「手錠と腰縄したまま分娩台へ…」「3人の女性刑務官が無言で棒立ち」妊娠9カ月で逮捕された女性(47)が語る、過酷だった「獄中出産」〉から続く

 中学1年生でヤンキーになり、北関東で名を轟かせたレディース「魔罹啞(マリア)」の総長を務めた廣瀬伸恵さん(47)。ヤクザと付き合うようになり、覚醒剤に溺れ、売人となって逮捕。出所後に売人に戻るも、妊娠中に指名手配されて逃亡生活の果てに2度目の逮捕となった。

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 2度の逮捕と服役を経て、現在は建設会社「大伸ワークサポート」の社長として刑務所や少年院の出所者を社員として迎え入れて更生と社会復帰をサポートしている。

 そんな彼女に、「せがれ」と呼ぶ社員たちとの関係、「せがれ」たちに裏切られた経験、日本の刑務所をめぐる問題などについて、話を聞いた。


夏にビジネスホテルを開業予定の廣瀬伸恵さん(47)

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みんなのお母ちゃんとしてご飯の用意も

――出所後に従業員として迎えた人たちにどやされたり、肋骨を折られたこともあると伺いました。

廣瀬 でも、私のことを「お母ちゃん」って思ってくれる子が、1人から2人、3人、4人と増えていって。私が何かされたら、その子たちが立ち向かったり、守ったりしてくれるんですよ。そんな「せがれ」たちが増えていってるんでね。

 一番長い子だと、17歳の時にうちに来て、今30歳ちょっと。その子なんて、本当に私を慕ってくれて。親から虐待されてきたから「本当の親よりも社長が母ちゃんだ」って言ってくれています。

 ただ、あまりに理想を思い描いていたのか、私に彼氏ができた時に幻滅したらしくて。「社長が女のところを見た瞬間に絶望しました」って、ちょっと疎遠になったりとかはあったんだけど。今はまた前のように戻って、いい関係を保っています。

――「社長と社員」を越えている。

廣瀬 社員に何かあればすっ飛んでいくし、何かあったら助けようとするし。どこの会社の社長に言わせても尋常じゃないぐらいの社員思いというか。みんなのお母ちゃんになるために、今一緒に住んでいる実の子供には結構我慢させているところもあるんでしょうけどね。

 何かきっかけがないと立ち上がれない子には、「早く彼女を作れ」って婚活パーティーに参加させたりとか。うちは商工会に入っているので、商工会主催の婚活パーティーに「フリーの人は出席しなさい」とか言って。その結果、結婚して、家も建てた社員もいるんですよ。

「ワルに戻りたきゃ、てめえだけで勝手にやれ」

――裏切られた経験はありますか。

廣瀬 多いですよ。うちのお金を持って飛んじゃったりとかね。裏切られると「あの時、やり直したいとか言ってたのは何だったの?」「こんなに仲良くしてたつもりが、なんで急にいなくなっちゃう?」って、そりゃあガックリ来ますよ。

――そんなことされても追いかけます?

廣瀬 追いますよ。自分のせがれだと思ってますから。でも、追って見つけられる場合もあるし、見つけられない場合もあります。

 自分から戻ってきてくれる子もいます。「あの時は誰々と組んで仕事やるのがどうしてもつらくて」とか「解体に行きたいって言ったのに就かせてもらえなかったから」とか、いろんな理由で飛んだものの、他の会社でもっとひどい目に遭って「やっぱり俺の居場所はここなんだなと思って帰ってきました」という子は多いです。

――戻ってきた人を、すんなり許せるものですか。

廣瀬 「どこに行っても受け皿がない」とか「居心地が悪かった」とか「悩みを聞いてもらえなかった」とか、そう思って戻ってきてくれるのは私も理解できますから。

 ただ、会社のルールを守れずに飛んでおいて戻ってきたなら「うちに何しに来たんだ。うちの会社をつぶしに来たのか」とこっちもキレる。勝手に自分でヘソ曲げて悪いことをしたくなったとしても、絶対にほかの社員を巻き込まないようにするし。

「ワルに戻りたきゃ、てめえだけで勝手にやれ」って。でも、刑務所で更生させるのには限界もありますからね。更生しきってない状態で、うちに来ることもあるんですよ。

「刑務所にいるのって悪い集団ですから」

――刑務所の限界は、よく取り沙汰されていますね。薬物事犯の再犯率も高いですし。

廣瀬 ちゃんとした薬物依存離脱指導プログラムを受けさせることは必要だけど、それを受けたからといって完全にやめられるものじゃない。再犯率が年々上がっているのは、刑務所のやっていることが更生につながっていないってことですからね。悪い友達や知り合いを増やす場になっているところはあると思います。

 私は服役中に子供を産んだから自分の気持ちが変わっただけであって、最初に刑務所にいた時なんてとんでもなかったですから。

 刑務所の中で知り合った子と「シャブ、どこだと安い?」「外に出たら会おうね」とか暗号でやり取りして。更生を考えるよりも悪い知識を共有することに精を出してました。こう言っちゃ身も蓋もないけど、刑務所にいるのって悪い集団ですから。犯罪を犯した集団だから。

――悪いコネを新たに作る場にもなっている面もあると。

廣瀬 無期懲役は別として、受刑者のほとんどがずっと一生刑務所にいるわけじゃなくて、数年経ったらシャバに戻ってくる。それでも刑務所という場所はなくちゃいけない。犯罪をした人は隔離して罰しなきゃいけない。分かるんだけど、もうちょっと犯罪別でできることはあるんじゃないかなとは思いますね。

 私も薬物依存離脱指導プログラムを受けたことがあるんですけど、ただ円になって「ぶっちゃけトークをしましょう」「今薬物をやりたいですか?」とか。しかも、それを教える人は薬物の経験もない人。そういう心理カウンセラーなんかが講習やプログラムをやってるけど、「これって何か意味があるのか?」って。

「男の人を見るだけで妙にドキドキしちゃったり」

――変えるべき点は少なくないと。

廣瀬 性犯罪についても、もっと海外の刑務所を見習ったほうがよくて。脚なんかにGPSをはめたり、その人の行動をちゃんと把握して、再犯させないようにするとか。

 あとは、面会もアクリル板越しの30分とかじゃなくて、家族や子供と触れ合える機会を与えてあげてもいいんじゃないかなと思います。結局のところ、誰かを思う気持ちや愛情が一番人を変えると思うので。そういう意味で、刑務所に入っていても社会との接点を少しは与えてあげたほうがいいんじゃないかなって。

――数年間刑務所にいて、「じゃ、明日からシャバで頑張って」だと厳しそうですもんね。

廣瀬 私もマックス5年入った時は、出てきて1週間ぐらいは眠れなかったです。浦島花子になった気分というか。社会情勢も分からないし。そんな状態でポンとシャバに出されてもね……。女ばっかりの世界にいたから、男の人を見るだけで妙にドキドキしちゃったり。

 しかもお金がないまま出された人って、すぐに再犯に向かっちゃうところがあるから。改善すべきところはメッチャあると思います。犯罪を犯した人を更生させて社会復帰させる場じゃなきゃいけないのに、ただ単に社会から隔離すればいいだけの場所になっている気がして。刑務所にもっと意味や意義を持たせないと。

居場所づくりのための新たな挑戦

――再犯してしまう人を見ると、なんかこう込み上げてくるものはありますか。

廣瀬 2回目の懲役後はさすがに30代なので、後輩はもう結婚したりとか遠くに行っちゃったりで、友達とも疎遠になっちゃうし、やっぱり孤立しがち。親と仲が悪ければ、帰るところすらない場合がある。だから元いた悪い世界に戻るしか選択肢がないという子はすごく多いです。

 もしくは、立ち直る手段を知らないから、さっきの私の話じゃないけど、普通の会社に勤めてもいづらくなったりとか、過去がいつの日かバレちゃうんじゃないかとかビクビクしちゃう人も少なくなくて。

 だから、そういう人が何でも打ち明けられる仲間、良き理解者、なおかつ定期的に会いに行って、待っている人がいてくれる環境があればいいんですよね。これだけ人がいれば少なからず自分の気が合う人を見つけて、孤立せずに自分を受け入れてくれる場所があるんだってことは言いたいですね。

――廣瀬さんの会社の存在を知ってほしいし、頼ってほしいと。

廣瀬 そうです。私は過去があるからこそ、それが生かされて初めてうまくいった仕事だから。

 私や会社のことを知って、居場所を求めに来てくれているのに、その気持ちを返せなくて悔しい思いもしているんですよ。

 知的障害のある方や脚が悪くて障害者手帳を持った方を迎えたけど、現場での作業が難しかったり、他の社員と同じ賃金を払えなかったりして、かえってかわいそうな思いをさせちゃったことがあって。高齢者の方だと現場は65歳までなのでそれ以上の年齢の方を受け入れられなかったり、女性だと体がついていけなくて長く続けられないとか。

 私を慕ってくれていても、泣く泣く別れる経験があったんです。

――ひょっとして、土建業以外でも受け入れる場を作ろうといった考えが?

廣瀬 中古の建物を買ってビジネスホテルを作っている最中です。やったこともない旅館業だから不安だったんですけど、少しでも多くの人が立ち直るために身を置いたり、働ける場所になったらいいなと思って。

 女性だと、出所して風俗やキャバクラに行っちゃう子が本当に多いんです。行き場がないと行きやすいところに行ってしまうことを私も知ってるだけに、そうしたところ以外にもちゃんと働けるって場を作らないと。だけど土建業だと条件的に限られることもあるから、宿泊業でもやってみようって。

 宿泊以外でも、そんな場所や職種を増やしたいなって、新たな挑戦をしているわけなんです。

写真=志水隆/文藝春秋

(平田 裕介)