By James Lindsey

幻覚作用を持つマジックマッシュルームを静脈注射した男性の血中でマジックマッシュルームが成長し、臓器不全で救急搬送される事件が発生しました。

A “trip” to the ICU: intravenous injection of psilocybin - ScienceDirect

https://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S266729602030015X

Magic mushrooms grew in man’s blood after he injected them as a tea - National | Globalnews.ca

https://globalnews.ca/news/7573815/magic-mushrooms-blood-injection/

'Magic mushrooms' grow in man's blood after injection with shroom tea | Live Science

https://www.livescience.com/magic-mushroom-injection-case-report.html

マジックマッシュルームは、激しい幻覚作用を引き起こすアルカロイド系化学物質のシロシビンやシロシンなどを含むキノコの総称で、日本に自生するマジックマッシュルームとしては、ワライタケやオオワライタケ、ヒカゲシビレタケなどが挙げられます。

こうしたマジックマッシュルームは、食べ物や飲み物として経口摂取するのが通例です。しかし、30歳のアメリカ人男性は、「LSDやマジックマッシュルームなどの幻覚剤にはうつ病に対する治療効果がある可能性がある」というオンライン記事を読んだ後、自分の双極性障害(躁うつ病)とオピオイド依存症の独自治療を試みて、マジックマッシュルーム抽出液の「静脈注射」を試みました。



この男性は、マジックマッシュルームの一種であるミナミシビレタケを煮詰めて「マジックマッシュルーム茶」を作成し、綿棒でろ過してから静脈に注入。そして数日後に黄疸(おうだん)・下痢・倦怠(けんたい)感・吐き気などを示し、吐血しました。

男性は家族によって病院の救急外来に運ばれましたが、極度の混乱状態に陥っており、問診に対して正常な回答ができない状況でした。診察の結果、肝臓や腎臓などの複数の臓器に機能不全の兆候が見られたため、集中治療室に搬入。さらに血液検査を行ったところ、枯草菌の類縁であるブレビバチルス菌の細菌感染とミナミシビレタケの真菌感染が確認されただけでなく、血中でミナミシビレタケが増殖していることが判明しました。



By CostaPPPR

男性には抗生物質と抗真菌薬が投与されましたが、肺胞に体液が溜まることで急性呼吸不全を発症し、人工呼吸器のサポートが必要になりました。男性は最終的に集中治療室に8日、一般病棟に14日の計22日間入院を経て無事退院。その後は抗生物質と抗真菌薬の投与を継続するという経過観察に切り替えられています。

近年はマジックマッシュルームのうつ病改善効果に注目が集まっており、2020年11月にはアメリカのオレゴン州がマジックマッシュルームの幻覚成分であるシロシビンを合法化するといった動きも見られています。しかし、マジックマッシュルームの医学的研究は錠剤として経口摂取するケースがほとんどで、静脈注射が選ばれた場合にも有効成分であるシロシビンのみが投与されるため、「マジックマッシュルームの抽出液を静脈注射する」ことはないとのこと。

マジックマッシュルームのうつ病改善効果に関する直近の研究については、以下の記事で解説しています。

マジックマッシュルームの幻覚成分が「1〜2回飲むだけでうつ病を大きく改善させる」と臨床試験で示される - GIGAZINE