懐に飛び込み関係築く高市首相のトップ外交、「会談に全力投入」で外遊少なめ…「まだ余裕ない」と説明
[政治の現場]高市政権半年<3>
3月19日午前、米ワシントンの大統領賓客施設「ブレアハウス」。
首相の高市早苗(65)は、首相秘書官から対応を問われ、こう言い切った。
「乗らない手はないやろ。初めから参加しないと意味がない」
乗ると決めたのは、ホルムズ海峡の安全な航行確保に「貢献する用意がある」とうたった共同声明だ。英国主導で欧州5か国がまとめ、全ての国に「国際法の順守」も求めた。
米国とイスラエルによるイラン攻撃は国際法違反の可能性が高い。日本政府内には、米大統領ドナルド・トランプとの会談前に米国抜きの声明に名を連ねれば「機嫌を損ないかねない」と反対意見も強かったが、高市は参加を即決した。
声明は会談開始の約2時間前に発表され、トランプは会談で「日本は自ら責任を果たそうとしている」と評価した。高市は帰国後、電話会談で他国の首脳にも参加を呼びかけた。外務省によると、参加国は計38か国まで増えた。
「責任ある日本外交」を掲げる高市は、中東情勢が緊迫化する中、日本が果たせる役割を模索してきた。
4月3日、高市は首相官邸で経済産業相の赤沢亮正(65)らから、東南アジアで日本向けの医療物資の生産が困難になっていると報告を受けると、すぐに指示を飛ばした。
「物資調達は国内だけでは解決できない。日本がアジアと一体になってサプライチェーン(供給網)を強靱(きょうじん)化しないといけない」
赤沢は、安倍内閣で「自由で開かれたインド太平洋」構想を起草した国家安全保障局長の市川恵一(60)らと支援策を検討し、総額約100億ドル(約1・6兆円)の金融支援策の原案をまとめ、高市はゴーサインを出した。
支援策は15日に高市が主催し、アジアの16か国の首脳級らが参加したアジア・ゼロエミッション共同体(AZEC)のオンライン首脳会合で打ち出した。中国も自国のエネルギー調達に苦慮し、東南アジアの本格支援には動いておらず、外務省幹部は「日本が主導し、自由で開かれた同志国の枠組みでまとまれたのは大きい」と意義を語る。
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外国首脳の懐に飛び込み、個人的関係を築くのも高市の外交スタイルだ。
国際会議では、会議の合間を縫い、各国首脳に積極的に声をかける。来日した韓国大統領の李在明(イジェミョン)とは一緒にドラムを演奏し、イタリア首相のジョルジャ・メローニとの昼食会では、誕生日を祝うため、サプライズでケーキを出し、イタリア語でバースデーソングを歌った。
ただ、歴代首相と比べると、外遊の回数は少ない。来日する首脳も多いとはいえ、首相就任からの半年間で、国際会議を除く外国訪問は、米国の1か国だけだ。高市が政治の師と仰ぐ元首相の安倍晋三は第2次内閣発足後の半年間に国際会議以外で12か国を訪れている。官邸幹部は「できるだけ多くの国を訪問した方がいい」と年始の外遊を進言したが、高市は見送った。
昨年秋に韓国で行われたアジア太平洋経済協力会議(APEC)首脳会議や、南アフリカでの主要20か国・地域首脳会議(G20サミット)では、夕食会を欠席している。高市周辺は、日程を絞り込んでいる理由について「会談に全力投入しており、まだ余裕がない」と説明する。
中東情勢は収束の見通しが立たず、国際秩序は大きく揺らいでいる。昨年11月の高市の国会答弁を機に、中国との関係は冷え込んだままだ。高市が目指す「強い外交・安全保障」を確立するには、「膝をつき合わせて話すトップ外交の機会を増やすことが欠かせない」(外相経験者)との声が出ている。(敬称略)
