「カンブリア宮殿」900回記念スペシャル第1弾は「三越伊勢丹ホールディングス」知られざる番組の舞台裏

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9月5日(木)に、放送900回を迎える経済番組「日経スペシャル カンブリア宮殿」(毎週木曜 夜11時06分)。2週にわたり、「ニッポンの小売りの未来…大逆襲が始まった!」をテーマに、「三越伊勢丹ホールディングス」「しまむら」のトップを招いたライブトークをお届け。ニッポン経済のいま、新たなニッポン経済の姿に、村上龍と小池栄子が迫る。

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「テレ東プラス」は鈴木亨知チーフプロデューサーにインタビュー。番組の軌跡や舞台裏、900回記念スペシャルの見どころなど、前後編にわたっておくる。

“未来の進化を担う経済人”に共通する資質



――2006年4月17日にスタートした「カンブリア宮殿」。今回で900回を迎えますが、開始当初から変わらない番組のコンセプトをお聞かせください。

「チャレンジの末に成果=結果を出した企業・団体の経営者やトップをスタジオにお招きして、世の中に広く受け入れられている商品・サービスができるまでの道のりを紹介するととともに、企業の戦略、経営者の指針、物事に取り組む際の姿勢などを視聴者の皆さんにご覧いただく。そこは、スタート以来18年間、変わりません。
最近では、栗山英樹さん(2023年12月21日放送)のようなスポーツ関係者を始め、政治家や研究者など、その時々で注目されているゲストもお招きしています」

――記念すべき第1回目の放送は「トヨタ26万人の人事戦略」と題し、トヨタ自動車副社長(当時)の張富士夫さんが登場しました。当時、MCの村上龍さんとは、番組の方向性について、どんな話し合いが行われたのでしょう。

「トヨタの成功要因を挙げていくと、トヨタにしかできない独自のものと、他の企業・団体でも参考になる普遍的なものがあったので、『カンブリア宮殿』では、そこをごちゃ混ぜにせず、分けて紹介するということを話し合いました。これは、今も続く番組の基本方針です。

村上さんが作家ならではの視点で企業の本質に迫るところが、他の経済番組とは一線を画しているところ。視聴者目線でゲストに問いかける小池栄子さんの存在も大きく、こちらのコンビもスタート当初から変わりません」

――ゲストがトップを務める企業・団体の取り組みをVTRで紹介しながら、村上さん、小池さんとトークを展開。村上さんの「編集後記」で締めくくるという番組のフォーマットも、18年間変わりません。現場は何人のスタッフで、どれくらいの期間取材するのでしょう。

「リサーチを行う班、取材する班、収録に向かってVTRなどを準備する班という具合に、常時10班、1班4〜5人くらいのスタッフが同時進行で稼働しています。
収録は2週間に1回。スタジオでのトークをもとに追加取材などを行って、取材開始から放送まで2〜3〜4カ月ほどかかる場合もあります」

▲報道局 鈴木亨知チーフプロデューサー
――ゲストで迎える企業・団体の経営者やトップの人選はどのように?

「世の中に広く受け入れられている商品やサービス、あるいは施設がどうして生まれたのか、なぜ人気があるのか、どこの企業・団体が作ったのか、どんな人が経営していて、そこではどのような経営方針・理念のもと仕事をしているのか…という素朴な疑問からリサーチに取りかかる場合が多いです。

番組スタッフが探してくる場合と制作会社の企画を採用する場合がありますが、どちらも選ぶ基準は、1時間かけてじっくりと伝えられる内容であるかどうか。企業・団体の大小にはこだわらず、深く掘り下げられるだけの歴史、ストーリーがあるか。さまざまな角度で取材できる切り口を持っているかどうかに重きを置いています」

――2007年に発売された書籍「カンブリア宮殿 村上龍×経済人 スゴい社長の金言」の“まえがき”で、村上さんは「現代の優れた経営者は、常に危機感を持ち、謙虚で、現場に足を運ぶこととコミュニケーションを何より大切にしていて、ほかに何より明るい」と。
鈴木プロデューサーは、“未来の進化を担う経済人”に共通する資質は、どこにあると思いますか?

「およそ900人のゲストをお招きして思うのは、チャレンジする姿勢です。そこそこの努力である程度の成果が出る選択肢と、誰も手を付けていない…いわゆるブルーオーシャンと言われるところに挑む選択肢がある場合、後者を選択するゲストがほとんど。多くの人間が尻込みし、反対するところに、果敢にチャレンジして大きな成果を上げています。
そして、社員やそこで働く人を大切にしている。だからこそ、周囲を巻き込んでチャレンジすることができ、成果を出せるのだと思います。

もう一つは、村上龍さんもおっしゃっているように、謙虚で明るく、なおかつ、すでに成功していても現状に満足しないこと。例え大きな成果を出したとしても、トップの皆さんは、常に“発展途上だ”と思っているのではないでしょうか」

――村上さんは、「利益を優先していない」とも。

「そうおっしゃる経営者・トップがほとんどですが、みなさん成果を出しておられます」

――続けて「けれども、もうかっている。それが不思議」だと。

「きちんと利益を出す形を作り、継続している…そこは、『カンブリア宮殿』で紹介する企業・団体の一つのポイントではありますが、番組では、“なぜ利益を出しているか”という疑問には、あえて結論を出しません。視聴者の皆さんに一緒に考えていただくということが番組の基本方針だからです。

壁の乗り越え方、困難を突破するやり方は人それぞれですので、我々はそのヒントを提示する。番組では『金言』と呼んでいる経営者・トップの言葉から何か感じていただければいいかなと思っています」

――900回記念スペシャルのテーマは「ニッポンの小売りの未来…大逆襲が始まった!」。 第1弾では、三越伊勢丹ホールディングス・細谷敏幸社長を招き、コロナ禍での小売りの厳しい環境から都心の旗艦店を中心に業績を急回復させた手腕を紹介します。


「コロナ禍以前からずっと苦境にあえいできた百貨店という業態で、気が付けばバブル期を超える好業績をたたき出した三越伊勢丹。これってどういうこと? という疑問からリサーチをして、取材を進めました。そうすると、インバウンドの影響だけではないことが分かり、そこには違った取り組みがあることが見えてきた。

細谷社長いわく『百貨店を科学する』――。その意味は、顧客データを徹底的に分析し、“マスを相手にしながら個をつかむ”ということ。ビジネスの裏側を含めて、“過去のビジネスモデル"と言われた百貨店をどう再構築したのか――。900回にふさわしい内容になったと自負しておりますので、どうぞご期待ください」

続く後編では、鈴木プロデューサーが、「カンブリア宮殿」で印象に残った回を紹介。9月12日(木)放送、900回記念スペシャル第2弾(「しまむら」鈴木誠社長)の見どころも紹介する。

【9月5日(木)放送 900回放送記念第1弾】
ゲスト:株式会社三越伊勢丹ホールディングス 社長 細谷敏幸
「バブル超え!“百貨店を科学して“未来の店を創る!」

コロナ禍での小売りの厳しい環境から、都心の旗艦店を中心に業績を急回復させた三越伊勢丹。富裕層から若者まで幅広い客層を百貨店に振り向かせる事に成功している。「百貨店を科学する」という信条で、海外店舗や系列の岩田屋など次々に再建に成功し三越伊勢丹 ホールディングス のトップに就任、最高業績を叩き出した細谷社長。“過去のビジネスモデル"と言われた百貨店をどう再構築したのか。

(取材・文/橋本達典)