広島テレビ放送

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 障害があっても地域で生き生きと暮らしていく。まちに溶け込んだその活動の様子を取材しました。

 呉と三原を結ぶ、国道185号沿いのレストラン「豆ナ茶屋」。平日の午前11時すぎだというのに、大勢の客でにぎわっています。とれたての野菜を使い、種類も豊富な定食が店のウリです。

■常連客
「おいしいから。うふふふふ。デイサービスへ週に3回行ってるんだけど、あとは全部ここへ来て食べる。うははは」

 レジを担当するのは、就労支援サービスの利用者です。店の駐車場では週2回、やさい市が開かれます。

「どうですか。おいしいですよ」

 元気な呼び込みが響き渡ります。販売するのは施設の畑や、近隣の農家から届いたとれたての野菜です。

■常連客
「時々寄らせてもらうんですよね。安いし新鮮なし」

 1時間もたたないうちに売り切れることもしばしばです。これらを運営しているのは、呉市安浦の社会福祉法人「くれんど」です。主に障害者向けに、就労支援や生活介護などのサービスを幅広く手掛けています。職員は128人。毎月平均250人が利用しています。

■社会福祉法人くれんど 小河努 事務局長
「障害者にとっては、行くところをつくって、することをつくって、することといってもやっぱりやりがいあることを少しでもやっていく」

 「くれんど」を立ち上げた小河努(おごう・つとむ)さんの原点は、知的障害のあった2歳上の姉です。世間から隠すようにずっと家の中で過ごし、23歳で亡くなりました。

■社会福祉法人くれんど 小河努 事務局長
「これが人の人生なのかなということに対する疑問ですね。一般的なイメージとして、いまだに親が(看る)、重い人の場合特に親が看れなくなれば(福祉施設に) 入所。入所を否定しているわけではないけれども、なぜ入所しかないのか。なぜ親が看なくちゃいけないのか」

 小河さんと一緒に立ち上げたのが、中井泰治さんです。筋力が徐々に低下する難病、筋ジストロフィーを患っています。2002年、同じ病の弟と始めた自立生活を支えるために事業がスタートしました。

■中井泰治さん
「(施設だと)玄関から外に出ようとしたら医者の許可がいるとか、家族じゃないと出られないとか、なかなか自由な自分がしたい生活ができない」

 現在は24時間介護を受けながらスーパーへ買い物に行ったり、“推し”が出演する映画を見に行ったりと、自分らしく暮らしています。

■中井泰治さん
「与えられたものばかりじゃなく自分で考えて自分で好きな、こういうの作ろうかなと料理の本もあるので見ながら作ったりとか。こうやって決められるのがいいですね」

 自分ができることを活かして地域と関わりながら生活する。「くれんど」を貫く理念です。事業所のひとつ「ジョバンニ」では、ニンジンの皮きや名刺のデザイン、アクセサリー作りなどを、それぞれのペースで作業に励んでいました。通常、支援サービスの区分が異なると 事業所も別々になりますが、ここではみな、同じ空間で作業をします。さらに、そこにスタッフが区別なく混じっているのが「くれんど流」です。

 脳性まひの大西明美さん。川尻町の賃貸住宅に引っ越してもうすぐ1年です。近所にできた友だちのところに案内してくれました。商店を営む大田さんです。

■大田恵美さん
「ちょっと話があるからここに座ってくれといつも言われて、座って内緒の話をよくします」

 大西さんは、一緒に暮らしていた 両親が亡くなった後、施設に入所していました。しかし、どうしても外に出たいと訴え「くれんど」の支援を受け家を探しました。夜間はヘルパーの介助を受けながら、地域での生活を楽しんでいます。

■社会福祉法人くれんど 小河努 事務局長
「障害者もいる、高齢者もいるもちろん若い人たちもいるそうすると街そのものも変わってくる。効率とか競争とか生産性とか。そういうものとは違う軸で街がつくられていく、これが一つのモデル」

 障害がある人もない人も時に支え、時に支えられながら、ともに地域で生きていく。「くれんど」は、持続可能な地域社会のモデルを探り続けています。

(2025年10月22日放送)