高級トースターで有名なバルミューダ、2017年には炊飯器も発売しています。トースターほどの爆発的ヒットにはなりませんでしたが、独特の食感から特に「硬めごはん好き」から人気があります。

そんなバルミューダが5年ぶりとなる新型の炊飯器「BALMUDA The Gohan(K08A)」を発売(2022年12月)。新モデルの気になる実力を、前モデルも割と長く使っていた筆者がじっくりレビューします。

新型のBALMUDA The Gohanは、昔ながらの「かまど」を意識したデザイン。鋳物のようなマット塗装で、シンプルながら高級感があるのはさすがバルミューダ

旧モデルも新モデルも名前は同じ「BALMUDA The Gohan」なので、名前だけでは新旧かわかりにくいですね。新モデルはK08Aという型番ですが、製品名に記載されていないことも。旧モデルは筒型、新モデルは本体下部が緩やかな角形なので、デザインで判断するとよいでしょう

○前モデルと同じ、お米が「踊らない」二重釜炊飯方式

以降の「BALMUDA The Gohan」は新型を指すことにします。BALMUDA The Gohanの大きな特徴は、スチームを使った珍しい炊飯方式です。

炊飯器は基本的に米と水を入れた内釜を加熱することで調理しますが、BALMUDA The Gohanは「外釜」の中に「内釜」を入れて炊飯する二重釜構造。水を入れた外釜を加熱し、ここから発生する水蒸気で内釜を包み込むようにして加熱する仕組みです。

本体サイズは幅242×奥行266×高さ219mm、重さは約4.6kg。カラーはブラックとホワイトの2カラー。横にある升は、付属の外釜に水を入れるときの180ml計量カップ

日本ではほとんど見かけない二重釜構造の炊飯方式

水蒸気で加熱するため、内釜の内部温度はもちろん100℃を超えることはありません。世の中には、高火力で勢いよく釜内を「踊らせる」炊飯器も多くありますが、BALMUDA The Gohanは「絶対に踊らない」炊飯器なのです。このため、お米同士がこすれて傷つきにくく、さらにデンプンが外に溶け出しにくいという特徴があります。



BALMUDA The Gohanの本体と二重釜。大きい釜には水を180ml、外側が銀色の釜には米と水を入れて炊飯します。最大の炊飯容量は3合です

高級炊飯器の多くは、炊飯の熱ムラ抑えるために内釜の「蓄熱性」にこだわっているため、内釜が重くなりがち。一方でBALMUDA The Gohanは水蒸気で内釜を包み込む加熱方式なので、そこまでの蓄熱性は必要としません。

ということでBALMUDA The Gohanの内釜はかなり軽量。内釜だけだと230g、外釜を合わせても495gほどしかないのです(実測値)。700g超の内釜でも高級炊飯器としては軽いほう――とされるなか、この軽さは圧倒的。高級炊飯器には内釜の重さが2kg近い製品もあるのですが、重い釜だと炊飯や洗い物が面倒に感じることが多々あるんですよね。BALMUDA The Gohanは取り扱いがラクでした。

○新型で炊いたごはんの味は……?

準備ができたら炊飯開始。BALMUDA The Gohanには5通りの炊飯モードがあり、まずは標準の「白米」モードで炊いてみます。

「炊き方」ボタンを押すたびにモードが切り替わります。目立つダイヤルはタイマーなどの時間合わせ用。あまりタイマーを使わない我が家では、ダイヤル操作の出番はほとんどありませんでした

炊き上がったごはんは、炊飯後に釜の中で混ぜてもお米が潰れたりせず、粒感がしっかりしています。このあたりは旧BALMUDA The Gohanと似た印象です。

実食してみると、新型のほうは香りや甘み、旨みが旧モデルよりも明らかに芳醇! 旧モデルは食感が際立っていたものの、正直「その米(銘柄)ならでは」の味や香りを出し切れていないという印象でした。

新型のBALMUDA The Gohanは、銘柄ごとの特徴的な甘みや旨み、香りをしっかりと引き出しています。正直、ごはんの味は格段の進化です。

食感に関しては、旧モデルほどシャッキリ感を強調していません。新モデルは比較的硬めに炊き上がるものの、噛むとちょっと「モチッと感」もある食感でした。



最初に炊いたお米は岩手県の「銀河のしずく」。しっかり旨みがありながらサッパリとした後味は、おかずに合わせるのにピッタリでした

明確な粒立ちと強い旨みを感じた「つや姫」のごはん。銀河のしずくよりも後に残る重厚な味です。塩だけで美味しいと感じました

なお、BALMUDA The Gohanは新旧ともに保温機能はありません。我が家は夫婦ふたり暮らし。一度に3合のごはんは食べきれないので、余った分は一杯分ずつラップで包んで冷凍しています。新BALMUDA The Gohanで炊いたごはんは、冷凍・解凍しても粒がしっかりしていて、ほぐれやすいままでした。この点では、冷凍派にもオススメできる炊飯器です。



冷凍ごはんを解凍したところ。冷凍ごはんを解凍するとツヤがなくなる場合もあるのですが、BALMUDA The Gohanで炊いたごはんはツヤも復活! かなり冷凍に向いている炊飯器だと思います

粒立ちがよいので、おにぎりにしても美味しい! ごはんを握ってもダマになっていないのがわかりますか?

白米モードの炊飯時間は50分〜65分くらいですが、BALMUDA The Gohanには約34分〜41分で炊飯できる「白米早炊」モードもあります。

個人的な感想としては、このモードは本当に炊けるだけ。お米独自の香りや甘み、旨みはあまり感じられず、硬めで弾力が少ない印象でした。ごはんを炊き忘れて急いでいるときや、チャーハンやカレーなど、ごはん単体の旨みを重視しない食事のときに利用するとよさそうです。

早炊きモードで炊いた「コシヒカリ」。見た目は悪くないのですが味は……

炊飯後に洗うパーツは、上ぶた、外釜、内釜の3パーツ

上ぶたは、蒸気用パーツを開いた状態で洗います

○二重釜構造ならでは? 玄米とお肉がとにかく絶品!

白いごはんがとても美味しかったBALMUDA The Gohanですが、それ以外にも「新しいBALMUDA The Gohanならでは!」と思えたメニューがあります。それが玄米と肉です。

玄米は最大2合までを「玄米モード」で炊飯し、炊き上がったものは玄米特有のモサモサ感がほとんどありません。中がふっくらとしていて美味! 玄米がそこまで好きではない家族も「これなら普通に美味しい」といっておかわりをしていました。

玄米っぽい食べにくさが少なく、ふっくらと炊き上がる玄米モード。玄米モードの最大炊飯量は2合まで

おかゆモードで作るおかゆも絶品! 沸騰させずに作るからか、お米の粒が潰れていないのに噛まなくても舌で潰れる柔らかさ。粘りも少なく料亭のような上品なできあがりでした

もうひとつ感動したのは肉の調理です。

炊飯器でおかずを調理する炊飯器調理を活用しているご家庭も多いと思いますが、今回はBALMUDA The Gohanに、鶏モモ肉・水・調味料を入れて調理。300gほどの鶏モモ肉を「炊き込み」モードで炊いたのですが……これがむちゃくちゃ美味しい!

いままでさまざまな炊飯器で鶏ももの蒸し鶏を作りましたが、炊飯器で作る蒸し鶏の美味しさはBALMUDA The Gohanが歴代で一番です。とにかく中心までふっくらジューシーなのです。

内釜に鶏モモ肉、酒、水、しょうゆ、塩、ショウガ、ネギを放り込んで、炊き込みモードで炊飯するだけ

できあがったスープで長粒米を炊いて「海南鶏飯」を作りました。長粒米もしっかり美味しく炊けています

鶏の柔らかさやジューシーさを伝えられないのが残念なくらい美味しく調理できます。中華料理の定番「よだれ鶏」を作るのにもピッタリ

逆に、調理に手こずったのは「キノコごはん」「五目ごはん」といった普通の炊き込みごはん。我が家は具材多めの炊き込みごはんが多いのですが、具材が多いと釜の中心部に芯の残ったごはんが……。バルミューダに問い合わせたところ、お米1カップあたり具材75gまでを目安にすると美味しく炊けるとのこと。たしかに具材を減らしたところ美味しく炊けました。

ごはん2合に鶏肉150g、キノコ2パックを入れた炊き込みごはん。具材が多すぎたため、釜中央部の米は生煮えなのに、米のまわりは水分がベチャつく不思議な仕上がりに……

具材を150g(米2合)以下にしたところ、炊き込みごはんも成功しました

BALMUDA The Gohanは最大炊飯量が3合、玄米や炊き込みモードだと最大2合しか炊けないので、大家族には不向き。また、保温機能がない、外釜に水を入れる手間が必要など、ライフスタイルによっては合わない家庭もあるでしょう。

一方で、外釜に水を入れる手間を惜しまないなら、白いごはんや玄米の美味しさはかなりのもの。さらに「蒸気を使った調理」を応用することで、普通の炊飯器ではできない調理も楽しめます。バルミューダらしい独特のスタイリッシュなデザインも魅力的です。今回は数カ月かけて新型のBALMUDA The Gohanをじっくり試しましたが、結論としては「誰にでもすすめられる炊飯器ではないけれど、ハマると大ファンになれる!」というものでした。

倉本春 くらもとはる 生活家電や美容家電、IoTガジェットなど、生活を便利にする製品が大好きな家電ライター。家電などを活用して、いかに生活の質をあげつつ、家事の手間をなくすかを研究するのが現在最大のテーマ。 この著者の記事一覧はこちら