この記事をまとめると

■直6エンジンは振動特性に優れていて2次振動ゼロの「完全バランスエンジン」にできる

■世界的に有名な直6の名機といえば日産「RB26DETT」とトヨタ「2JZ-GTE」だ

■両エンジンとも非常にパワフルかつタフでチューニングにも多用される

「完全バランスエンジン」や「シルキー6」の名をもつ直6エンジン

 エンジンの気筒配列はいくつもあるが、昔から高性能エンジンといえば、直列6気筒エンジンが幅を利かせていた。「ストレート6=直6」は、振動特性に優れていて、2次振動ゼロの「完全バランスエンジン」にできるのが大きな強み。

 実用的な直4エンジンと、設計、部品、生産工程が共用できるメリットも大きく、過給機を取り付けるのも容易だ。なにより、回転がスムースで音がよく、2リッターから3リッターで高性能エンジンを作るのなら、もっとも優れた素性をもっているといってもいい。

 歴史的にも、BMW、ベンツ、ジャガー、ロールスロイスと、直6の名機をもつメーカーは多いが、日本で直6の名機といえば、日産の「RB26DETT」と、トヨタの「2JZ-GTE」だろう。RB26DETTは、日産のL型エンジン(その下敷きはメルセデス・ベンツのM180型)がルーツで、トヨタの2JZ-GTEは、2000GTなどにも積まれたM型エンジンの系譜だ。

 RB26DETTは1989年、16年ぶりに復活したスカイラインGT-R(R32)のために作られた専用エンジンで、グループAレースのインターTECで世界の強豪に打ち勝つための心臓として開発された特殊なエンジン。

 インターTECを制するためには、当時の富士スピードウェイのラップタイムで、1分30秒を切ることが必要で、そのためのパワーウェイトレシオの目標値は、2.4kg/ps以下、エンジン出力で525馬力以上と計算され(のちに4WD化されることになり600馬力を目指す)、その条件をクリアするために、最新技術を多数投入して設計されたエンジンだ。

 具体的には、6連スロットル、セラミックツインターボ(量産車)、大型インタークーラー、ナトリウム封入エキゾーストバルブ、クーリングチャンネル付きピストン、ダイレクトイグニッションなど。ベースはRB24DETTだが、ストロークを73.7mmにして、排気量を2568ccに設定。排気量が半端なのは、エンジンの排気量で車体の最低重量と、タイヤ幅の制限がレギュレーションで変わるため、その最適化を狙った結果でもある(NA換算で4500cc以下だと車重1260kgでタイヤ幅11インチ)。

 このように、RB26DETTはボア×ストロークが、86×73.7mmのショートストローク・高回転型エンジンになったので、レブリミットは市販車でも8000回転。イメージ的にも高回転型エンジンで、中低速トルクはもうひと声と思われているかもしれないが、グループA用エンジンですら、パワーバンドは4000〜8000回転と幅広く、量産エンジンベースでは異例のドライバビリティのよさを誇った。

 そして、RB26DETTはタフだった! レース仕様の目標馬力が600馬力だったので、鋳鉄のブロックは1000馬力にも耐えられたし、直6の長さゆえにねじれ振動が心配されたクランクも、700馬力まで問題なく使えた。これが多くのチューナーにRB26DETTが愛された理由でもある。

 カタログ値280馬力のRB26DETTは、ノーマルで実測300馬力近くあり、吸排気系チューンで300馬力オーバー、ブーストアップで380馬力ほど。タービン交換は、シングルやツインタービン、大小さまざまなタービンが選べた。

 レスポンスとパワーのサーキット仕様、ピークパワー重視のゼロヨン仕様、最高速仕様など、多くのエンジンが制作され、トライ&エラーのなかでチューナーの技術や開発が進み、RB26DETTとともにチューニングの世界が格段に進歩した。

「2JZ-GTE」もチューニング界で定番だった

 対する2JZ-GTEは、1991年の初代アリストに初搭載。3リッターの「2ウェイツインターボ(シーケンシャルツインターボ)」で、最高出力はRB26DETTと同じ280馬力だったが、トルクは431N·m/3600rpmと下から力強い(R32のRB26DETTは353N·m/4400rpm)。この差は、429ccの排気量の差も影響しているが、2JZ-GTEのボア×ストロークが、86.0mm×86.0mmのスクエアだったことも大きい。

 その代わり、レブリミットは6800rpmとDOHCスポーツユニットとしては低め……。高回転を楽しむエンジンではないが、トルクフルで扱い易く、優れたドライバビリティが2JZ-GTEの特徴だ。また、回転数に頼らないということは、各パーツの耐久性にも余裕を意味する。

 事実、2JZ-GTEの長所は丈夫さであり、腰下がノーマルでも600馬力ぐらいはOKなので、伸びしろの大きさは特筆できる。ノーマルタービンが、低回転域ではシングル、中高回転域になるとツインターボで過給するので、出だしもいいがトータルのタービン容量も多く、ブーストアップだけで400馬力オーバーが狙える。

 タービン交換となると、排気量があるのでノーマルカムでも600馬力クラスでも問題ないし、エンジン本体まで手を入れれば、ビッグタービンで800馬力、1000馬力も可能。コスト的には部品点数が少なくて済むシングルタービンが人気だったが、ツインターボ仕様も選べた。また1997年には、可変バルブタイミングのVVT-iが設けられ、低速での扱い易さを犠牲にせず、高速域を伸ばせるようになったのも大きい。

 これはRB26DETTにはない、強力な武器となった。チューニングの方向性としては、1993年に登場した80スープラが主力のスポーツカーで、そのキャラクターからサーキット仕様よりも、ゼロヨンや最高速仕様が目立っていた。

 最高速では、デビューイヤー、1993年のうちにHKS関西サービス(現kansaiサービス)が、200マイル(320km/h)を記録した。またボンネビルでも401.20km/hのトヨタ車最速レコードも記録している(JUNオートメカニック)これらの2JZ-GTEはいずれも1000馬力オーバーで、JUNの80スープラはシャシダイでも計測不能(上限1000馬力)で、計算上1400馬力ほど出ていたという。

 ただ、2JZ-GTEはグループAなどビッグレースで活躍した実績はない。また、エンジンのサイズや回転数に関係なく、クランクシャフトでトルクを生み出すエンジンの潜在能力を表す理論上の「平均圧力(エンジン内のピストンを押し下げる平均圧力)」=「ブレーキ平均有効圧力(BMEP)」で両エンジンを比較すると、RB26DETTが19.18bar、2JZ-GTEが18.91barとなるので、わずかにRB26DETTに軍配が上がる。

 だがしかし、両エンジンとも、日本が誇るパワフルでタフな傑作直列6気筒エンジンだったことには変わりはなく、これからもその歴史は語り継がれていくことだろう。