現といったクチコミに悩まされ、「このまま放置していいのか」「削除できないのか」と頭を抱える会社や店舗側も増えています。

では、クチコミはどこまでが「正当な評価」で、どこからが「名誉毀損」になるのか。また、書き込んだ側が感想のつもりでも法的責任を問われるケースはあるのか、解説していきます。

Googleのクチコミが名誉毀損となる条件

■「名誉毀損」とは

Googleマップのクチコミやレビューは商品やサービスの利用者が素直な感想を書くものではありますが、何を書いても許されるわけではありません。名誉毀損罪に該当するような悪質な内容のクチコミに対しては、削除を求めたり、投稿者を特定して損害賠償を請求したりすることができます。

「名誉毀損」とは、人の社会的評価を低下させる可能性のある具体的な事実を、不特定多数の人が知ることができる状態で示す行為です。では、どのようなクチコミであれば、名誉毀損と認められるのでしょうか?

■名誉毀損と認められるための条件

名誉毀損と認められるためには、以下の3つの条件をすべて満たす必要があります。

ア.公然と:不特定または多数の人が認識できる状態のことです。Googleクチコミは誰でも閲覧できるので、「公然と」の要件を満たします。したがって、Googleクチコミが名誉毀損になるかどうかの判断は、イ(事実を適示して)とウ(人の名誉を棄損した)の条件を満たしているかがポイントになります。

イ.事実を摘示して:人の社会的評価を低下させるような具体的な事実を示すことです。「事実」とは、証拠などによって真偽を判断できる具体的な事柄を意味します。

たとえば、飲食店への「料理が美味しくない」というクチコミは、ネガティブなものではありますが、あくまでも個人の感想であり、真偽を判断することはできません。したがって、イの条件を満たさないことになります。なお、イの条件を満たすかの判断において、示された事実の内容が嘘であるか真実であるかは問われません。

ウ.人(法人も含む)の名誉を毀損した:「名誉」とは、その人がその品性、徳行、名声、信用等の人格的価値について社会から受ける客観的な評価(社会的評価)のことです。クチコミの内容が、一般の読者の普通の注意と読み方を基準として、その人の社会的評価を低下させると判断されれば、「人の名誉を棄損した」の要件を満たします。

たとえば、犯罪行為、不倫など一般的に世間から後ろめたい評価を受ける事柄については、社会的評価を下げる内容と評価されやすいといえます。

なお、たとえば「N医院の院長は結婚しているのに、奥さん以外の異性と不倫している」という院長の名誉を貶めるクチコミがあった場合、それが全体的に見て院長個人のみならず病院の評判を貶めるものと評価できる場合には、院長個人に対する名誉毀損と同時に、病院に対する名誉毀損も成立することもあります。

■公共の利害に関する場合の特例

以上の3つの条件を満たしたとしても、刑法第230条の2によって、記事の内容が真実であれば、記事が公共の利害に関するもので、公益目的で公表された場合、違法な名誉毀損にあたらないとされています。

簡単にいうと、たとえ会社やお店にとっては不都合な内容であっても、真実であり、それを公表することが社会のためになると認められる事項であれば、違法な名誉毀損とはならない可能性があるということです。

したがって、投稿されたクチコミを削除するためには、書き込みの内容が虚偽であることを証拠に基づいて主張する必要があります。

書かれている内容が虚偽であることについて特段の証拠がない場合には、クチコミが公共の利害に関するものではないこと(単なるいやがらせ等)や、公益目的で書かれたものでないことについても、削除を求める法律上の根拠として主張していくことになります(ただし、単なる嫌がらせかどうかの立証は難易度が高いです)。これらに関しては、具体的なケースごとに方針が異なりますので、弁護士に問い合わせましょう。

名誉毀損になりやすいクチコミの例

一般に、Googleクチコミで名誉毀損が認められやすいジャンルとしては、飲食店へのクチコミ、美容院へのクチコミ、旅館・ホテルへのクチコミ、病院へのクチコミがあります。

【飲食店へのクチコミの例】

・料理にゴキブリの足が入っていた。
・注文時と精算時で提示される価格が異なっていた。

【美容院へのクチコミの例】

・無理やり高級シャンプーを売りつけられた。
・美容師が無断で体を触ってきた。

【旅館・ホテルへのクチコミの例】

・この旅館の主は元ヤクザで、客に対しても気に入らないことがあればすぐ怒鳴る。
・このホテルでは盗難事件が多発していて、スタッフが犯人の可能性が高い。

【病院へのクチコミの例】

・必要な検査をせずにいい加減な診断をしている。
・この病院の代表医は医療ミスを繰り返しているが、金の力でもみ消している。

 名誉毀損となる場合にできること

■Googleに対する削除請求

Googleポリシーでは、Googleのサービスを使用して他の個人やグループを攻撃するような悪質で不適切な内容の投稿を禁じています。名誉毀損となるクチコミであれば、Googleの「不適切なクチコミを報告する」制度を利用した削除依頼によって消してもらえる可能性が高いです。

■名誉毀損を理由として損害賠償請求

プロバイダ責任制限法に基づき発信者情報の開示を請求することで、投稿者を特定できます。そのうえで、特定された発信者に対して、名誉毀損を理由として損害賠償を請求する裁判ができます。弁護士に対してこのように投稿者を特定して訴えることを依頼する場合、費用が発生しますが、決して安いものではありません。

しかし、クチコミを削除してもまたすぐ投稿されて、いたちごっこになって業務に支障が出ているような場合には、投稿者を特定して損害賠償の裁判手続きを行う対応が、被害を最小限にとどめるのに効果的です。どこまでの法的措置をとるべきかについては、弁護士と相談することを推奨します。

名誉毀損にならなかった場合にできること

■「侮辱」を理由に削除請求

名誉毀損とならないような投稿でも、例えば「P社長は無能だ、キモい、死ね」など、具体的な事実の適示なく人を侮辱するクチコミについては、侮辱の内容が、人種・国籍・民族・宗教・年齢・障がい・性的指向などを理由にした中傷や蔑称の場合はヘイトスピーチとして削除請求できる可能性があります。

■裁判所に削除仮処分の申立て

Googleに任意で削除してもらえない場合は、削除仮処分の申し立てを裁判所に行うこととなります。仮処分においては、任意での削除申請と基本的には同じような法的主張を行います。裁判所の仮処分による削除命令が出れば、たいていGoogleはそれに応じます。

仮処分が決まった場合、およそ2週間で、クチコミが削除されます。削除仮処分の申立てでは、説得的な理由を述べる必要があるほか、添付書類を含めて英訳を用意する必要があるため、個人での準備はハードルが高いものとなっています。

 名誉毀損とはならないクチコミの例

Googleクチコミでは「コメントがなく星1つだけ」というケースもよくあります。このような低評価のみのクチコミも、会社やお店の評価を下げる可能性はあります。しかし、このようなクチコミは、あくまでも個人の感覚的な感想であり、名誉毀損の成立要件である「具体的な事実を挙げているもの」ではありません。

そのため、名誉毀損とはならず、当該クチコミを名誉毀損を理由に削除することは難しいでしょう。このようなクチコミに対しては、高評価のクチコミを増やすことによって希釈化するという対応が有効といわれています。

怒りに任せてクチコミをすることのリスク

Googleのクチコミは、利用者が自由に意見を述べられる場ですが、「何を書いても許される」わけではありません。とくに、事実確認が不十分な内容や、断定的な表現で相手の社会的評価を下げる投稿は、名誉毀損や侮辱として法的責任を問われる可能性があります。

クチコミを書く際は、事実と評価を切り分け「自分がどう感じたか」という主観にとどめることが重要です。また、怒りや不満が強いときほど、すぐに書き込まず一度冷静になる時間を持つようにしましょう。

森 大輔
森大輔法律事務所 代表弁護士