《ネットも電話も繋がらない》絶海の孤島・青ヶ島在住の41歳女性が語る、“日本一人口が少ない村”を襲った「過去最大級の台風被害」の実態〉から続く

 日本一人口の少ない村、青ヶ島村在住のYouTuber・佐々木加絵さんが“島暮らし”を発信する連載企画。

【特別グラビア】美しすぎる…絶海の孤島・青ヶ島在住の42歳美女を写真で見る(全50枚超)

 東京都心から約360km離れた人口157人(2026年5月1日時点)の小さな島・青ヶ島。交通手段が限られていて、簡単に上陸できないことから、別名「絶海の孤島」と呼ばれている。そんな青ヶ島の日常をYouTubeで発信しているのが、佐々木加絵さん(42)。

「私にとっては普通なのですが、島外の人からすれば、青ヶ島の日常は非日常なのかもしれない」と話す加絵さんは、いったいどんな“島暮らし”を送っているのだろうか。今回は、青ヶ島を訪れる外国人観光客の実情や、島の受け入れ態勢について伺っていく。


青ヶ島生まれ・青ヶ島育ちの佐々木加絵さん(本人提供)

◆◆◆

「死ぬまでに見るべき世界の絶景13選」に選出され注目

 国内のいわゆる「観光地」と呼ばれるところは、ここ数年インバウンド需要がすごいことになっていますよね。青ヶ島でも、月に数人程度ですが、海外から訪れたのであろう旅行客を見かけます。

 ただ、「ここ数年で増えた」とか、逆に「めっきり減った」という実感もなく、昔からコンスタントに来てくれている、という印象です。

 青ヶ島が海外から注目されるようになったきっかけは、2014年にアメリカの環境保護NGO「One Green Planet」の「死ぬまでに見るべき世界の絶景13選」に選ばれたこと。それ以来、海外メディアからの取材依頼が、定期的に届くようになりました。

 たしか2年前にはフランス、今年はスウェーデンのテレビ局が島を訪れ、ドキュメンタリー番組を撮影していたんですよ。

 そうやって青ヶ島の存在が海外に知られていくにつれ、今度は島の風景だけでなく、文化そのものに興味を持って来てくれる人も増えてきました。

 たとえば、青ヶ島の伝統的な焼酎「青酎」の取材で、わざわざ海外から来島する人もいます。今ではなかなか見かけない、昔ながらの製法でお酒を造っているからか、国内外問わずお酒好きな人たちの興味を引くみたいです。

 ちなみに、来てくれる人の国籍はさまざまです。韓国や中国の人もいれば、遠く欧米からわざわざ足を運んでくれる人もいます。ヨーロッパには、アルプス山脈をはじめ豊かな山岳地帯が広がっているから、自然の中に身を置く文化が根付いているのかもしれません。

 そんな感性を持つ人たちにとって、断崖絶壁に囲まれた青ヶ島の自然は、何か響くものがあるのかもしれませんね。

ほとんどの人が「一人旅」人気のスポットは…

 青ヶ島まで足を運んでくれる外国人観光客には、ある共通点があります。それは、ほとんどの人が「一人旅」だということ。

 考えてみれば、ヘリも船も本数が限られた絶海の孤島まで、わざわざ時間をかけて来てくれるような人たちです。自分のやりたいことを大事にしているからこそ、それぞれがそれぞれのペースで、島の自然や雰囲気を、満足するまでじっくり味わっている印象です。

 それを象徴するように、外国人観光客のほとんどが歩いて島を回っているんですよ。たとえば、島の中心部にある居酒屋からキャンプ場までは、私の足だと1時間ぐらいかかるんです。それでも、居酒屋でお酒を飲んだあと、その距離を歩いてキャンプ場まで帰っていく外国人観光客が、当たり前のようにいます。

 車を運転しているときにその様子を見かけて、「よかったら乗っていきませんか?」って声をかけたことがあるんですよ。でも「景色を楽しみながら歩いているから大丈夫だよ」と笑顔で返してくれる人がほとんど。

 そんな彼ら彼女らは、歩いてどこを観光しているのでしょうか。「死ぬまでに見るべき世界の絶景13選」の代表的なスポットである、二重カルデラ。そして島で1軒だけの居酒屋が、特に人気ですね。居酒屋には、ここでしか飲めない特別な青酎「初垂れ(はなたれ)」が置いてあるんです。

 初垂れは、製造過程の最初に少しだけとれる、アルコール度数60度の原酒です。通常、45度以上のお酒の流通は法律で禁止されているのですが、特区法特例を受けていて、島内でのみ少量製造・販売が認められているんです。その度数の高さと香りの豊かさに、目を見開いて驚いている人を見かけたことがあります。

 あと、「地熱」エリアも人気ですね。キャンプ場や二重カルデラがある、自然豊かな池之沢地区では、いろんなところから水蒸気が吹き出している様子が見られます。これが地熱、青ヶ島の方言でいうと「ひんぎゃ」です。

 池之沢地区には、ひんぎゃを活用したサウナや、蒸し調理ができる地熱窯があるんですよ。地面に寝転がるだけで、天然の岩盤浴も楽しめます。こんなに地熱が身近な土地は、世界的にもかなり珍しいみたいで、滞在中に「一度は体験しておかなきゃ」と訪れる人が多いようです。

外国人観光客は「そのままの青ヶ島」を受け入れてくれる人が多い

 こうして見ていると、外国人観光客が楽しんでいる場所も、その楽しみ方も、日本人観光客と大きくは変わらないんですよね。ニュースで見かけるような激しく騒ぐ人はいませんし、ゴミをその辺に捨てる人もいない。日本人も外国人も、事前に調べてルールを守って、そのうえで思い思いに島を楽しんでくれている人ばかりです。

 あえて違いを言えば、外国人観光客は「そのままの青ヶ島」を受け入れてくれる人が多いかもしれません。

 日本にいると、安くて便利で接客レベルの高いサービスが当たり前になるじゃないですか。でも、物の流通手段も、需要も供給も限られている島で、同じレベルのサービスの実現は正直かなり難しいんです。

 だから同じ日本人からすると、「宿のご飯が思ったより質素だった」「欲しいものが売店に売っていなかった」「接客が馴れ馴れしい、もしくはそっけない」と残念に思う人もいるようです。

 一方、普段海外で暮らしている人からすると、日本人が「不便」と感じるようなことも、ごく日常の範囲のようです。だから、青ヶ島のゆるさにギャップを感じることもなく、むしろどこか懐かしさを感じてくれているようにも見えます。

旅行中にトラブルが起きても、だいたいのことはなんとかなる

「言葉も通じない外国人観光客が来て、対応が大変じゃないですか?」と聞かれることもあります。でも、苦労していることはほとんどないんですよ。

 その理由のひとつは、先ほどもお話ししたように、青ヶ島に来てくれる観光客は、みんな事前にしっかり下調べをしてきてくれるから。ヘリの予約のこと、宿のこと、立ち入り禁止の場所があること。交通の便が限られたこの島に、何の準備もなしに来ようとする人はまずいません。だから、トラブル自体がそもそも起きにくいんですよね。

 ちなみに、日本語のレベルはさまざまです。ある程度日常会話ができる人もいれば、まったく話せない状態で来る人もいます。

 現状、外国語を話せる島民はほとんどいません。それでも、お互いにスマホの翻訳アプリを使ったり、ボディランゲージを交えたりしながら、コミュニケーションをとっています。それに、島内に役場も交番もあるから、万が一旅行中にトラブルが起こったとしても、だいたいのことはなんとかなるんですよね。

島の子どもたちにとっての海外の人たちの存在とは

 そして島の子どもたちにとっても、海外の人たちの存在は身近なものなんですよ。青ヶ島の学校では毎年、海外の文化や芸術に触れる交流イベントが行われています。さらに今年からは、中学校の修学旅行先が海外になるそうです。

 青ヶ島は人口約160人の小さな島だから、日々接する人も、目にする文化も、おのずと限られてしまいます。だからこそ子どもたちには、いろんな国の文化に触れて視野を広げてほしい、という島の大人たちの想いが反映されているのかもしれませんね。

 青ヶ島は、外国人観光客が楽しめるような施設やイベントが充実しているわけではありません。交通機関はかなり限られているし、民宿も少なく、ほとんどがいまだに電話予約だから、移動手段と宿を確保するだけでも一苦労だと思います。

 それでも、事前にしっかり下調べをして、「お邪魔します」という気持ちで訪れてくれる人たちが絶えません。そんな人たちが、もっと島に訪れやすくなればいいな、と思っています。

「試しにちょっと住んでみる」という選択肢に

 今、私が中心となって、島内にシェアハウスを作る準備を進めています。国内外問わず青ヶ島に来てくれる観光客から、「もう少し長く滞在してみたい」「いつか住んでみたい」と言われることが少なくないんです。国籍問わず、青ヶ島に興味を持ってくれる方に「試しにちょっと住んでみる」という選択肢が増えたらうれしいです。

 また、私の母が運営する民宿に泊まっていた韓国人観光客の方から、「加絵さんのYouTubeを見て来ました」と言ってもらえたこともあるんです。私の発信が海を越えて海外の人たちに届き、青ヶ島を知るきっかけのひとつになっている。そう考えると、私ができることはまだまだありそうだな、と思います。

取材・文=仲奈々
写真提供=佐々木加絵

(仲 奈々,佐々木 加絵)