インフラ問題で多くの人が知りたい、なぜコンクリートが劣化するのか「水という重大要因」

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(本記事は、岩城一郎『日本のインフラ危機』の一部を抜粋・編集しています)

水の作用に着目した予防保全

コンクリート構造物の耐久性に関して問題となる各種劣化やひび割れについておさらいしてみると一つ気づくことがあります。それは、劣化には「水」が密接に関わっているということです。

中性化や塩害の劣化因子は二酸化炭素や塩ですが、これらはコンクリート内部の水分に溶け込んで、鋼材位置にまで達し、さびを生じさせます。いわば水が二酸化炭素や塩の運び屋の役割を果たしているのです。さらに言えば鋼材のさびそのものが鉄と水と酸素の化学反応によって生じるため、ここでも水がなければさびることはありません。

凍害はまさにコンクリート中の水分の凍結によっておこるものですから水が主役です。アルカリシリカ反応もアルカリと反応性シリカを含む骨材との反応で吸水膨張性のゲルを生成することで生じる劣化のため水が関わっています。さらに疲労による床版の劣化も水がある場合は、なしの場合に比べておよそ10〜100倍の速度で進行することが明らかになっています。

ひび割れもそこから水を介して有害な物質がコンクリート内部に浸入することで劣化が進行するため、やはり水の存在が大きく影響します。

水は本来コンクリートにとって必要不可欠なものです。なぜならコンクリートは水とセメントが水和反応することにより固まるからです。コンクリートが固まる過程でコンクリート中の水が蒸発などでなくなってしまうとコンクリートは十分な強度が出ません。

したがって、コンクリート構造物を施工する段階のうち、「養生」においてはできるだけ積極的にコンクリートに水を供給する。そして構造物が出来上がった後は、逆に劣化を進行させないように水を作用させない工夫が必要になるのです。

次の2枚の写真を見てください。

上の写真は橋台と桁との隙間から凍結防止剤(塩)を含む水が流れ落ち、凍害によりコンクリート表面がはがれ落ちるとともに、鉄筋が著しくさびていることがわかります。ところが同じ橋台であってもそのわずか数センチ横では劣化していません。

下の写真はトンネル坑口のコンクリートにアルカリシリカ反応が生じているものです。雨水のかかっているところは著しいひび割れが生じていますが少し中に入った乾燥しているところではまったく劣化していません。

このように水の作用のあるところで劣化が顕在化するのであれば、構造物に直接水を作用させないようにうまく水を防ぐ(防水)、あるいは逃がす(排水)ことが構造物を長持ちさせる秘訣となります。

インフラメンテナンスに携わる技術者は構造物を点検・診断する際に常に水の作用を頭に入れ、どこに水が作用しているか、そこにどのような劣化が生じているか、その劣化の原因は何か、どうしたら水の作用を軽減することができるかといったことを考えることが求められます。そして、できるだけ早い段階で水の作用による劣化を食い止めることが必要です。

このように、構造物の劣化が顕在化しないうちに予防的な処置を施すことを「予防保全」と言います。予防保全をおこなうことで、予算や人手をかけずにインフラをメンテナンスすることが可能になるのです。

さらに、「日本はこのまま崩れ去ってしまうのか…意外と気づかない「インフラ危機」本当の実態」」では、いま大問題として迫っているインフラ老朽化問題をひきつづき見ていく。

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