赤ちゃん星の「くしゃみ」 星が誕生するときにできる“暖かいリング状ガス雲”を初観測【香川大学】
香川大学教育学部の徳田一起講師が率いる研究グループが、地球から約450光年先にある星の誕生現場で、直径約1,000天文単位に及ぶリング状のガス雲を初めて観測しました。
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おうし座方向にある分子雲コア MC27を観測した結果、明らかになりました。
香川大学は、星の誕生直後、周囲のガスの温度や密度を大きく変化させながら、進化すること(=星の赤ちゃんのくしゃみ)をとらえた貴重な観測成果だとしています。
星の赤ちゃんとは
──分子雲コア MC27というのは?
(香川大学教育学部講師 徳田一起さん)
「"雲"のように物質(ガスやチリ)がもやもやと集まっているイメージです。その中心に、核となる星の赤ちゃんが生まれています。
分子雲コアは回転しているため、星の赤ちゃんの周りにはガスとチリで作られた平たい円盤が作られています。」
星の赤ちゃんのくしゃみ?
──星の赤ちゃんのくしゃみとは?
(香川大学教育学部講師 徳田一起さん)
「いわゆる星の赤ちゃんの周りは、磁場や物質の状態が複雑で、明らかになっていないことが多くあります。
星の赤ちゃんの『くしゃみ』と表現される現象で、リング状のガス雲が発生する可能性は理論上知られていましたが、今回、リング状のガス雲の観測に成功し、そのガス雲の温度は周囲よりも高いことが初めて明らかになりました」
なぜ成功?
──観測が難しい状況の中、なぜ成功したのでしょうか。
(香川大学教育学部講師 徳田一起さん)
「観測には、南米チリのアタカマ高地に設置された電波望遠鏡群、アルマ望遠鏡のコンパクトアレイと高周波受信機(Band 9)を使用しています。
アルマ望遠鏡は様々な波長の電波を観測することができますが、特にサブミリ波帯(高周波数)は観測の条件が厳しく、世界的にも観測が進んでいませんでした。
今回は、高周波受信機(Band 9)も用いたことで、これまでの観測では厚い層に覆われていてほとんど見えていなかった分子雲コアの中心、すなわち原始星付近のガスが明瞭に検出できました。
直径約1000天文単位の“温かいリング”を発見 観測データから、原始星の近くに直径約1000天文単位規模のリング状ガス雲が浮かび上がりました。
このリング状ガス雲の電波強度を詳しく測定すると、周囲の冷たいガスより少なくとも10 ケルビン以上は温度が高いことが分かりました」
“爆発”ではなく、磁場がガスを押し出した?
──なぜ、リング状なのでしょうか?
(香川大学教育学部講師 徳田一起さん)
「リング状構造を作るには、ガスが押し広げられるような(内側から外側へ向かう)エネルギー供給が必要で、そうした現象がおきたと推測できます。
一方で、リング中心に既知の原始星以外に新たな天体が存在する証拠はなく、そのほか原始星からの双極分子流(星の産声)などよく知られた現象で説明することが難しいことが分かってきました。
実際、この天体の赤外線観測で得られていた双極分子流で形作られたと思われる特徴とも一致しません。
研究チームは、原始星近傍を貫いていた磁束が急激に外側に向かって再配置される交換型不安定性に着目しました。
この現象が起こると、磁場によってガスが外側へ押し出され、結果としてリング状のガス雲が形成されます。
理論研究では、原始星から数百天文単位の距離で強い磁場が形成され得ることが示されており、強い磁場がある場所ではガスが音速を超えて衝撃波を生み出します。
その結果、加熱源となる星などが存在せずとも、衝撃波によってガスが温められると考えられます」
今後はどんな期待が?
──今回の研究成果から、今後どのような期待がもてるのでしょうか?
(香川大学教育学部講師 徳田一起さん)
「星の誕生の過程は、明らかになっていないことが多くありますが、その一端が垣間見えました。
今回はくしゃみによって作られたリング状のガス雲が観測されましたが、今後は、星の赤ちゃんごとに、くしゃみをする例、しない例を比較したりすることで、星の誕生の多様性や我々の住む太陽系の起源の理解がさらに進むかもしれません。」
