30年前は50万円台だったが現在は3〜4倍の定価に。「もう手に入らない思い出の品をよくも…」と葵さんの怒りは止むことがない

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 大切な時計や宝飾品を実兄の手で勝手に売られてしまった――。なんとか兄から回収中の「30万円」の手元資金を、“気分が上がる”ものに投資したい。富裕層のライフスタイルにも詳しいFPの山口京子さんが、教科書的なマネー論とは一線を画す、異色の現物投資術を伝授する。

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【case】成人祝の思い出が「二束三文」で買取屋に

 成人の記念に親に買ってもらった、ロレックスのゴールドコンビ仕様の腕時計。自身で購入したカルティエの指輪と、祖母からもらったエメラルドの指輪。都内在住の葵さん(仮名、49歳)が実家で大切に保管していたこれらを、実の兄が「遊ぶ金欲しさ」に勝手に持ち出し、売られてしまったのは、昨年の秋のことだったという。

30年前は50万円台だったが現在は3〜4倍の定価に。「もう手に入らない思い出の品をよくも…」と葵さんの怒りは止むことがない

「街の大手買取店に持ち込まれ、大切な時計と指輪3点合わせて、たった30万円で買い叩かれてしまった。兄は『実家の断捨離だ』などと聞き苦しい言い訳していましたが、明らかに嘘。大喧嘩になりました。最悪の気分です」

 現在、葵さんは兄から毎月5万円ずつを「絶賛取り立て中」だ。葵さん的には「少なくとも3点で100万円の価値はあったはず」と、最終的に兄から100万円の返済をめざしており、現在までに30万円を取り戻したという。しかし、かつて50万円台だったロレックスが、今や定価で180万円以上の価値に跳ね上がっている現実を知り、悔しさは募るばかりだ。

「もう一度、同じものを取り戻したいけど、手元の30万円じゃムリ。価値が下がらない現物を手に入れるとしたら何がおすすめですか?」というのが、山口さんへの相談だ。

【FPのアドバイス】現物資産は魅力的だが選択肢は少ない

「FPの模範解答としては、現物よりも“オルカン(全世界株式投信)”投資一択なんでしょうけど、そこは葵さんには響かないでしょう? 手元に置けて、気分が上がり、資産価値が下がりにくい・なんなら今後も上がっていく……、そんな現物資産がほしいというわけですね?」

 ロレックスやエルメスのバッグ、ポルシェなどは、インフレや卓越したブランド戦略によって、『価格が下がらない資産』というイメージがあり、多くの人があこがれる存在だ。とはいえ、本人も自覚しているように、中古であっても、ポルシェはもちろん、30万円ではロレックスもエルメスのバッグも状態の良いものは手に入らない。そこで、30万円という予算を最大限に活かし、趣味と実益、そして「資産防衛」を兼ね備えた投資法を指南してもらった。

最も手堅いのは、「最後の砦」の金(ゴールド)

「手堅いのは、やはり金(ゴールド)です。ただし、ブランド物のジュエリーはデザイン代や加工賃、ブランドのネーム代が上乗せされているため、売却時にグラム換算されると損をしやすい。現物資産として持つなら、純金の金貨や、加工が少なめのアクセサリー(平打ちリングや喜平ネックレスなど)がいいですね」

 ゴールドといえば、現在は1gあたり2万円台まで高騰しているが、この50年、世界情勢や為替変動によって大きく価格が変わってきた。1980年前後は5,000〜6,000円台だったが、バブル崩壊後に900円を割り込んだ時期も。その後、テロや金融不安が相次ぎ「有事の金」として価格が再び上昇、20年代になるとコロナ禍、ウクライナ侵攻、中東情勢緊迫化、円安などが重なり暴騰している。そんな金を所有することが資産防衛につながるのか、不安に思う人もいるだろう。

「そもそも金は、値動きに乗じて儲けを狙うものではないんです。株も債券も暴落して、国家の信用すら揺らぐ、そんな局面で、世界中どこでも価値を認められる“最後の砦”。自分と家族を守るため、資産の一部を金に変えておく、それが世界の富裕層の発想です」

 30万円という予算であれば、山口さんが勧めるのは金貨だ。

「カナダのメイプルリーフ金貨などは、デザインもかわいく、持っていて気持ちも上がります。1/10オンス(約3g)などの小ぶりな金貨なら、1枚あたり9万円台(※2026年5月26日現在)で購入できるため、30万円の予算があれば3枚手に入ります」

 金を売却する際は、街の買取店に行くのではなく、『田中貴金属』を利用するのが鉄則だ。世界の金市場や造幣局が認めるブランドであり、店頭にその日の取引価格もきちんと明記されているため、買いたたかれる心配がない。前述の金貨の購入も可能だ。

閉鎖蒸留所のウイスキーやアートが…

「金貨を眠らせておくのが物足りなければ、ウイスキー投資も面白いですよ」と山口さん。すでに閉鎖された蒸留所の原酒や「イチローズモルト」などのプレミアム限定品は市場の流通量が減る一方なので、希少性から価値が下がりにくいという。中国の景気失速などでウィスキーバブルはやや落ち着きつつあるが、ワインほどの繊細な管理が不要な点もありがたい。

「東京で定期開催されるシンワアートオークションなどへの参戦も一つの手です」

 名前の通りアート作品を扱っているが、ビンテージウイスキーなどの出品もある。事前の下見会で現物を鑑賞し、気に入ったものに入札するしくみで、一般人も参加可能。30万円前後で落札できるものもある。将来的に価値が上がれば再出品による売却も可能で、何より日常空間に「好きなもの」を置く豊かさが得られる。

「金貨でも、ウイスキーでも、アートでも、株式の短期売買とは根本的に考え方が異なります。大切なのは、自分の人生を精神的にも物質的にも豊かにしてくれる現物を、資産の一部として手元に置くという発想です。取り戻した30万円を、ぜひそのきっかけにしてみてください」

※プライバシー保護のため、記事中の事例は、具体的な状況の一部を変更しています。

今回のアドバイザー/山口京子(やまぐち・きょうこ)さん
1966年名古屋生まれ。金城学院大学卒業。大学在学中から、テレビ・ラジオに出演。2000年にファイナンシャルプランナーの資格を取得。のべ2,500組以上の家計相談を受け、お金と人生の悩みを解決に向けてサポートしてきた。また、家計管理、貯蓄・資産運用のプロとして、金融庁、証券業協会、東京証券取引所の講演会にも出演。2024年には、「KOKUSAIには愛があるプロジェクト in あいち」のメインキャラクターに。『お金も人生も薔薇色!老後計画』(主婦と生活社)など著書多数。

取材・文/鷺島鈴香

デイリー新潮編集部