【“グリ下”から救い出す】「学校は君の場所ないだろって言われた」少女は諦めていた『高校進学』を目指す…年間約600人の少年少女の立ち直りを支援 大阪府警・少年育成室に密着
大阪の少年非行は全国ワースト級。こうした非行を減らす専門の部署が、大阪府警少年育成室。
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警察官のみならず心理学などの専門家が日々奮闘しています。育成室の職員とそこで出会った少女に密着しました。
『元保健室の先生』が少年少女らの立ち直りを支援
世界中から多くの人が訪れる全国有数の繁華街「大阪・ミナミ」。
その中心地・道頓堀のグリコの看板の下、通称「グリ下」は家や学校に居場所の無い少年少女らのたまり場となっていて、彼らが薬物の乱用や性犯罪などに巻き込まれることもあります。
去年6月、「グリ下」で少年らに声をかける大人たちがいました。
(警察官)「身分証持ってる?」
(少女)「持ってないです」
(警察官)「悪いことしてない?」
(少女)「なんもしてなかったです」
大阪府警の少年育成室に所属する、警察官と警察職員です。
少年育成室は、心理学の専門的な知識を持つ職員らが「グリ下」などで補導された少年少女の立ち直り支援を行っています。
少年育成室の上田文さん。もともと中学の保健室の先生でしたが、臨床心理学を学ぶため大学院に進学し、去年4月に警察職員になりました。
(少年育成室 上田文さん)
「保健室で働いていたときも精いっぱいやってはいたんですけれども、どうしても限界があるというか。学校に来られなくなった子たちはどうなるんだろうというのがすごく私の中で引っかかっていて、ここに来たことでそういった子たちと出会うチャンスがあるんじゃないかなと」
学校の先生から「グリ下行ってるからここの学校は君の場所ないだろって」
上田さんのもとには、配属後すぐからひとりの少女が通っています。
中学3年生のはるなさん(仮名)。「グリ下」にいるところを警察に補導されました。
(少年育成室に通うはるなさん 仮名)「(学校の先生からは)『グリ下』行ってるからここの学校は君の場所ないだろって(言われた)」
(記者)「オーバードーズ(薬の過剰摂取)などをしていたことはある?」
(はるなさん 仮名)「病んでるときとかはしたことある。(薬の)1シートとか一気に飲んでいい気持ちになるみたいな」
中学2年の冬から学校に行かなくなり、「グリ下」に顔を出すようになったといいます。
咎めるのではなく、一緒に考える
【上田さんとはるなさん(仮名)の会話】
(はるなさん 仮名)「まあ悪い人もおるけど、正直未成年しかいないから『グリ下』は、なんもできひんやんって。ベつに遊んでるだけでなにが悪いんって思うけど」
(上田文さん)「そんな危ないことないよみたいな」
ここでは、これまでの行動を咎めるのではなく、なぜそうなったのかを一緒に考え、解決策を探ります。
(はるなさん 仮名)「(上田さんは)しゃべりやすい。言葉が全部出せるみたいな。学校の先生に相談しても(言葉が)全部出せない感じ」
面談だけではなく様々な社会とつながる支援活動
去年7月、はるなさんは盲導犬の訓練施設「日本ライトハウス」を訪れました。面談だけではなく様々な体験を通して、「思いやりの心」や「社会を生き抜く自信」を育てます。
(はるなさん 仮名)「かわいい」
上田さんと出会ってから徐々に学校に通い始め、「グリ下」から離れるようになっていました。
しかし…
(上田文さん)「はるなさん(仮名)がもしかして『グリ下』にいたんじゃないかってちらっと聞いたんだけど、それはちがう?」
「はるなさんを『グリ下』で見た」という情報が寄せられたのです。
(はるなさん 仮名)「木曜は外出たけど『グリ下』には行ってない」
信頼関係ができ始めているからこそ、腹を割って話す
否定されると、上田さん、それ以上は強く問いただせません。
見かねた先輩の警察官が間に入ります。
(少年育成室 警察官)「はるなさん(仮名)が夜中に(グリ下に)いたことを知ってるからこうやって聞いてる。はるなさん(仮名)のことかわいいと思ってるし、なんとかいいようにしたいと思ってるから、こうやって強い注意をするから、どうしても最初ごまかしたりしてるのはわかってるんだけれども」
信頼関係ができ始めているからこそ、腹を割って話すことが大切です。
(上田文さん)「信じてあげたいなという気持ちと本当はどうなのというところがずっとあって、次の質問もどうしようかなと考えながらで。一緒に話を聞いて、立ち直りの支援をして、はい良くなったという感じではなく、やっぱりまだそこは難しいんだなというところ」
中学卒業後の進路は…
はるなさんが育成室に通い始めて5か月が経ちました。そろそろ中学卒業後の進路についても考えなければいけません。
(上田文さん)「これから人生ちゃんとしていかなあかんと思ってくれているタイミングだから、しっかりそこを一緒に考えていけたらいいなと思うので」
ここに来てから将来やりたいことに保育士が加わりました。上田さんのように「人を育てる仕事」がしたいと思うようになったからです。
【上田さんとはるなさん(仮名)の会話】
(上田文さん)「保育士になるためには、はるなさん(仮名)は子どもが好きで経験もあるし、頑張れそうだと思うけど、もっといまの自分が頑張らなあかんというところってどこだろう」
(はるなさん 仮名)「勉強とか。子どもの考え方とか。勉強しないと自分の責任取れないから」
(上田文さん)「めっちゃ立派なこと言うやん。責任やな。子ども預かってるんだもんね。命だしな」
「びっくりするくらい成長」高校進学を目指す
まずは夢への第一歩として、あきらめていた高校進学を目指します。
(上田文さん)「本当にびっくりするくらい成長してます。変わったなあって。正直ここまで変わってくれるんだってびっくりするくらい」
(はるなさん 仮名)「最初は(ここに来るの)めんどくさいなぁと思ってたけど、時間がたって、これは私のためやから、行かなあかんなと思って」
はるなさんの母親は、上田さんのおかげで娘が変わったと話します。
(はるなさん(仮名)の母親)「(上田さんと)話し終わったらマジックみたいに変わるねん、娘が。お母ちゃんごめんなって。すごいなぁと思って」
将来のイメージを…受験を前にこども園を訪れる
今年1月、はるなさんと上田さんは、東大阪のこども園を訪れました。高校受験を前に将来のイメージを膨らませてもらおうと上田さんが園に頼み込んだのです。
【園児とはるなさん(仮名)のやりとり】
「好きなお菓子はなんですか?」
(園児)「もも?」
(はるなさん 仮名)「ミルクケーキ」
(さくらいこども園 園長)「やりがいがある仕事だと思います。勉強もせなあかんで。でもそうやって頑張ったらすごく楽しいし、いい仕事だと思います」
上田さんははるなさんに手作りのお守りを準備
今年2月、高校受験まであと2日。勉強のラストスパートをかけます。上田さんは、準備してきたものがありました。
(上田文さん)「応援の気持ちを込めて、手作りであれなんですけど」
(はるなさん 仮名)「かわいい!」
手作りのお守り。「きっとうまくいく」という願いを込めます。
(上田文さん)「きっとうまくいく。ここに念を込めたので、きっと(受験日の)木曜日と金曜日も大丈夫です」
(はるなさん 仮名)「ありがとうございます」
ついに合格発表の日
3月2日、はるなさんの高校の合格発表の日がやってきました。
(上田文さん)「めっちゃ心配してたんだけど。大丈夫。一緒に(結果)見れるから」
【上田さんとはるなさん(仮名)の会話】
(上田文さん)「押します。いい?…合格!おめでとう!」
(はるなさん 仮名)「やったー!」
(上田文さん)「おめでとう」
(はるなさん 仮名)「まずはありがとう」
(上田文さん)「どういたしまして。こちらこそ一緒に頑張ってくれてありがとうございました」
(はるなさん 仮名)「前の私と今の私は全然ちがうけど、もともと中学2年のときの私はルールも聞かないし、いまは全然ちがうなって」
(上田文さん)「何回も会ったりとか一緒にいろんな活動したりして、関係が深まっていくと、すごく実は素直というか。すごく私も支えられたというか、頑張って良かったなって思わせてもらってるなって」
【上田さんとはるなさん(仮名)の会話】
(上田文さん)「じゃあこれからも頑張ってください」
(はるなさん 仮名)「はい、さようなら」
保護者や地域、学校側も相談できる「大阪府警 少年育成室」とは
「大阪府警 少年育成室」は、警察官と警察職員が約50人在籍し、年間で約600人の少年少女への立ち直りの支援を行っています。
社会とつながる支援活動を行っていて、「農業体験」「スポーツ教室」「寺での座禅体験」など、達成感や大人への恐怖感の払拭にもつなげているといいます。
「少年育成室」は、“少年”だけではなく、保護者や地域の人、学校側も相談をすることができます。事例として、「深夜に子どもが出歩いてやめない」「子どもがSNSで知り合った知らない人に会おうとしている」などがあるということです。
「(住んでいる都道府県)警察 少年相談」と検索すると、電話やLINEなどから相談ができます。
【大阪府の相談先】
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電話・LINEなどから相談することができます。
(2026年3月12日放送 MBSテレビ「よんチャンTV」内『密着』より)
