イランの新たな最高指導者と密接な関係を持つ有力な一族がイラン最大の仮想通貨取引所を支配しており、イラン中央銀行やイランの軍事組織であるイスラム革命防衛隊に関連する数百億円規模の取引を処理しているとして、ロイターが詳しく報道しています。

One of Iran’s most powerful families founded its largest crypto exchange. It’s used by the IRGC to move millions | Reuters

https://www.reuters.com/investigations/one-irans-most-powerful-families-founded-its-largest-crypto-exchange-its-used-by-2026-05-01/



ロイターが取り上げたのは、イランで最も影響力のある一族の1つ、ハラジ家の兄弟2人が設立した仮想通貨取引所「ノビテックス(Nobitex)」です。ノビテックスはイラン国内の仮想通貨取引の推定70%を扱っているとされており、同社の発表によればユーザーは1100万人で、これはイラン人口の10%以上に相当します。

イランは西側諸国による経済制裁の対象となっていますが、この取引所はアメリカおよび同盟国から制裁指定を免れているため、国際銀行網から締め出され、通貨の価値下落と激しいインフレに直面するイラン人は仮想通貨を購入・保有するためにこの取引所を利用しているとのことです。

ハラジ家の3代目にあたるアリーとモハンマド兄弟はノビテックスを巨大な仮想通貨取引所へと育て上げました。一方でこの兄弟は社内でもハラジ姓を隠していて、当時も現在もハラジ姓を名乗っておらず、ノビテックスがハラジ家と関わりがあるということはロイターの調査が行われるまであまり知られていませんでした。



ハラジ家はイランの最高指導者らに助言を行い、政治、外交、宗教の主要ポストを占めてきた一族として知られています。例えば兄弟の父アヤトラ・バゲル・ハラジ(Ayatollah Bagher Kharrazi)はヒズボラ創設者の1人であり、教え子にイランの最高指導者モジタバ・ハーメネイー師がいたとされています。叔父はイランのカマル・ハラジ元外相で、2013年にはイラン大統領選へも出馬しました。

ハラジ兄弟の正体に関するうわさは2024年に浮上しました。中国のあるブログが、兄弟の父親がノビテックスの主要株主であると報じたのです。

アリーが2017年にノビテックスのドメインを登録した際、ハラジという名前を含むメールアドレスを使用していましたが、これは父バゲルが代表を務める宗教慈善団体のウェブサイト登録にも使われていたものと同じアドレスでした。登記簿によるとアリーは慈善団体の副理事長として記載されていました。



ロイターは、ノビテックスがイラン政府により通常の銀行システム外で同盟国へ資金を送るために利用されているほか、イスラム革命防衛隊ともつながりがあると報じています。

一方でノビテックスは、イラン中央銀行が定期的にノビテックスを含む取引所による国内銀行システムへのアクセスを禁止した点、治安機関によるオフィスへの踏み込み、ドメイン遮断、銀行ゲートウェイ閉鎖を含む業務制限を受けてきたことなどを挙げ、「こうした行為は、当社が何らかの政府支援を受けているという考えとは完全に矛盾している」と指摘。違法資金が取引所を通過していたとしても、それは経営陣の承認や認識なしに行われたものだと述べました。

ロイターは「なぜノビテックスが他の主要なイラン経済関係者に科されたような制裁を免れているのかを特定できなかった」と報じ、ノビテックスとハラジ家のつながりについて言及した民主党のエリザベス・ウォーレン上院議員の「今回の報道は重大な警告信号だ。敵対勢力は、デジタル資産をアメリカ主導の世界金融システムに代わる手段として利用している」というコメントを引用しました。