【南海トラフ巨大地震】エレベーターに数日閉じ込められ、死ぬかもしれない…その時のために考えておくべきこと
今年(2026年)で東日本大震災(2011年3月11日)から15年。環太平洋火山帯に位置する日本列島は、揺れから逃れられない宿命にある。日本気象協会の過去の地震情報を確認すると、震度1以上の揺れは、ほぼ毎日、列島のどこかで起こっている。熊本地震(2016年)、能登半島地震(2024年)など甚大な被害の爪痕を残す地震も少なくない。そんな中、いつ起きてもおかしくないと想定されているのが南海トラフ巨大地震だ。未曽有の揺れに私たちはどう行動し、どう対処し、どう生き残る道を探ればいいのか。
4月23日に第5巻が発売する漫画『南海トラフ巨大地震』(講談社刊)の原作者bikiさんに、執筆意図と地震後の世界での生き残り方などを尋ねた。(取材・文=渡邉寧久)
浮き彫りになった地震リスクへの脆弱性
つい先日(2月22日)、東京スカイツリーのエレベーターが停止し、乗客20人が閉じ込められるトラブルが起こった。原因はケーブルの破損で地震ではなかったが、エレベーター管理会社が復旧を急いだにもかかわらず、乗客救出までには5時間半もの時間を要した。水、食料、トイレ等いざという時の備えが、社会に突き付けられた。
南海トラフ巨大地震が発生した際には、約1万9千人がエレベーター内に閉じ込められると想定されている。スカイツリーのケースのように外部と連絡が取れ、復旧まで短時間で済めばまだいい。連絡が取れず、何日も閉じ込められたとしたら……。エレベーターの中で命を落とすことすら考えられないわけではない。
何が起こるのか、正直その時にならなければ分からないのが南海トラフ巨大地震だ。
ただ一つ、はっきりしているのは、
『今後30年以内に80%程度の確率で発生し、最大震度7、死者数約29万8千人、経済被害225兆円以上』という内閣府等による被害想定だ。東日本大震災の死者行方不明者数の約13倍という甚大な被害をもたらす地獄のような揺れが、明日起きるのか、30年後に起こるか、それは人知の及ばない話。ただ直近1300年ほどの間に10回以上起きたとされるこの巨大震災は、そこまで遠くない未来に、必ずや日本列島を襲う――。
秩序も理性も崩壊した世界で、人々はどう行動するか
その瞬間、世界は一変する。ビルも道路もインフラも秩序も理性も崩壊した世界で、人々がどう行動するかを描くために、bikiさんは、作品の舞台に名古屋を選んだ。
「関東の人にも関西の人にも、名古屋は心理的にそう遠くはない場所として認識してもらえるでしょう。また名古屋であれば、揺れに加えて、津波、港湾火災など、災害を多角的に描ける。以前、石油関係の仕事をしていて、名古屋には足を運ぶこともありましたので、土地勘があったことも決め手の一つです」
主人公は、巨大地震発生時に名古屋港にいた27歳の派遣社員・西藤命(さいとう・めい)。コンプレックスが強く、生きる意欲が薄く、パチンコにうつつを抜かし、生きる目的もやる気もない青年だ。bikiさんは第4巻で主人公に
「夢とか進路とかそういうの全部どうでもよくて 何となく、『こんな世界壊れちゃえばいいのに』そうぼんやり思いながら ながされるままに生きてきた……」
と語らせている。
「うだつがあがらない青年が未曽有の大災害に遭遇したことで、生き方を見つめ直し、自分の人生にポジティブに変わっていくさまというのは、多くの方が読みたい物語にできるのではと思った」と第一の設定理由を明かす。いま一つの理由は、
「カリスマ性があると遠い存在になっちゃう。どこか自分の隣にいそうな、小学校のクラスにこんな子いたなぁ、というキャラクター設定にすることで、感情的な距離を縮め物語に没入して欲しいなと思って」
目をつけたのは、サバイバルのプロ
いうなればダメ人間だった主人公が、自分を含む多数の生命が瀬戸際に立たされた現場で目覚め、真の大人へと成長していく物語だ。主人公を導くメンター役としては、元自衛隊レンジャー隊員が登場する。
「主人公が変わっていくうえでの、ロールモデルとなるようなキャラクターは必要ですよね」というところから、bikiさんは、サバイバルのプロに目をつけた。
元レンジャー隊員は主人公に、災害時に生き抜くための全てを教えようと決意し、主人公は教えを吸収しようと、生まれて初めてと思えるほど必死になる。
【後編を読む】<「南海トラフ巨大地震」で人間の「闇」がむき出しに…1本のペットボトルの水で一触即発の「世紀末状態」をどう生き残るかという究極の問い>
【つづきを読む】「南海トラフ巨大地震」で人間の「闇」がむき出しに…1本のペットボトルの水で一触即発の「世紀末状態」をどう生き残るかという究極の問い
