地頭の正体は「抽象化」だった 仕事が伸びる人がやっている思考の共通点

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「地頭がいい人」と「そうでない人」の差は何でしょうか。その正体は、物事の本質を捉える“抽象化能力”にあります。

日々の仕事の中でも、同じ課題を前にしながら、個別対応に追われる人と、構造を見抜いて解決する人に分かれます。この差が、成果の違いとして現れているのです。

本記事では、1500人以上を指導してきた経験をもとに、大人でも地頭=抽象化能力を鍛えるトレーニングを解説します。【文:個別指導塾経営・プロ家庭教師 妻鹿潤】

「地頭が良い」の正体は、事象の共通点を見抜く力

りんご、バナナ、ぶどうを見て、これらは果物だと一括りにする。誰でも無意識に行っている抽象化という思考プロセスが、大人になっても重要だということに気づいている人は意外と少ないです。

例えば、顧客のクレーム、納期の遅れ、商品の不具合といった問題は一見するとバラバラに見えますが、共通しているのは「顧客からの信頼が損なわれている」という点です。こうした共通点を見抜き、本質的な課題として捉え直せる人は、高い抽象化能力を持っていると言えます。

抽象化思考の対極にあるものを私は“丸暗記思考”としています。2つを比較すると以下のようになります。

●丸暗記思考(具象の世界)

10のトラブルに対し、10の解決策を個別に覚えようとする。情報の量に依存するため、脳のメモリがすぐパンクしてしまいます。

●抽象化思考(地頭の世界)

10のトラブルから共通の構造を見抜き、1本の法則を導き出す。1つの法則さえあれば、未知の100のトラブルにも応用して対処できます。この思考の差が、対応できる課題の範囲の違いになっていきます。

抽象化能力は大人でも鍛えられる?

ビジネスでも求められる抽象化能力には生まれつきの差が確かに存在します。教えられずとも最初から世界を構造で捉え、難関校にスイスイ受かっていく子がいるのは事実です。

一方で、その能力が未熟なまま、丸暗記という力技だけで合格を手にしてしまうケースも少なくありません。しかし、暗記で乗り越えた成功体験は、未知のトラブルが起きた際に過去の成功例を必死に検索するだけの脆弱な武器にしかなりません。

この力を早くから鍛えるかどうかが大事です。目先の合格に飛びつくのではなく、思考の背骨になる地頭を伸ばすことが、これからの時代を生きる力につながります。

では、これらの能力を身につけないまま大人になってしまったら、もう手遅れなのでしょうか。実は、そんなことはありません。脳の回路は、意識的なトレーニングによって後からでも作り変えることができます。

ただし、これまでの人生で自動化されてきた思考の癖を、わざわざ手動に切り替えるような多大な負荷を覚悟しなければなりません。錆びついた思考の扉をこじ開けるための、泥臭くも強力な3つのアプローチを紹介します。

・ステップ1:バラバラの出来事を、一つの箱に放り込む

目の前で起きている別々のトラブルを、それぞれ個別の事件として扱うのをやめてみましょう。例えば、部下のミス、備品の不足、会議の延長という3つの事実があったとき、これらに共通する名前を無理やりつけてみます。

ミスは確認不足、備品不足は発注漏れ、会議の延長は時間管理の欠如。これらをまとめると、「チェックする仕組みの不備」という一つの大きな箱に入ります。この「共通の正体を探る作業」が抽象化の第一歩です。

・ステップ2:得意な分野の構造を、今の悩みに重ねる(スライドさせる)

自分にとって馴染みのある世界のルールを、手元の課題に無理やりスライドさせてみてください。もし料理が得意なら、プロジェクトの停滞を料理に例えてみます。これは火力が強すぎたのか、それとも味見の回数が足りなかったのか。料理なら当たり前に守っている構造を、あえて仕事に重ね合わせてみるのです。

全く違うジャンルの成功法則を、今の課題にオーバーラップさせてみる。この「構造を借りてくる」という思考の往復が、抽象化のトレーニングになります。

・ステップ3:点が散らばる世界に補助線を引く

抽象化とは、事実を線でつなぎ、構造として捉えるプロセスです。そこでまずは、紙に事実を2つだけ書いてください。例えば、売上が下がったという事実Aと、部下の活気がないという事実Bです。その2つの間に、原因と結果の矢印を引いてください。

もし、売上が下がったから活気がない(A→B)と言い切れないのであれば、ここで第3の要素を書き足します。商品トラブルが頻発しているという事実Cが、売上の低下(A)と、対応に追われる現場の疲弊(B)の両方を引き起こしているのかもしれません。

矢印が引けない、あるいは向きに迷うときは、どんどん要素を増やして構いません。3つ、4つの点を無理やりにでも矢印で結ぼうとするうちに、バラバラに見えていた問題の根底にあるものが見えてきます。この、見えない糸を可視化しようとする負荷こそが、抽象化の能力を鍛えます。

地頭を鍛えれば世界の見え方も変わってくる

目の前の出来事を具体的な事実として受け取るだけでなく、「これは他の何と同じ構造か?」という視点で眺めてみる。それだけでも、地頭が鍛えられます。ただの情報の羅列に見えていたものが、なんとなく線でつながって見えてくる。この感覚が出てくると、世界の見え方は少し変わっていくはずです。

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