働き方改革が進み、副業に消極的だった日本の企業でも続々解禁中。でも、始めてみたいけど本業と両立させるのは大変そう……。副業といっても何をすればいいの!? そんなあなたに、“もう1つの仕事”を楽しんでいる人からの熱いメッセージをお届けします。

■スキルやコネクションが、本業に還元できる

ここ数年、副業を許可する企業が増えてきている。許可といっても社内規定にあるだけで実質的に推奨しないことが多かったが、最近は副業を積極的に支援する企業も出てきた。ココナラ社長の南章行さんは「深刻な人手不足に悩む企業が、少しでも働き手を確保したいからです。優秀な人材の市場価値はとても高いので、副業を応援することで、人材が他の会社に流れないようにしたいという狙いがあります」と企業側の副業推進の理由を語る。

また、ビザスク社長の端羽英子さんは「人生100年時代で働く期間が長くなる一方、残業時間の短縮により、スキルアップの機会を求めて多様な働き方への興味や関心がどんどん高まっています」と働き手の意識の変化も挙げた。

副業の大きなメリットとしては「得られたスキルや人的ネットワークが本業に還元できて、それがプラスに働く可能性が高い。本業のやる気が高まったと考える人が多いようです」とストリートアカデミー執行役員の窓岡順子さんは分析(グラフ参照)。その逆もしかり。本業で得たビジネススキルや知見を生かした副業なら、効率よく収入を上げられる。

「たとえば金融関係なら資産運用講座やエクセル講座を開いたり、秘書なら美味しいコーヒーの入れ方や差し入れのお菓子の選び方、マネジャー経験がある人はコーチングやファシリテーションを教えるなど。さらには転職をしなくても、自分の市場価値を知ることができます」と窓岡さんはアドバイスする。

または趣味を副業にするのもいい。「趣味を仕事にできたら人生が豊かで楽しくなりますよね。でも、ある程度の金額を稼ごうと思ったら、ハイレベルなスキルが必要なので、相当の努力が必要です」と端羽さん。「二足のわらじで確実に忙しくなるので、長く続けるには楽しくないと疲弊するだけ。本業に差し障りがあっては本末転倒です。だから“楽しさとスキルアップ”の両面でバランスが取れた副業を選ぶこと」が大切だと南さんは指摘する。

■“仕事を分解する力”が副業には必要

3人とも口をそろえるのは「本業で優秀な人は、副業でもよい結果を出しやすい」ということ。時間を有効に使うタイムマネジメント力、マルチタスクをこなす能力、さらには“仕事を分解する”力もあるからだ。仕事を分解するとは「この仕事はどれくらいの時間をかけて行うのかをまずは見極めます。そのゴールを見据えたうえで第1段階、第2段階、第3段階と仕事のステップを刻み、計画的に細かくアウトプットができること」だと南さん。

折しもコロナ禍の影響でリモートワークが各企業で進められているが、こういう働き方が苦手な人は仕事の分解能力が低い。リモートだと、ついだらだらして仕事がはかどらず無駄に過ごしてしまう、1日、1週間、1カ月単位での計画が立てられない人は、副業をするのには向かないというドキリとする意見も。

「成果さえ上げられればいいのかもしれませんが、“気合一発で徹夜で仕上げる”という無計画型や、感性だけで仕事をする人も副業には向かない。コミュニケーション力があり、レスポンスが早くていつでも連絡が取れるなど、人として信頼が置ける人材が売れっ子になれるようです」という南さんの見解には納得だ。

また、副業での働き方を考える際には、自分がライフステージのどこにいるかを把握するのも重要だと端羽さんは言う。「小さなお子さんがいるママであれば、隙間時間でのスキルシェアサービスがオススメ。時間に余裕があるのならば、一番得意なことでガンガン稼ぐのもよし。将来のために本業から離れたスキルを磨きたいのであれば、単価が安くても勉強だと思って頑張ってみるのもよし。副業こそ柔軟に働けるので、中長期でのキャリア構築プランを持つことが大切です」

副業を始める前には、キャリアの棚卸しのほか、何のために副業をするのか、そしてこの先どう生きていきたいのかといった自分への問いかけも必要だ。「30代までは副業の理由はお金のためと答える人が多い。それも大切な動機です。でも40代以降になると社会貢献や誰かの役に立ちたいと答える人が多くなってきます」と窓岡さんは目的を明確にする重要性を語る。また「副業で得たお金もスキルも、未来の選択肢を増やし自由度を高めます。選択肢が多い未来はとてもすてき。自分の人生を主体的に生きるという実感を持ってほしいですね」と端羽さん。新しい働き方を求める人には、勇気づけられる言葉だろう。

▼月10万円以上を稼ぎ出す、副業成功者たちの“勝ち”ポイントはどこにある?

■“洗い物なし”だから、生徒は料理に集中。負けず嫌いスピリットが功を奏した人気料理教室

料理教室主宰 菅野しのぶさん
本業:電気計測機器会社 サプライチェーンマネジャー
週末料理教室
月平均売り上げ:30万円(材料費込み)

「和食キッチンしのぶ」を主宰する菅野しのぶさん。平日は電気計測機器会社のサプライチェーンマネジャーとして仕事をこなし、土日の午前と午後に料理教室を開催する。料理は独学で学び、もともと仕事を辞めて起業するつもりで大手料理教室に参加して集客方法などの研究を重ねた。しかし「本業でもプロジェクトを任されているので、それもちゃんとやり遂げたかった。だからしばらくは週末副業で続けるつもりです」とのこと。

左:簡単で即再現可能なメニューを中心に教える。オリジナルメニューは500種類以上もある。右上:卓上コンロも使って全員で料理ができるようにしている。右下:洗い物や食材の購入、利益率を上げる工夫も夫が担う。

1週間フル稼働はとてもハードだが、元タップダンサーで体力に自信があり、時間の使い方が上手。「簡単時短料理が看板なので、時間がタイトなほうがアイデアが生まれやすい。また、仕事のパートナーでもある夫が材料の買い出しや経理面などを担当しています。だからフルで仕事ができるのでしょうね」

初期投資のワゴンセット●IKEAで購入したワゴンセットは自分で組み立てて初期投資を低く抑えた。教室開始半年後に、すでに投資額は回収済み。

レッスンは少人数制。アットホームな雰囲気と丁寧なレッスンが人気の理由だ。時間の制限がある教室では、講師が下準備をしたり生徒が作業を分担したりすることも。そうすると料理の手順を覚えられない、皿や道具の洗い物に時間を取られて料理に集中できない、ということが起こる。ここでは、夫が洗い物全般を引き受け、料理のすべての作業を生徒一人一人が実践できるので、帰宅してからも復習しやすいと好評だ。

生徒から希望の料理をヒアリングして、いいアイデアがあれば即試してレシピにするなど、とことん追求するタイプ。「やるなら一番! 登録しているストアカでトップになるにはどうしたらいいか、しつこく考えます(笑)」と向上心の塊のような菅野さん。当面の目標は、売り上げ月50万円を達成することだ。

▼副業の成功ポイント
/裕の鼠教室や講師を徹底研究。
夫が洗い物を担当。生徒が料理に集中でき、習った料理の再現が可能。
レッスン終盤で披露される「アドリブ料理」など、他の教室ではやらない内容が魅力。

■フラの本場ハワイでの修業を経て、本格的なレッスンを展開

フラ教室主宰 マカ・ナニ・ヴェニューセさん
本業:不動産管理会社 経理担当
平日、土日の空き時間利用
フラ教室、ワークショップ、イベント主宰
月平均売り上げ:6桁

体を動かすのが大好きであらゆるスポーツを楽しんでいたマカさん。なかでもフラは20年以上踊り続け、ハワイでクム(フラの師範)から教えを受けた本格派だ。本業は不動産管理会社の経理担当。フレックスタイムを活用して、子どもから大人まで30人ほどの生徒に教えている。レッスン以外にもフラのワークショップや振り付け、講演など精力的に活動を行っている。マカさんの教室の人気の秘密はどこにあるのか。

左:レッスンで使用するのは、大きな鏡付きのスタジオ。家賃などの固定費をなるべく抑えるように努力している。右上:クムの下で修業した証し。右下:フラの楽器類。

「ただ踊るだけでなく、ハワイのアロハスピリットに通じるもの、つまり人を尊敬し大切にする心も教えています」。フラの基本は明るい笑顔。全身を使って音楽や歌に合わせて踊ることで、心身ともに健康でいられるのがフラの醍醐味(だいごみ)。人前に出ることが多く、髪やボディーのケアを入念に行うので美意識も高い。

小さな子どもを育てながら、安定した本業を軸として、心の底からフラの活動を楽しんでいるマカさん。本業と副業の両立としては、“理想の形”といえそう。

▼副業の成功ポイント
.譽奪好鵑砲覆襪戮お金がかからないように創意工夫。
⇒戮蠅世韻任覆、ハワイ固有の文化、精神も伝える。

■メンターの依頼もアリ。的確な面接指導で転職希望者を応援する

オンライン面接指導 Uさん
本業:外資系流通会社 人事担当マネジャー
平日、土日の空き時間利用
月の最高売り上げ:15万5000円

長年人事を担当しているUさんは、日頃から残念に思っていることがあった。緊張したり口下手だったりして、能力や資質があるのに、応募者が面接で不合格になってしまうこと。

オンライン上での面接指導のほか、履歴書の添削、キャリアカウンセリングなども行う。

「私は採用側だから、その人に改善点をフィードバックできない。そこで新卒・中途を問わず、就職の面接希望者に指導を始めました」。仕事が終わった後や土日を使って、オンラインで丁寧な面接指導を行う。希望の企業を調べ、社風に合わせたアドバイスもするなどのきめ細かさが人気。「内定をもらえました」「メンターになってください」など、依頼者から直接反応がもらえるのは副業だからこそ。「面接を受ける側の生の声も勉強。本業でのスキルアップにも役立たせたいと思っています」

▼副業の成功ポイント
〇愼慨望のリピーターが増えている。
∈切丁寧なアドバイスが人気に。

■2019〜2020年に副業を解禁した企業での実態を調査!

【京都北都信用金庫】地域貢献のために、職員が観光産業を支援

全国の信用金庫の中で初めて副業を解禁。同庫の顧客である飲食店から「観光客が押し寄せて人手が足りないので手伝ってほしい」と理事長が相談を受けたのがきっかけ。入庫3年以上の職員全員が対象、土日祝日の朝8時から夜6時までの就業、週1日の休日確保が条件。2020年3月現在で男性9人、女性5人が飲食店や整骨院で働き、観光協会の催事に携わる。職種の制約はないが、地元貢献を目的に行う人が多い。

【アサヒビール】勤続5年以上の全社員に許可

2018年4月1日より満60歳の定年退職後に再雇用されたシニアスタッフを対象に副業を認めていたが、20年1月より雇用形態にかかわらず、勤続5年以上の全社員に副業を許可。副業を通じて高めた知識やスキル、多様な価値観に触れた経験などを社内の業務に生かし活躍の場を広げることを可能にすることで、社員の成長やキャリア形成を支援する。競合他社など競業により利益を害する副業は禁止されている。

【サイバーエージェント】グループ間の副業を、会社がマッチング

副業は2015年から申請制で解禁。さらに19年10月からグループ間での副業をマッチングする制度「Cycle」を展開。副業をしたい社員と案件をマッチさせるためのポータルサイトも始動。エンジニアやクリエーターなどが対象で、通常業務以外にグループ他社の仕事の請負を可能にした。1件あたりの報酬は数十万円で上限はなし。成立案件は9件(20年5月現在)で、グループ会社の人材不足の解消につながっている。

【SMBC日興証券】フリーランスとして、他社の仕事もOK

自社だけでは得られない知識やスキルの習得などでイノベーションを創出する意図で2020年4月1日から申し込み受け付け開始。社歴4年以上の全社員が対象で、職種の制約はなく、月30時間以内の就業が条件だ。同社の顧客情報や社員情報、リソースを利用した副業、通常業務に支障をきたす恐れのある副業、信用や評判を落としかねない副業は禁止。5月現在、十数人が応募中であり、申請内容を確認中だ。

【カゴメ】社外での学びや経験を、カゴメでの業務に生かす

副業を導入した主な目的は、社外での学びや経験を業務に生かすこと。「働き方の改革は生き方改革」を掲げ、労働時間を削減できた社員が個人の可処分時間を有効活用できるようにした。入社2年目以上(新卒は4年目以上)の全社員が対象で、社内での時間外労働時間と合計して45時間以内。2019年5月現在の実践者は15人ほどで、男女比率は5:5。副業を開始後、労働時間の報告(主に健康確保が目的)が必要。

▼実践者に聞きました

■子育てや本業優先での自己実現を。将来的に法人化も!

カゴメ北海道支店の第一営業課に勤務する長谷川千尋さんは、1000人以上の食生活の改善指導をもとに習慣化メソッドを独自に考案し、“美習慣コーチ”として事業を開始。ホリスティックな観点から、食生活、美容、運動指導、キャリアコンサルティングなど顧客のさまざまな悩みに応える。

「お客さまの理想の在り方を引き出すことで、本業でも、利益優先ではなく、お客さまの課題の先にあるものを引き出すような関わり方に徹しています。その結果、関係構築のスピードが格段に速くなり、本業でも大きな成果を得られるようになったのです」と長谷川さん。企業や百貨店の依頼を受けたセミナー、サロンでのフェーシャルマッサージやコーチングを行う。労働時間の制限があるので積極的な宣伝はしていないが、障がい者の弟を雇用したいので、いつか法人化する夢がある。

左:フェーシャルマッサージの施術。右:ホノルルマラソンを組み込んだ「美習慣ツアー」も手がける。

■スキルアップと社会貢献のための「プロボノ」活動

「プロボノ」とは、職業上の専門知識やスキルを無償提供する社会的な活動のこと。ボランティアの一種だが、たとえば街の清掃や募金などとは違い、「ビジネススキルや専門知識」を駆使した活動を指す。プロボノ希望者を募り、NPOなどへのマッチングを通した支援を提供するサービスグラント代表理事の嵯峨生馬さんによると「これまでに3800人以上が、800以上のNPOや地域団体に支援をしてきました。基本的には異なる専門性を持った登録者がチームを組んで、期間を決めて支援先をサポートします。現在団体で多く求められているのは、各プロジェクトをまとめるマネジャー。本業で活躍している方がスキルを生かしています」。

交通費などの必要経費の補助があるが、金銭的な報酬はなし。それでも得るものが大きいのだろうか。

「普段の生活では出会えない多様な背景の人々と仕事ができ、支援先と濃密な信頼関係が築けるので満足度が高い。無償だからといって仕事のクオリティーを下げるわけにいかないので、本業のスキルアップにも役立つという声が多いのです」

プロジェクト終了後、支援先から有償で仕事を引き受けるケースもある。副業を始める前の“力試し”で参加することもできそうだ。

■プロボノで得たスキルが、本業のマネジャー業務にいい影響を与えた

オリックス自動車 工藤麻衣子さん
本業:企画推進、マネジャー
プロボノ:地方創生、障がい者スポーツ団体に関するプロジェクトマネジャーとアカウントディレクター

2年ほど前にSNSの広告でサービスグラントの「春のプロジェクト参加募集」記事を見つけて登録。東京都が主催する事業の一環として、東京都障害者水泳連盟のサポートを行ったのが初めての活動。プロジェクトマネジャーとして、指導者向けの講習会のチラシをマーケッターやデザイナーと協働しながら作成。仕事で広報を経験しているスキルが役に立った。

また、WWFジャパンの活動を支援するプロジェクトでは、アカウントディレクターとして立ち上げにも携わるなど4つの活動に参加。「プロボノには上下関係がないので、メンバーに指示することはしません。だからいかに自発的に動いてもらい、プロジェクトを進めていくのかが難しい。円滑なコミュニケーションをプロボノ活動で学べます。定年後などに、この越境経験は大いに役立つと思います」

左:地域の空き家活用促進プロジェクトのパンフレットも作成。右:メンバーとの一枚。

■グローバルヘルスでのキャリアを目指し、30代から始めた英語翻訳で社会貢献

グラクソ・スミスクライン 奥田伊奈葉さん
本業:医薬品の開発
プロボノ:NPOでの英語の翻訳業務

医薬品の開発チームで培った英語力を生かし、毎週月曜日の午後の4時間、プラン・インターナショナル・ジャパン(発展途上国への支援団体)で、支援者と被支援者をつなぐ手紙の翻訳業務を行う奥田さん。「現地の環境を変える直接的な業務ではないですが、手紙を読んでスポンサーが支援を続けてくれればプロジェクトの継続につながります。それが長く続けば、現地の子どもたちの健康に貢献できる可能性が高まる。それがやりがいになっています」と話す。

小さなことを積み上げ、いつか大きなことを成し遂げるのが最終目標。最初は英語力向上や被支援国の詳細を知りたいという思いで始めたが、将来的に途上国を支援する医薬品開発やグローバルヘルスに携わりたいとの希望がある。その実現を見据えたキャリアビジョンにもなっている。

プラン・インターナショナル・ジャパンのスタッフからもらう感謝の手紙も励みになる。

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南 章行(みなみ・あきゆき)
ココナラ社長
1975年生まれ。慶應義塾大学卒業後、アメリカ留学を経て住友銀行(現三井住友銀行)に入行。2004年に企業買収ヘッジファンドに転職し、09年に英国オックスフォード大学院でMBAを取得。帰国後の12年にウェルセルフ(現ココナラ)を設立し、現職。
 

端羽英子(はしば・えいこ)
ビザスク社長
東京大学卒業後、ゴールドマン・サックス証券で企業ファイナンス、日本ロレアルで化粧品ブランドの予算立案や管理の経験を経て、米国マサチューセッツ工科大学でMBAを取得。投資ファンドで企業投資を行った後、2012年にビザスクの前身の会社を設立、現職。
 

窓岡順子(まどおか・じゅんこ)
ストリートアカデミー執行役員
1980年生まれ。広島大学卒業後、リクルート(現リクルートライフスタイル、リクルートキャリア)で営業企画、新卒事業の営業、リーダーを経て新規営業チャネルを立ち上げる。2015年にストリートアカデミー(ストアカ)に参画。執行役員として営業全般を担当。
 

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(東野 りか 撮影=堀 隆弘)