記事のポイントハイネケンはFIFAワールドカップ2026を前に、サッカー関連マーケティング支出を前年比189%増やした。限定商品や観戦イベント、バー向け販促キットを通じて、ファン同士の一体感を訴求している。公式スポンサーではないブランド各社も、ワールドカップ需要を狙った施策を強化している。
ハイネケンUSAは、FIFAワールドカップ2026を前に、今年はサッカー分野へのマーケティング予算を大幅に増やしている。「サッカー公式ビール(the official beer of soccer)」として商標を取得しているこのビール会社は、ワールドカップの公式スポンサーではない。しかし、夏のサッカーブームに乗じて、パブリックス(Publix)をはじめとした米国各地の小売パートナーで、サッカーをテーマにした限定12本パックと24本パックを発売する。ハイネケンはまた、ロサンゼルス、ヒューストン、フィラデルフィア、ニューヨーク、マイアミ、ダラスなど、米国各都市で観戦パーティーを開催する予定だ。さらに、テレビ広告やイベントなどで構成される「ファンズ・ハブ・モア・フレンズ(Fans Have More Friends)」という新たなブランドプラットフォームを構築している。このブランドプラットフォームは、コーチェラのような音楽フェスティバルだけでなく、主要なスポーツイベントを横断する2026年のハイネケン戦略の中核となるものだ。ハイネケンは、メジャーリーグサッカー(MLS)とインターナショナル・チャンピオンズ・カップ(ICC)の両方とパートナーシップを結ぶことで、長年にわたってサッカーに深く関わってきた。30年間にわたり、UEFAチャンピオンズリーグのスポンサーも務めてきたが、このパートナーシップは2027年に終了する予定だ。30年ぶりに北米でワールドカップが開催される2026年、ハイネケンは北米に急速に拡大するサッカー人気を取り込むため、サッカー関連の支出を前年比189%増やしている。

ワールドカップがビール市場の巨大商機に

ハイネケンUSAのチーフマーケティングオフィサー、アリソン・ペイン氏はModern Retailに対して、「サッカーは消費者にとって非常に大きな情熱の対象であり、その人気はさらに高まる一方だとわかっている」と語った。「(ワールドカップ期間は)ビールが大量に消費される大きな機会だ。なぜなら、ファン同士が集まってお気に入りのチームの試合を生で観戦するからだ。ハイネケンにとっても、ビール消費の非常に大きな機会になるとわかっている」。

小売店やバーで観戦需要を取り込む

ワールドカップは6月11日から7月19日まで、米国、カナダ、メキシコの3カ国を開催地として行われる。しかし、この春から夏にかけてのハイネケンの大規模なサッカー攻勢は、ほかのイベントとも重なる。5月初旬に幕を閉じたUEFAチャンピオンズリーグ準決勝や、5月30日に開催されるUEFAチャンピオンズリーグ決勝などだ。ハイネケンはスポンサーとして、UEFAチャンピオンズリーグのロゴと、2019年に出願した「サッカー公式ビール(Official Beer of Soccer)」の商標をあしらった限定アルミボトルを製作した。さらに、小売店舗にはサッカーゴール型のディスプレイや床用デカール(ステッカー)も設置している。

Image via Heineken

また今夏、ハイネケンは、サッカーの試合を放映する一部のバーに、ネオンサインやペナントといったアイテムを詰め込んだプロモーションキットを提供している。これらの店舗は、ファンや海外からの旅行客が集まりそうな場所を基準に選定したと、ペイン氏は語った。同氏は、たとえばニューヨーク市では、ブラジル人がリトルブラジル地区のバーで試合を見るかもしれないと述べた。「膨大な数の観光客が訪れることになる。ヨーロッパの人々もやってきて、自国のチームを観戦し応援するだろう」と同氏は語った。

ボランティア休暇で観戦体験をつくる

サッカーの試合を観たくても、試合時間中に仕事があるかもしれないという人のために、ハイネケンはボランティア休暇(VTO)の取り組みを実施している。同ブランドは公園清掃やフードバンクといった活動を企画しており、参加者は社会貢献のために仕事を休むことができる。そして活動後には、参加者全員でサッカーの試合を観戦する。マイアミで先日行われた、UEFAの試合の時間に合わせたビーチクリーンボランティアには50人が参加したと、ペイン氏は語った。ハイネケンは夏のあいだ、VTOの取り組みを継続し、イベント情報を自社のWebサイトで更新していくという。

機能訴求よりも「一体感」がブランドを動かす

こうしたマーケティング施策、すなわち仲間意識を感じられるような施策は大きな効果を発揮すると、OOH広告プラットフォームのアドクイック(AdQuick)でバイスプレジデント・オブ・マーケティングを務めるアダム・シンガー氏は指摘する。人々を引き寄せるキャンペーンやイベントは、「こうした文化的なイベントにおいては、純粋な製品機能訴求のメッセージよりも常に高い効果を発揮する」と、同氏はModern Retailに対して述べた。「こうした瞬間、人々は自分のことを消費者だとは考えていない。何かより大きなものの一部だと考えている。そうした感情を反映するブランドが勝利するのだ」。デジタル広告プラットフォームのクリテオ(Criteo)でシニアバイスプレジデント・オブ・グローバルブランドを務めるルーシー・クリズ氏も同意見だ。同氏は、今このときに「もっとも人々の共感を呼ぶブランドは、ステータスよりも、その瞬間に自然に果たせる役割に焦点を当てているブランドだ」と語る。クリズ氏はさらに、「メッセージが本物だと感じられ、人々が観戦して祝う流れのなかにブランドが自然に位置づけられれば、それこそがもっとも記憶に残りやすい」と付け加えた。

公式スポンサーではないブランドも熱狂に乗る

ほかのブランドも、数十億人の視聴者を集めると見込まれるワールドカップ熱に乗ろうと、さまざまな方法を模索している。レイズ(Lay's)はカナダでポテトチップスの袋にサッカースターを起用しており、アディダス(adidas)は10月に最初のユニフォームキットを発売した。ただしハイネケンと同じく、公式スポンサーではないブランドもある。たとえば、スタンレー1913(Stanley 1913)はタンブラーの新作「フットボル・アーティスト・コレクション(Fútbol Artist Collection)」を展開しているが、ワールドカップとパートナーシップは結んでいない。一方、ハイネケンはサッカーシーズンの夏を通して、対面型のクリエイティブな施策を継続して開催していく予定だ。たとえば、1月に始動した「ファンズ・ハブ・モア・フレンズ」キャンペーンの一環として、ニューヨークでクリエイターのザック・アルソップとタッグを組んだ。オーストラリア出身のアルソップは、UEFAの試合を一緒に見る相手を探していた。彼は「ビールを一緒に飲もう(Have A Beer With Me)」と書かれたチラシを配り、セントラルパーク・タヴァーン(Central Park Tavern)に「何百人もの」人々を集めた。「我々は、ファン同士がハイネケンを飲みながら本当に繋がっている様子を見せたいのだ」と、ペイン氏は語った。[原文:Heineken shares its marketing strategy for the summer of soccer as World Cup hype ramps up]Julia Waldow(翻訳、編集:藏西隆介)Image/instagram : The HEINEKEN Company