「いや」「だから」「でも」が多いと不快に…

写真拡大

 会話をしているとき、こちらが何を言っても「いや、だから」「でも」と“否定”ばかりしてくる人、身近にいませんか。「いや」「だから」「でも」が口癖のようになっているのかもしれませんが、こうした相手とコミュニケーションを取るとき、不快な気持ちになった経験がある人はやはり多いようで、「上司がこのタイプ…いつも疲れる」「最初に『いや』って言われるの本当に嫌い」「正直、話していてイライラする」など、“うんざり”の声が多く聞かれます。

「いや」「だから」「でも」を多用したり、こうした“否定”から会話に入ったりする人の心理とは、どのようなものなのでしょうか。心理カウンセラーの小日向るり子さんに聞きました。

自発的に気付くことは「ほとんどない」

Q.会話で「いや」「だから」「でも」を多用したり、こうした否定の言葉から入ったりする人がいますが、これはどういう心理から来る言動だと思われますか。

小日向さん「心理状態としては、大きく3つの状態があると思います。1つ目は『その人のことが嫌い』、2つ目は『言い負かしたい』、そして3つ目は『本当に相手の意見が違うと思っている』です。

1つ目については、会話をする相手に対して『負の感情を持っている』という心理が理由ですが、2つ目の場合は相手関係なく自身の気質の問題で、『とにかく否定の意見を出してディベートしたい』という気質を持っていることが要因となります。ディベート気質となる要因としては、根底に『負けず嫌い』『あまのじゃく』の性格があることが多いですが、性格だけでなく、討論や議論が多い職場環境、意思決定を行う立場など、その人が置かれた社会的地位や環境も絡み合ってきます。

否定の言葉を使う人は、もはや『えー』『あのー』といった言葉の出だしと同じような感覚になってしまっている人も多く、自発的に気付くことはほとんどないと考えます」

Q.「いや」「だから」「でも」を多用しやすい人にみられる特徴はありますか。

小日向さん「まず前提として、否定をしてくる人について『他人を否定することによって、本人には何らかのメリットがあるから否定してくる』ということをおさえておくと分析しやすいと思います。

では、なぜその人は『否定がメリットだ』という価値観になったのか。それは、年齢や性別ではなく、あくまで個人の気質的な要因や成育歴によるところが大きいと考えます。例えば、運動で競うと負けていた同級生に、言葉で言い負かす体験をしたことで自己肯定感が上がる体験をしたり、競技ディベートが強いことが仕事や社会で役に立ったり、SNSでの自分の発信にたくさんの『いいね』がついて承認欲求が満たされたり…といったことが、メリットの一因として考えられると思います。そして、その人が置かれた環境や社会的立場が、そのメリットを補強する場合があります。

もちろん、年齢を重ねれば経験値が増えるため、否定を多用する人と年齢の相関関係はあると思いますが、性別といった属性での切り取りというよりは、『その人にとっての価値』というソフトな部分が特徴になってくると思います」

Q.「いや」「だから」「でも」を多用する人と話すと「疲れる」「不快」と感じる人が少なくないようですが、なぜ、こうしたネガティブな気持ちになることが多いのでしょうか。

小日向さん「人間は基本的に、自分の行動を肯定してほしい生き物だからです。一方で、全肯定されればされるほど満足度が高くなるというものでもなく、時には『否定』という刺激も日常を活性化してくれたり、自分を高める要素になったりします。しかし、それはあくまでも適度な場合であり、刺激も多過ぎると疲労や嫌悪につながるのは、体も心も同じです」

Q.「否定から入る人」に対して、どのような接し方をするとよいでしょうか。

小日向さん「否定から入る癖は、本人は気付いていないことがほとんどです。そのため、今後も関わっていきたい相手であれば、そこを指摘してあげることがお互いにとって心地よい関係になれます。しかし、一過性の関係であれば、『いや』『でも』といった言葉はその人にとって『あのー』『えー』という枕ことばのようなものだと認識しておけばよいでしょう。

また先述したように、否定から入ることは当人にとって何らかのメリットがあるからです。そう考えると、こちらが当人だけのメリットにフォーカスして心を乱される必要などないことが、より理解しやすくなると思います」