飲酒運転による重大事故がなくならない。

 悪質な運転者を厳しく処罰する法改正を機に、少しでも酒を飲んだら運転しないことを改めて徹底する必要がある。

 自動車運転死傷行為処罰法の「危険運転致死傷罪」について、罪となる飲酒量や速度超過に数値基準を新設する改正案が参院で可決された。今国会で成立し、年内に施行される見込みだ。

 飲酒は、「呼気1リットルあたりのアルコールが0・5ミリ・グラム以上」が適用対象となる。ビール大瓶2〜3本を飲んだ状態に相当する。

 現行法には数値の目安がなく、適用しにくかった。2024年、群馬県伊勢崎市で家族3人が死亡した事故では、加害者は勤務先での呼気検査後に酒を飲んだことが裁判で認定されたが、当初は「過失運転」で起訴されていた。

 危険運転は法定刑の上限が拘禁刑20年で、過失運転の7年に比べて格段に重い。数値基準の導入は、悪質な運転者を厳正に処罰する一歩になるはずだ。

 新設される数値基準は、人種や性別、酒の強さに関係なく当てはまるとされる世界保健機関(WHO)のデータなどから導かれた。どんな人でも注意力の低下や反応の遅れが生じる値だという。

 ただ、数値基準を設けたことで、逆に「基準未満なら、少しぐらいなら飲んでも構わない」という誤解が広がらないか不安も残る。法改正を議論した法務省の審議会でもこうした懸念が示された。

 交通事故遺族からは、数値基準自体が高すぎるとして、引き下げを求める要望も相次いでいる。

 飲酒運転は極めて危険な行為だ。捜査機関は、数値基準だけにとらわれず、事故の状況や悪質性、危険性を十分に吟味し、柔軟に運用することが求められる。

 参院では、法施行後の状況を踏まえ、数値基準のさらなる検討を求める付帯決議が採択された。数値基準の妥当性については、今後も必要に応じて検証すべきだ。

 近年、飲酒運転には厳しく対処する傾向が強まっている。運転者だけでなく、車の同乗者や酒の提供者には罰則が設けられ、24年11月からは自転車での酒気帯び運転にも罰則が新設された。

 飲酒運転による死亡事故は昨年、125件に上った。酒を飲んだら絶対運転しないという意識を今一度、社会で共有したい。

 宴席では飲酒しない人を事前に決めておく「ハンドルキーパー運動」や飲食店による呼びかけなどの取り組み強化も欠かせない。