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ランチアらしい盾形のラジエターグリル

アレマーノ社のランチア・アウレリア B53にシルエットが似た、クーペのB52をベルトーネ社が1952年に発表している。その頃のカロッツェリアでは、相互に影響を及ぼし合うことが一般的だった。別のスタジオへ下請けに出されることも、珍しくなかった。

【画像】麗しいミケロッティ・ボディ ランチア・アレマーノ・アウレリア B53 同時期の個性的なクラシックも 全109枚

例えば、アウレリア・クーペ B20をデザインしたのは、デザイナーのフェリーチェ・マリオ・ボアーノ氏。ヴィオッティ社が当初はボディを成型したが、注文が増えすぎ、対応を引き受けたピニンファリーナ社のデザインだと認知されるようになっている。


ランチア・アレマーノ・アウレリア B53(1953年式)

そのボアーノも、ピニンファリーナ社によるシチタリアから、B20のインスピレーションを受けていなかった、というのは嘘になるだろう。良くいえば、お互いに高め合うことで、一目置かれるようなイタリアン・スタイリングは生み出されていた。

アレマーノのアウレリア B53へ話を戻すと、前後のバンパーはとてもシンプル。フロントノーズには、盾の形をしたランチアらしいラジエターグリルが与えられているが、縦格子ではなく、十字格子なことが珍しい。

優しく膨らんだドアに、流線型のドアハンドルが配される。ホイールキャップは、通常のアウレリアより重厚感がある。フロントフェンダーには、クーペ・アウレリアと上品に綴られている。リアには、トランクリッドのハンドルとテールライトが静かに並ぶ。

細部まで抜かりないポップなインテリア

リアヒンジの長いボンネットを開けば、シングルキャブレターを載せたコンパクトなV6エンジンが姿を表す。シリンダーが左右で入れ違うように並び、パラパラとタペット音を鳴らすヘッドカバーと、ディストリビューター・キャップが特徴的だ。

バルクヘッド側には、スライディングピラー構造のフロント・サスペンションを滑らかに保つ、潤滑油のタンクがある。ラジエーターには、サーモスタット制御のシャッターが備わる。ヒューズも、しっかりケースへ収められている。


ランチア・アレマーノ・アウレリア B53(1953年式)

トランクリッドを開くと、見事な車載ツールキットが収まっている。ガソリンの給油口も、荷室の内側。ダッシュボードにも燃料計は備わるが、念のため、ガソリンタンクにもメジャースティックが用意されている。

長いドアを開きアレマーノ・アウレリア B53の車内へ。インテリアは、1950年代のジェラート屋さんのようにポップ。前後のシートはベンチタイプで、ボタンの付いたレザー張り。ゆったりしているから、体型次第では6名まで乗れるだろう。

ベークライト製のサイドウインドウ・ワインダーやドアハンドル、ステアリングホイール・リム、細かなスイッチ類などがキャラメル色に染められ、統一感を生んでいる。レブカウンターとスピードメーターは大きく、クロームリングが輝く。

ラジオデッキには、主要な都市のイニシャルが振られ、チューニングしやすい気配りが。ドアポケットは大きく、ドアパネルにはアレマーノ社のロゴがあしらわれる。細部まで抜かりない。

ゆったり走らせるのが気持ちいい

ランチアの工場で生産されたアウレリア・ベルリーナは、どちらかといえば禁欲的な内装だった。こんな空間に身をおいて運転すれば、豊かな時間を過ごせるに違いない。

キーを回して奥へ押し込み、V6エンジンを目覚めさせる。コラムシフトのレバーは、1速が1番奥側。クラッチはつながるポイントが明確で、滑らかに発進できる。


ランチア・アレマーノ・アウレリア B53(1953年式)

ボディの内側には、しっとりした乗り心地のために鉛の重しが詰められ、70psのV6エンジンが想像以上の活発さを披露することはない。加速はスムーズで、1950年代のドライバーへ感動を与えたであろう、不足ないパワー感はある。

トルクが太く、ドライブトレインは高精度で、ゆったり走らせるのが気持ちいい。ドライな排気音は、高級な響きに聞こえる。

ステアリングホイールには適度な重みがあり、安定していて落ち着いている。ブレーキはしっかりスピードを絞る。ふくよかでクラシカルなボディとは裏腹に、アレマーノ・アウレリア B53は、1970年代のような確かな能力を醸し出す。

状態は素晴らしい。多額の費用を投じたレストアから、さほど時間は経過していない。数年前に、オランダ(ネザーランド)のクラシックカー・コレクターが売りに出したタイミングで1度目にしているが、美しさはまったく衰えていない。

現在はアメリカ・カリフォルニアで過ごしており、トルコもしばしば走るという。ベルギーのクラシックカー・ディーラーを介して、新たなオーナーを探している。走行距離はさほど長くないが、空路や海路での移動距離は相当なもののようだ。

番外編:アウレリア・オートテライオの系譜

B50/B51(1950〜1952年)

ピニンファリーナ社以外にも、ベルトーネ社やボネスキ社など、複数のコーチビルダー向けに提供された、初期のアウレリアのプラットフォーム・シャシー。1754ccのV6エンジンを搭載し、B51の方がファイナルレシオがショートで、タイヤの幅は太い。

B15/B15S(1952〜1953年)

ベルトーネ社によって、6ライト・サイドガラスを備えるロングボディのリムジンが81台製造された。エンジンはベルリーナのB21用2.0Lへ拡大され、最高出力は66ps。16インチのホイールを履き、ファイナルレシオも異なる。

B52/B53(1952〜1953年)


ランチア・アレマーノ・アウレリア B53(1953年式)

B50/B51の進化版。様々なコーチビルド・ボディに対応するため、2.0Lエンジンを搭載。ヴィオッティ社が、木材をボディに用いたウッディ・ワゴンを47台提供した。多くのコンセプトカーの他、今回のアレマーノ・アウレリア B53も含まれる。

B55/B56(1955〜1956年)

アウレリアのプラットフォーム・シャシーの最終仕様。ドディオン式のサスペンションを採用し、ピニンファリーナ社が専ら利用した。エレガントな見た目のフロリダとフロリダIIなど、コンセプトカーのベースになり、後のフラミニアを導いたといえる。