皮膚科医に聞いた!ハンドクリームの塗る量や回数はどれくらいが正解?
冬になると欠かせないハンドクリーム。けれど、塗り方や回数、塗る量を正しく理解していますか? 今回は、「うるおい皮ふ科クリニック」院長の豊田雅彦先生にハンドクリームについて詳しく聞きました。
ハンドクリームは医学的に見て効果があると言えますか。
出典: 美人百花.com
手荒れ(手湿疹)の原因の多くは乾燥によるものです。皮膚の潤いは、主として皮脂膜、天然保湿因子、角質細胞間脂質の3つの構成によって保たれています。手の乾燥の最大の原因は、外的刺激・アレルギー要因(洗剤、アルコール、パソコン、紙、薬品、外気など)を阻止し、皮膚内の水分の蒸発を防ぐ皮脂膜(通常皮膚の表面に存在)の欠乏です。皮脂は毛穴から分泌されますが、手の平には毛が生えていません……すなわち皮脂膜がないのです。手の甲の皮膚はつまむと分かりますがとても薄いですよね。潤いの3因子(全て角層表面か角層内に存在)の皮膚内での量がいずれも少ないのです。手は平も背も皮膚(特に角層)バリア機能が弱い理由です。さらに、手を使わないあるいは手洗いをしない日ってありませんよね? 手は常に外的な刺激にさらされているので、全く手を使わないで綿の手袋を1カ月して過ごせたなら、何もしなくても乾燥や手荒れは自然と治ります(あり得ない設定ですね)。この手の崩れやすい皮膚バリア機能を物理的に守るのがハンドクリームです。ハンドクリームは言うまでもなく「保湿剤」の一種であり、保湿剤全般の乾燥皮膚に対する有効性はこれまで多くの医学論文で証明されてきました。しかしハンドクリームが手の乾燥や手荒れに有効かどうかを医学的に検証した十分なエビデンスは存在しません。しかし、それは研究における対照や保湿剤の種類の選び方の難しさなどに起因しているためであり、 手湿疹に対してこれらの使用は十分に考慮しても良いとされています(日本皮膚科学会学会「手湿疹ガイドライン」参照・引用)。研究データのみではなく、臨床的に多くの皮膚科専門医が「ハンドクリームは効果がある、患者さんに使用をすすめている」という事実が「ハンドクリームの医学的効果の証明」と思われます。日常のハンドクリームの外用は、外的刺激の緩和と保湿効果による皮膚保護のダブル効果を有します。軽症例ではこれだけで皮疹の改善をみます。

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「ハンドクリームを毎日塗っているのに、手荒れがなかなか良くならない」という声があります。ハンドクリームをより効果的に使うためには塗る回数、塗る量、塗り方、塗るタイミングにポイントがあります。
ハンドクリーム使用時の重要度:塗る回数(塗るタイミング効果を含む)>塗る量>正しい塗り方(手袋の併用効果を含む)>塗る種類
塗る回数ハンドクリームが取れてしまったら手洗いやアルコール消毒をしたあとに、その都度塗って保湿するのが理想的な使い方です。日中は食事、パソコン仕事、家事など何かと手を使う作業をすることが多いので、ハンドクリームで手がベタベタしてしまうと不快に感じてしまいがちです。ベタベタするからハンドクリームを塗るのをやめてしまうというのは保湿効果が低下するので、こまめにハンドクリームを塗り直せるように、日中用としては作業の邪魔にならないような、さらっとした使い心地のよいものを選ぶことをおすすめします。それでもべたつきが気になる方や、頻回に手の保湿が必要な方におすすめしたいのが「保湿ローション」でのハンドケアです。保湿ローション(モイスチャーライザー)は、水溶性の成分をベースに、水溶性のうるおい成分を多く含んでいます。角層に水分を与え、皮膚のバリア機能を補います。油性のうるおい成分も含んでいますが、量はハンドクリームより少なくなります。油分の配合の違いにより、保湿ローションは塗った後のベタつきが少なく、さっぱりとした使い心地になります(ちなみに私は医療者という仕事柄1日昼間約200回以上ハンドローションを使用し、仕事前後と休憩時にハンドクリームを十分使用しています)。したがって、ハンドクリームは可能な限りこまめに、最低限1日5〜6回は塗りましょう。外出時にも、コートのポケットや鞄の中に常備しておくと良いでしょう。
塗る量1回に使うクリームの量は、人差し指の指先から第1関節まで(1FTU: finger tip unite: 約0.5g)、手荒れがひどい場合は第2関節までを目安にしてください。ハンドクリームは塗る量が少ないとあまり効果が期待できません。ケチらずたっぷりの量を塗ることが手荒れを治す近道です。塗る量は保護効果のみならず使用感も重要な選択基準になり得ることをお忘れなく。ワセリンのような油脂性軟膏は保護作用に優れる一方、多めに塗ると伸びが悪いために使用感が悪いです。強い乾燥や、保湿ローションの蓋(エモリエント)としての効果を有するため、手荒れの程度に応じて各自の使いやすいものを選択すると良いでしょう。
正しい塗り方ハンドクリームは肌によくなじませるように、マッサージしながら塗ると効果的です。
(1)手の甲にたっぷりハンドクリームを取るハンドクリームを塗る前に化粧水で潤いを。このひと手間を加えることで肌が潤って柔らかく整い、クリームがなじみやすくなります。(ハンドローションを併用する場合はハンドローション→ハンドクリームの順)。
(2)両手の甲を重ね合わせるようにして、クリームを少しずつ広げる。
(3)手のひらでクリームを反対側の手の甲と手背に親指側から小指側へ、すりこむようになじませる。親指から小指に向かって1本ずつていねいになじませ、爪と爪周にも塗り込む。手湿疹は指先から広がりやすいので、一番ものに触れたり、使ったりする指先を意識して、指の1本1本を重点的に丁寧に塗ることをおすすめします。指の付け根から指先に向かって、小さい円を描くようにマッサージしたら、付け根から指先に向かって軽く引っ張りながら滑らせ、先端を軽くプッシュして圧をかけてください。これを1本ずつ行いましょう。
寝る前は綿100%の手袋をするとより効果的です。保湿剤は単純塗布(塗りっぱなし)でのみ使用されているが、ヘパリン類似物質外用後ラップあるいは手袋を着用し、それを2週間以上継続すれば、著明な効果が得られるでしょう(日本皮膚科学会学会「手湿疹ガイドライン」参照・引用)。なお、手袋は肌触りのよいものを選ぶようにしてください。

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塗るタイミングその使い心地から日中に使うものか、就寝前に使うものか、使うタイミングに合わせてハンドクリームを選びましょう。ハンドクリームは、手洗いして流れ落ちた後に毎回塗るのがベストです。とはいえ、手を洗う機会が多い場合は、そうはいかないかもしれません。その場合は、就寝前だけでもマッサージしながらしっかりハンドクリームを塗りましょう。日中は使用感が軽めのもの、就寝前には高保湿なものと、使い分けするのも良いでしょう。いずれにしても、就寝前には一日働いた手をいたわるように、マッサージしながらハンドクリームを塗るのがポイントです。
塗る種類実際に使ったときに塗りやすく、続けやすいものを選んでください。医薬品として用いる(処方可能な)ハンドクリームとしては、尿素軟膏、ヘパリン類似物質およびワセリンに限られます。化粧品や医薬部外品は薬局に多数あり、これらの中から自分に最適なハンドクリームを見つけるのは困難です。試供品があれば、潤い、使用感、かぶれの有無などを試してみたいところですね。少量のハンドクリームが数種類入っているトライアルセットもあり使い切りやすいことも利点ですので利用してみるのも一案です。さまざまな有効成分を含んだハンドクリームもあり、天然セラミド(セレブロシド:ヒトが持つセラミド似た構造を持ち、肌なじみがよいセラミド)配合のハンドクリームは、皮膚内に水分を長時間閉じ込めることからおすすめです。ただしセラミド含有ならどれでも有効ではなく、手湿疹患者15例に対して疑似セラミド(セラミドに類似した物質を化学的に合成したセラミド)を5%含有する保湿クリームが、対照(疑似セラミド不含)に比べ高い有効率を示すことが報告されていますが、エビデンスレベルは低いのです(日本皮膚科学会学会「手湿疹ガイドライン」参照・引用・一部改変)。その他、保湿系として、ヒアルロン酸・グリセリン・セラミド・シアバターなどが配合されているものや、ビタミン系として、ビタミンE・B・C・Aなどが配合されているものなどがあります。ささくれ・ひび・あかぎれなどがあり、かるいかゆみや冷えが気になるときに使用するのがおすすめ。ビタミンEは毛細血管の血液循環をよくするため指先の冷えや血行を促進し、ビタミンAは肌のターンオーバーを促進するなどの効果があります。
教えてくれたのは
「うるおい皮ふ科クリニック」院長 豊田雅彦先生
1964年、長野県生まれ。
1990年、富山医科薬科大学(現・富山大学)医学部卒業。同大学皮膚科学講座に入局・研修医。
1996年、米国ワシントンDCで開かれた国際会議である研究皮膚科学会議年次総会で「色素細胞と神経の接着」にて最優秀研究賞を共同受賞。
2002年、パリで開かれた国際皮膚科学会で「アトピー性皮膚炎のシクロスポリンによるかゆみの抑止効果機序」の発表にて臨床部門最優秀賞を単独受賞。
2004年、米国マイアミで開かれた国際皮膚科学会で「抗アレルギー剤がかゆみを抑える新たなメカニズム」の発表にて研究部門最優秀賞を単独受賞。
2005年、うるおい皮ふ科クリニックを開業。
かゆみをなくすことをライフワークに掲げ、患者さんが希望を持てる診療に日々尽力。現在までに2,000以上の医学論文・医学専門書を執筆。また、国内外で年間最多250以上の講演会・学会発表・保健所指導を行う。受診患者の99%(年間約3万人)の症状を軽減〜消失に導いた、世界有数の皮膚病・かゆみのスペシャリスト。

