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 SNSの普及によって、これまで疎遠だった学生時代の友人や、昔の知人も、名前を頼りに探すことができるようになりました。新たに連絡を取ることで、また再び交流が復活することもあるようです。今回は、しばらく離れていた友人との再会で起きてしまったトラブルを紹介します。

子どもがいない友人からの
“自分は忙しい”アピール

 3歳の娘を育児中の美樹さん(仮名・37歳)は、周りに気軽に話せる相手がいないのが悩みでした。そんなとき、昔の職場で同僚だった康子さん(37歳)からSNSで連絡が来ました。

「康子さんは20代で結婚していました。しばらく旦那さんの赴任先である東北で暮らしていたのですが、数年前に関東に戻ってきました。それからまた会うようになったんです」

 しかし、二人を取り巻く環境はかつてとは違っていました。

「康子さんには子どもがいませんでした。彼女はたまに義実家の手伝いをしていましたが、時間に余裕があるので、ちょくちょくランチに誘ってくるんです。そのたびに、私は幼稚園の延長保育を頼まなければならず大変でした」

 康子さんは美樹さんに「専業主婦は暇でいいね」と言ってきたそう。康子さんの言動に、イラっとさせられることが多かったようです。

「急に『体調が悪い』と言ってドタキャンをしたり、日程を相談しているときも『忙しいからこの日はNG』とわざわざダメな日ばかり送ってくるんです。さらに『美樹は空気を読まないから、ママ友から浮いてると思うよ』と言われ傷つきました」

 長い付き合いだったので我慢していたという美樹さんが、どうしても許せなかったことがあります。

「深夜にメールを送ってきて、『私は毎日忙しくて自分の時間ができるのはこれくらい』と書いてあったんです。私だって忙しい中、いつも会いに行っていたのに……」

 美樹さんは、康子さんの上から目線の態度に付きあいきれず、距離を置こうと決意したそうです。

 このように女友達からのマウンティング被害はよく耳にしますが、実際にマウンティングしているほうはどのような心理状態なのでしょうか? 次のケースで見て行きたいと思います。

SNSで学生時代の友人と再会
生活格差にあぜん!

 専業主婦の香織さん(仮名・38歳)は、高校時代の友人とSNSを通じて一昨年に再会しました。

「最初のころは、ほかの友人たちも含めた4、5人のメンバーで集まっていました。私が通っていたのは、地元でも珍しかった中高一貫の女子校。その中でも学生時代に同じバレーボール部で、仲がよかった容子さん(仮名・38歳)とは、子どもの年齢も近く、二人で会うようになりました」

 香織さんの夫は、映画やエンタメ情報を扱う媒体の記者をしています。しかし、年収が手取りで300万円台といいます。香織さんも、もともとは出版社に勤務していました。

「経験を積んでエンタメ系の出版社に転職できればと思っていましたが、激務のため30歳を前に体を壊して退職しました」

 香織さんは、容子さんのfacebookを見るとモヤモヤするそうです。

「容子さんの子どもが着ている服も小ぎれいだし、週末は家族で出かけていて羨ましくなるんです。うちは、夫の収入も少なくて、普段の生活はカツカツ。夫の髪はバリカンで自分で整えて貰っていますし、私も自分で髪を切っています」

「学生時代は私のほうが上だったのに……」
ついマウンティングしてしまう

 そんな香織さんは、2歳になる娘を育児しながら、来年春に出産予定の赤ちゃんを妊娠中。一方で容子さんは20代半ばで結婚し、すぐに第一子を出産していました。

「私は34歳で結婚しました。2歳年上の夫と一緒に婦人科に通院して、急いで妊活しました。私は妊娠も年齢的に焦りがあったんです。だから結婚も妊娠もスムーズにできた容子さんが、羨ましいって感じました」

 優秀だった香織さんにとって、容子さんはパッとしない生徒だったと言います。

「私は国語の模試で3位を獲ったことがあるし、成績もよかったんです。部活のときも、私は副部長で、容子さんはただの部員。それなのに今では容子さんは、外資系メーカーでチームリーダー。彼女は人をまとめるのに向いていない性格だったのに……と思います」

 慎ましい生活をしている香織さん。第2子を出産し、育児が落ち着いたらパートで働きに出る予定です。

「求人を探しても、子どもが小さいし、妊娠中なので見つからないんですよね。

 容子さんに会うとつい、『大学時代はモテたんだ。付属校出身の男性と付きあったけれど、価値観が合わなくて別れちゃってさ』とか、『ほかにも結婚を考えた男性がいて、その人の実家はビルを持つ資産家だったの。でも夫のほうが将来有望だからそっちを選んだ』と、過去に対して大げさに“盛って”言ってしまうんです」

 香織さんは、最初は容子さんと会って懐かしい話をするのが楽しかったと言います。でも何度か会ううちに、彼女と自分を比べてしまうようになったそうです。

「仕事も結婚も上手くいっている容子さんを見ると、自分が惨めに感じてくるんです。仕事を辞めなければよかったなとか、元カレと別れなければよかったなとか後悔してしまうんです」

経済的な不安から
口に出してしまった“暴言”

 香織さんは、子どもの将来を思うと夜眠れなくなると言います。

「私はひとりっ子だったので、どうしても2人目が欲しかったんです。すぐに妊娠できたのはよかったのですが、そのため貯金もできず、これからどうしようと泣いてしまうこともあります」

 香織さんが経済的な不安を感じるのには、原因がありました。

「容子さんの子どもはもう12歳で、この春、中学受験で大学付属校に合格しました。合格した学校を調べてみたら、学費が年間100万円以上かかるみたいなんです。大学受験の心配もないし安泰だと思うと、悔しいんです」

 将来の不安から、容子さんを見ているとつい、おせっかいを言ってしまうそうです。

「自分がひとりっ子で寂しかったので、容子さんには『子どもがひとりっ子なのは可哀想』と伝えました。また『中学受験させるなんて、子どもがラクなほうに行くからよくないよ』とアドバイスをしました」

 容子さんからは「人を否定するようなことを言ってばかりいると、好かれないよ」と言われてしまったそうです。香織さんは後悔することもありますが、彼女を見ていると、つい相手が嫌がるようなことを言いたくなってしまうのです。

 あるとき容子さんにメッセージを送ると、既読も付かないようになっていました。気づいたら、これまで読めていた容子さんの投稿も見られなくなっていました。そこで初めてSNSがブロックされていると気づいたそうです。

「容子さんの楽しそうな笑顔のプロフィール画像を見ると、自分が悪いとはいえ、さらに悲しい気分になるんです……」

 学生時代はお互いを理解しあえていても、就職や結婚、出産など環境や立場が変わってしまうと、認め合うのは難しいかもしれません。特に、SNSでは相手の生活スタイルが見えてしまうので、他人が気になるタイプの人はチェックしすぎてしまう傾向もあります。大切な友達を失わないためにも、つい相手の動向が気になるようになってしまったら、一度、SNS断捨離をして距離を置いたほうがいいかもしれません。

池守りぜね◎東京都生まれ。フリーライター。大学卒業後、インプレスに入社。ネットメディアで記者を務めた。その後、出版社勤務を経て独立。育児、グルメ、エンタメに関する記事のほか、インタビューも多数執筆。『一瞬と永遠』、『絶叫2』など、映像脚本も手掛ける。プライベートでは女児のママ。Twitter:@rizeneration