これが狙いだったのか…勤続35年超・晴れて定年を迎えた会社員、「なぜか65歳目前で会社を去った同期」の謎が解けた日

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65歳で、いよいよ退職を迎えた山田さん。しかし、同期の田島さんは、なぜか山田さんより一足早く会社を去りました。「誕生日は来ていないはず。なのに、なんで先に?」――不思議に思っていた山田さんでしたが、その謎の一端を知ることになったのは、とある雑誌の小さなコラムでした。

65歳になる直前、一足先に会社を去った同期

山田さん(65歳)は、長年勤めた都内のメーカーを退職しました。この会社では、60歳定年後も正社員に近い形で継続雇用され、退職金は65歳の退職時に一括で支給される制度になっていました。

人生最大ともいえる大金の受け取りを前に、多少お金の勉強もしたといいます。しかし「これは知らなかった!」と唸ったのが、退職のタイミングによる損得です。

不思議に思ったきっかけは、同期で同い年の田島さんが、自分より先に退職したことでした。

「……なんで? あいつの誕生日は俺よりちょっとだけ後。順番的に、退職は俺より後のはずだけどな」

しかし、個人的な事情だったらと、深いことは聞けずじまいでした。

山田さん自身が退職して、しばらく経ったとき。雑誌で見つけた「65歳より前に退職したほうが得?」という小さな記事を見て、ハッと、あの時の“なぜ”を思い出したのです。

「もしかして、これが理由で早く辞めたのか?」

定年を待たずに退職を決めた同期の狙い

「定年になる前に退職したほうがお得」――もしかしたら、こんな話を耳にしたことがある人もいるかもしれません。

そういわれるのは、65歳以降の「高年齢求職者給付金」よりも、65歳未満の雇用保険の「基本手当(失業給付)」の方が、給付日数が大幅に長いことが大きな理由です。

●基本手当(失業給付)

・原則65歳未満の退職者が対象
・給付日数は雇用保険の加入期間や年齢によって決まる(最長150日)
・65歳の誕生日の前々日までに退職していれば受給可能

●高年齢求職者給付金

・原則65歳以上の退職者が対象
・給付日数は最大50日

基本手当は65歳誕生日の前々日までに退職した場合に対象となり、給付日数は最長150日。一方で、65歳誕生日の前日以降に退職をした場合、高年齢求職者給付金の対象になり、給付日数は最大でも50日にとどまります。

もし被保険者期間が20年以上であれば、給付日数は100日分もの差が生まれることに。たとえば、基本手当の日額が5,000円の場合、高年齢求職者給付金より50万円多く受け取れる計算になります。

これだけ見ると、確かに早く退職したほうが得だといえます。しかし、これだけを見て退職を早めるのは時期尚早です。

というのも、65歳より前に自己都合で退職する場合、基本手当の受給まで2〜3ヵ月の給付制限期間を待つのが一般的です(高年齢求職者給付金の待期期間は7日間)。さらに大きな注意点として、65歳前に基本手当を受給すると、その期間は老齢厚生年金が全額支給停止(併給不可)になってしまいます。

また、本来もらえたはずの数ヵ月分の給与や、将来の年金額(厚生年金の加入期間短縮による減少)、さらには会社の退職金規定による減額リスクなども考えられます。

つまり、雇用保険だけを考えれば64歳11ヵ月退職は有利ですが、退職金や年金といった条件も含めると、一概に得とはいえないわけです。

本当に得か、自分で判断するのは至難の業

ここで注意したいのは、こうした「微妙な退職タイミングの差による損得」を本人が正確に計算するのは、ほぼ不可能という点です。

田島さんの少し早いリタイアの理由が、「得したいから」だったとしても、最終的に得をできたかどうかは、退職金規定のほか年金の状況などを詳しく照らし合わせない限り判断できません。

退職を控え、自分にとって最適なタイミングを知りたい場合は、会社の給与・人事担当者や社会保険労務士などに相談するのが現実的で安全です。自己流で計算すると、逆に損をするリスクもあります。

少しのタイミングで数十万円単位の差が出ることもあり得る。こう聞くと「損したくない」と思うかもしれません。

しかし、実際に得になるかどうかは、条件次第です。目の前の数字だけに踊らされず、慎重に判断することが大切といえるでしょう。