そもそも「カレー」って何だ? 読んで納得、カレーの豆知識
■1.インドに「カレー」という名の料理はない
カレー発祥の地インドでは、日本のような市販のカレー粉もルウも存在しません。インドでは料理メニューに合わせて、その都度、スパイスを調合します。素材や食べる人の好み、体調を考えてスパイスを自在に組み合わせ、日替わりの料理をつくる。それらの料理をインドの人たちは「○○カレー」とは呼びません。そもそもインドには「カレー」という言葉はなかったのです。
私たち日本人が本場のインド料理を食べるとどれも「カレー」のように感じますが、それは西洋の人たちが味噌を使った日本料理を食べると何でも「ミソスープ」と感じるようなもの。香辛料をふんだんに使ったインド料理には、スパイスの組み合わせの違いや素材、調理法の違いでそれぞれ固有の名前がついています。カレーに相当するメニューは、「スープ状のスパイス料理」になるでしょうか。
この料理が1772年頃イギリスに伝わり、「C&Bカレーパウダー」という世界最初のカレー粉が発明され、さらにヨーロッパに広がって、小麦粉や油脂と融合させたカレールウ(rouxはフランス語)へと発展します。
明治維新とともに日本に入ってきたカレーはインドのカレーではなく、主にとろみのあるヨーロッパ経由のカレーだったのです。
■2.カレーはどうしてカレーなの?
インドの言葉には存在しないのに、カレーに「カレー」という名前がついたのはなぜか。語源は諸説あります。ヒンズー語で「香り高いもの」「おいしいもの」という意味の「ターカリー(Turcarri)」から英語の「Curry」に転じたという説。タミル語で「ご飯にかけるタレ状のもの」という意味の「カリ(Kari)」が語源であるという説。そしていかにもインドらしいのが「釈迦由来説」。釈迦は青年時代、山籠もりの修行で木の実や草の根などを口にして飢えをしのいだ後、下山した地で教えを説きました。そのときに携帯していたスパイスを民衆に分け与えたところ、人々が叫んだ「おいしい!」という意味の「クーリー」に由来するとか。さらに、その説教をした土地の名前に因んでカレーと名づけられたという説もあります。
最近有力とされているのは、「スパイシーな汁かけご飯」の総称からきているという説です。「カリ」はインドやスリランカの人たちが常食にするスパイスを組み合わせてつくった汁をご飯にかけたもの。この「スパイシーな汁かけご飯」を食べている国は、西はパキスタンやインドから、東はインドネシアのジャワ島付近まで広がっていて、食文化的に「カレー文化圏」と分類されます。それらの地域で食べられていたスパイス料理を、外来の西洋人が総称して「カレー」と呼ぶようになったとのことです。
■3.カレーと日本人
カレーを食べた最初の日本人として記録に残っているのは、NHK大河ドラマ「八重の桜」にも登場する会津白虎隊の一員で、後に東大総長も務めた山川健次郎です。1871(明治4)年、当時16歳だった山川少年は、国費留学生としてアメリカに渡ります。その船中でカレーライスに出会いました。彼がカレーライスを手に取ったのは、それが唯一の米料理だったからで、実際にはご飯しか食べなかったとも言われています。
その8年前の1863年、医師の三宅秀(ひいず)が遣欧使節団に随行したときに、日本人でカレーを初めて見たという逸話も残っています。しかし、江戸時代初期には山田長政のような日本人が東南アジアのカレー文化圏に進出しており、彼らがカレーの原型になるスパイス料理を食していた可能性は大いにありそうです。
カレーのレシピを日本で初めて紹介したのは1872年に出版された『西洋料理指南』(敬学堂主人著)と『西洋料理通』(仮名垣魯文著)という2冊の本。『西洋料理指南』によれば、「カレーの製法は、みじん切りのねぎ、生姜、にんにくをバターで炒めて水を加え、鶏、海老、鯛、牡蠣、赤蛙などを加えて煮、カレー粉を加えて煮込んだら、塩と水溶きの小麦粉を加える」とのこと。玉ねぎやじゃがいも、にんじんはまだ入っていなかったのです。
■4.ライスカレーとカレーライスの違いは?
厳密な定義ではありませんが、ご飯の上に黄色いカレーがかかっているものが「ライスカレー」。一つの皿の中でもカレーとライスが分けてあるもの、あるいはソースポットにカレーソースを入れてご飯とは別々に出てくるのが「カレーライス」という線引きがあります。
一方で、戦前から戦後、カレーが大衆化した時代には「ライスカレー」と呼ばれるのが一般的で、それが東京オリンピックが開催された1960年代半ば頃を境に「カレーライス」になったとも言われています。高度成長期で日本が豊かになるとともにカレーも高級になって、呼び名も変化したのでしょう。
■5.2日目のカレーは、なぜおいしい?
一晩置いたカレーが出来たてと違う味になるのは、鍋の中でさまざまな「変化」が起こるからです。
肉や野菜のエキスが溶け出してソースにしみ込むので、味がよくなじんでコクや旨味が増します。じゃがいもを入れたカレーの場合は、もう一度熱を加えることで煮くずれし、味がまろやかになったり、舌ざわりがなめらかになるでしょう。
しかしその一方で、実は風味は落ちているのです。スパイスの香りは揮発性ですから、加熱すればするほど抜けてしまいます。私個人の好みを申しますと、スパイスの香りがきちんと出ているカレーが好きなので、再加熱したカレーは眠たく感じてしまう。そういうときには香りのスパイスをブレンドした「マサラ」を加えて、香りを回復させます。2日目のカレーがおいしいと感じるかどうかは人それぞれですね。
■6.カレーをこぼしたらどうする?
白いワイシャツについたカレーのしみって、目立って大変です。カレーが黄色いのは香辛料のターメリック(ウコン)の色が強く出るからです。ターメリックに含まれているクルクミンという黄色い色素は紫外線に弱いので、洗って日に当てれば黄色のしみは消えます。ただし、カレーにはいろいろな油分が入っています。油じみは干しただけでは消えません。
クルクミンは肝臓の働きを活発にするとか、大腸がんを予防するなどの研究結果もあり、近頃はクルクミン配合の健康食品が売られています。カレーの黄色にはそんな効果があると思えば、服についたシミにも腹が立たないかもしれません。
(文・小川 剛 教える人:高井 真(エスビー食品 広報ユニットチーフ))
