とんねるず・石橋貴明

写真拡大

 石橋貴明(59)が復活したらしい。らしい、というのは、昔からこの人も、とんねるずも嫌いで、なるべく見ないようにしてきたからだ。

【写真】公園で子どもとはしゃぐ石橋貴明と鈴木保奈美

石橋貴明の笑いと時代のズレ

 もっとも『うたばん』(TBS系)や『みなさんのおかげでした』(フジテレビ系)の『食わず嫌い王決定戦』もゲストによってはチェックしてきた。また、4年前、コントキャラの代表作『保毛尾田保毛男』がLGBT差別だとして批判されたときは、過去の笑いを今の基準で叩く風潮に違和感を覚え、擁護したくなったものだ。

 ただ、そのときも彼の笑いはもう時代遅れだと言われていた。実際、レギュラー番組の消滅はそれを象徴する出来事だろう。

 それゆえ、ユーチューバーとして人気といわれてもピンとこないわけだが、風向きが変わったことはわかるし、再評価の声も見かけた。

 とはいえ、そこには同情も混じっている。消えたことをさびしく感じた昔ながらのファンに加え、本人がちょっとしおらしい態度を示したことで、情にほだされた人がいたのだ。

 1月31日放送の『情熱大陸』(TBS系)では、レギュラー番組消滅を“戦力外通告”にたとえ、2月18日放送の『櫻井有吉THE夜会』(TBS系)でも、

「“ホントにこれで終わっちゃうのかな”っていうところまで来てた。ユニホーム脱がされてしまうんだなって」

 と、発言。帝京高校野球部出身で西武ライオンズの入団テストを受けたこともある男ならではの表現で、落ち目扱いのつらさを吐露した。

 世の中にはこうした「生意気そうな人が時折、見せる可愛げ」というものに弱い人たちがいる。また、それでなくとも「やんちゃ好き」の若者や業界人は多いし、晩年の美空ひばりに好かれたのもそういうことだ。

YouTubeで復活するも家庭では……

 実はアンチである筆者ですら、石橋を可愛く感じたことがある。『うたばん』でゲストに女性アイドルを迎えたときのこと。いつにもまして下ネタを連発したあと、ふとわれに返り、こうつぶやいたのだ。

「こんなのばっかりで、すみません」

 このギャップが意外に面白く、あれほど石橋で笑ったことは、あとにも先にもない。

 ちなみに、彼の動画も古くさい過激さが売り。ユーチューブについては当初「ちんぷんかんぷん」だったが「テレビだと思って」とディレクターに言われ「テレビの手法ならできるな」と始めたという。つまり「こんなのばっかりで、すみません」という開き直りが奏功したわけだ。

 ただし、調子に乗りやすい人でもある。

 プライベートでは、1989年に結婚。翌年、娘(女優の石橋穂乃香)が生まれるとさっそくネタにした。とんねるずのアルバムに「ほのちゃんにはがはえた。」というタイトルをつけ、彼女の口元のアップをジャケットに使用。『7月31日に生まれて』というソロ曲まで収録するという親バカぶりを見せた。

 しかし、9年後に離婚。その2週間後に、鈴木保奈美とのできちゃった再婚を発表して「不倫」「略奪」などと騒がれた。再婚では3人の娘に恵まれたが、保奈美は最近、マンションを購入したり、個人事務所を設立するなど、離婚準備に入っているとされる。

 年末恒例の番組『プロ野球戦力外通告』(TBS系)では、失意の夫を支える妻の美談がつきもの。ただ、石橋は家庭でも戦力外寸前のようだ。せめて仕事ではクビにならないよう、このしおらしい芸風をしばらく続けたほうがよさそうである。

PROFILE●宝泉 薫(ほうせん・かおる)●作家・芸能評論家。テレビ、映画、ダイエットなどをテーマに執筆。近著に『平成の死』(ベストセラーズ)、『平成「一発屋」見聞録』(言視舎)、『あのアイドルがなぜヌードに』(文藝春秋)などがある。