パリ五輪を目ざす大岩ジャパンではリーダー格の藤田。勝利への強い気持ちでチームを牽引する。(C)Getty Images

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 藤田譲瑠チマ(シント=トロイデン。以下、STVV)と言えば、2019年にU-17日本代表入りした頃から「パリ五輪世代のリーダー格」と位置づけられてきた。

 19年のU-17ワールドカップに参戦し、21年U-20W杯はコロナのため中止になってしまったが、大岩剛監督率いるチームには21年の発足当初から名を連ね、主軸ボランチとして周囲を鼓舞し続けている。

「僕は特別にリーダーシップを持っているという自覚はないんです。たぶん、同世代のみんなに聞いたら分かると思いますけど、全然そういうタイプでもないですし、規律あるキャプテンのような人間性でもない(苦笑)。ただ、試合になったら勝ちたい気持ちがものすごく強いし、周りが広く見えるポジションなので、声掛けをしているだけなのかな。

 もう1つ言うと、僕は結構怖がりなんですよね(笑)。たくさんの情報を持っていないと怖いので、意識的に周りを見て、慎重に、慎重にプレーしています。見えていないところで無謀なワンタッチとかスルーパスなんかはできない。視野を広げるためにコミュニケーションを大切にしているところはあります」と、藤田は自己分析する。
 
 とはいえ、ピッチ上で闘将になれるということは、もともとの人間力があるということ。ナイジェリア人の父と日本人の母の間から生まれた藤田は、1人っ子として大切に育てられたが、両親の立ち振る舞いを見て、学んだことは少なくなかったようだ。

「僕の両親はものすごくお人好しで、自分の身を削ってでも、誰かに何かを与えてしまうようなタイプでした。要領は決して良くないかもしれないけど、僕から見ても凄い人でした。自分がその気質を引き継いだかと言えば、必ずしもそうではないかな。

 僕は嫌なことは嫌だと言うタイプなので。ワガママなところもあるんじゃないかな。小学校2年から一緒にサッカーをやってきた山本理仁に聞いたら分かるんじゃないですかね」と、藤田は笑う。1人っ子気質は確かにあるのだろうが、ピッチ上の献身性とハードワークは両親譲りと見ていいはずだ。

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 その後のキャリアも順風満帆ではなかったと本人は言う。ヴェルディユース時代は特にそう。高校1年の時、山本ら同学年の仲間たちは次々と試合に出るようになったが、自分だけは出られず、停滞を強いられ、自信を失いかけた時期があった。

「そんな時、寄り添ってくれたのは、ジュニアユースの時にお世話になったコーチのジョゼ(・アントニオ)さんやマサさん(古川将大)でした。何気ない一言で励ましてくれて、背中を押してくれた。それで勇気をもらって前を向くことができました。

 今年の前半にマリノスで試合に出られなかった時は、そこまで落ちることはなかったです。自分自身の目標や目ざすべきところがハッキリしていたので、とにかく前向きに頑張るだけでしたから。僕は物事を逆算して、一つひとつキッチリ考えるタイプではないですし、毎日できることを頑張っていくだけ。それは今も変わらないですね」と、前だけを見て、突き進んでいく覚悟だ。
 
 今季のSTVVでは、コンスタントな出場が最初のターゲットになるが、藤田には理想とするボランチ像がある。

「僕が今、一番注目しているのは、ロドリ選手(マンチェスター・シティ)。190センチの大柄なフィジカルを考えると、日本人には難しいのかもしれません。それでも、ボール奪取、パスカット、組み立てやパス出しなど、すべての仕事を平均的にやれるように伸ばしていく必要があると思っています。

 今の日本代表を見ていても、遠藤航さん(リバプール)や守田(英正)さん(スポルティング)といったレベルの高い選手が揃っていますけど、みんな強度がすごく高い。日本でよく見ていた伊藤敦樹さん(浦和)もJリーグで活躍しているし、動きがダイナミックで、運動量も豊富だといつも刺激を受けていました。

 伊藤さんが肉体改造をしたという話も聞きましたけど、僕自身ももっとパワーアップしなければいけないと痛感しています。食事の摂り方はもちろんのこと、トレーニング面もパーソナルトレーナーと相談しながら取り組んでいます。走り方の改善とかはやってないんですけど、もっと出力が上がるように、筋力アップや動き方の工夫なんかには取り組んでいます」
 
 高い基準を持って努力を重ねている藤田。「25〜26歳でプレミアリーグ」という目標から照らし合わせると「今の自分はまだ半分くらいのところかな」と本人は話していたが、初めての海外挑戦でモチベーションが上がり、成長曲線も引き上げていけるはずだ。

「今は本当にすごく充実している。ベルギーに来てから本当に楽しいですね。子どもの頃から一緒にやってきた理仁と、ポジション争いをするという環境もポジティブに捉えています。

 この流れを継続していって、最終的には今季ベルギー1部のベストイレブンに選ばれるくらいの選手になりたい、どんどんボールを奪いながら、チャンスがあったら前に出ていけるような推進力も持ち合わせた選手になれればいいですね」と、彼は目を輝かせている。
 
 37歳のレジェンド、岡崎慎司が身近にいることも大きな学びになっている。ドイツのブンデスリーガで2年連続、二桁ゴールを挙げ、藤田が憧れるプレミアリーグで優勝し、さらに日本代表で50ゴールを挙げた偉大な先輩と共闘できるチャンスはそうそうない。近くにいるだけで「世界基準とは何か」を痛感する日々だ。

「岡崎さんの動き出しの速さとか、常にゴールを狙ってる感じ、サッカーへの取り組み方なんかを間近で見ていると、世界で成功するために何をすべきかが分かります。もちろん人間的にも成熟していく必要がある。人を惹きつける選手じゃないと、本当のトップにはいけない。そういうことも岡崎さんからは学ばせてもらっています」

 あらゆる経験を力にして、パリ五輪世代の主軸ボランチは貪欲に高みを追い求めている。その努力が結実する日はそう遠くなさそうだ。

※第2回終了(全3回)

取材・文●元川悦子(フリーライター)