19年最後の国際試合は、その後のメニューに期待を抱かせる前菜でなければ、締めくくりにふさわしいメインコースでもなかった。

 12月28日に行われたU−22日本代表対U−22ジャマイカ代表戦は、9対0の大勝で終わった。

 北中米カリブ海地区からの来訪者は、MLS2部相当のUSLのクラブに所属している選手を中心に構成されていた。USLは11月でシーズンが終了した一方で、ジャマイカの国内リーグは現在も行われている。チームは26日に来日して2日後に日本戦を迎えたが、試合から遠ざかっていた選手がいれば、厳しいスケジュールで臨んだ選手もいた。

 ジャマイカのレベルは、キックオフからほんのわずかの時間で読み取れた。プレーの強度は低く、球際での粘りもない。選手のコンディションにバラつきがあるうえに、彼らにすればモチベーションを見つけるのが難しい試合である。無抵抗なまま失点を重ねる相手には失望させられたが、そもそもマッチメイクに無理があったとも言える。

 スケジュールから判断すれば、この試合はAFCU−23選手権のシミュレーションだったはずである。1月9日に第1戦を迎える同大会へ向けて、実戦経験を積んでおく機会と考えるのがノーマルだ。

 もうひとつの考えかたは、来夏の東京五輪へ向けた強化に継続性を持たせていくことだ。9月にメキシコとアメリカ、10月にブラジル、11月にコロンビアと対戦してきた流れを汲んだもの、という理解もできる。

 ジャマイカ戦の招集メンバーのなかで、10月のブラジル戦にも召集されたのは6人にとどまる。11月のコロンビア戦とジャマイカ戦に、連続して招集された選手も8人だ。

 呼びたい選手はたくさんいるが、呼べるタイミングを見つけるのが難しい選手もいる。むしろ、そちらのほうが多い。そうした状況のなかで強化に一貫性を保ち、かつ選手個々のレベルアップを促すことの難しさが、招集メンバーから透けて見える。

 ジャマイカ戦の翌29日に、U−23選手権に臨むメンバーが発表された。ジャマイカ戦から引き続き選ばれたのは、わずか5人にとどまった。

 個人的には、ジャマイカ戦とU−23選手権のメンバーに、しっかりとしたつながりがあるべきだったと考える。安部裕葵や前田大然らをジャマイカ戦に招集し、チームのコンセプトを思い出してもらう作業はあってもいいが、U−23選手権で勝ち上がることにも意味がある。

 30度以上の気温が予想されるタイで、中3日ペースで試合を消化していくのは、東京五輪に似た経験だ。ここで勝ち上がることで、チームとしてはもちろん選手個人もタフになっていく。タイでの経験をグループリーグの3試合で終わらせることなく、決勝戦までの最大6試合を戦うためにも、ジャマイカ戦から準備をスタートさせるのがベターだったと考える。

 20年からU−23日本代表となるチームの照準は、あくまでも東京五輪にある。U−23選手権も強化のプロセスのひとつだが、ここでしっかりと勝ち上がることは、とくに国内組の選手たちにとって価値ある経験となる。

 23歳以下の選手が五輪前にこれだけ多く海外でプレーするのは、過去になかったことである。森保監督でなくとも強化は難しく、そのうえ彼は日本代表監督との兼任である。

 先ごろ発表された2020年の各代表のスケジュールでは、3月に日本代表と五輪代表の活動が重なることが明らかになった。カタールW杯アジア2次予選と並行して、U-22からU−23となるチームがテストマッチを行うのだ。

 森保監督は「これまでどおり、日本代表の活動を優先する」と説明した。関塚隆技術委員長も「できる限りのサポート」を約束しているが、このタイミングはFIFAのマッチデイであり、19年11月のコロンビア戦のような試み──堂安律や久保建英を日本代表ではなくU−23代表に招集する──ことも不可能ではない。それでもなお、森保監督は日本代表を優先するのだろうか。もちろんそれが当然なのだが、U−23の強化が煮詰まっていかないことが危惧される。

 6月にも同じことが起こりうる。U−23は6月1日から15日にかけて、フランス遠征を予定している。おそらくはトゥーロン国際トーナメントに参加するのだろう。一方、日本代表は6月4日と9日にW杯2次予選を戦う。

 W杯2次予選の突破がすでに決まっていれば、森保監督がフランスに向かっても支障はない。ただ、五輪後の9月にはW杯最終予選が開幕する。6月の2試合は、最終予選前最後の活動である。監督不在で戦っていいのか。日本代表の強化もまた、停滞をさせてはいけないのだ。

 話をU−23へ戻す。
 
 大きな枠組みとしてより多くの選手を招集し、チーム戦術を理解してもらうのは、もちろん間違ってはいない。より多くの選手が「自分が戦う」という当事者意識を持つことで、世代全体の競争意識が高まっていく。

 しかし、「金メダルを獲る」という目標からの逆算において、現時点でその裏付けとなる材料は見つけにくい。U−23の強化も、日本代表との兼任も、中途半端になってしまっている印象が拭えないのである。1月のU−23選手権の結果次第では、森保監督以下スタッフの再編成を考えてもいい。