山中慎介(写真:山口裕朗/アフロ)

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21日放送、NHK「プロフェッショナル 仕事の流儀」は、13度目の防衛に失敗した前WBC世界バンタム級王者の山中慎介を密着取材。失意の敗戦後に我が子からかけられた言葉を明かした。

29歳で世界王者となった遅咲きながら、「神の左」を武器に日本歴代最強とまで言われるようになった山中。だが、勝てば37年ぶりとなる連続防衛日本記録に並ぶ世界戦では、22歳のルイス・ネリ(メキシコ)に4回TKOで敗れた。

「ギリギリの闘いだけが自分を成長させてくれる」と、強い相手と勝負してきた山中は、大記録がかかっていた今回も強敵を選んだ。23戦無敗17KOという記録を誇っていたネリは、トレーナーが「総合面でいったら正直山中より強い」と明かしていたほどだ。

試合の3カ月前から始まった密着取材で、山中に異変が生じたのは、決戦まで1カ月を切ったころ。ハードパンチャーの挑戦者を警戒し、持ち前のフットワークにガードも加える新たな試みに挑戦していた山中だが、ガードを意識しすぎて体が固まり、フットワークのキレが失われていたのだ。

「本当に難しいですね、調整って」と漏らす山中が、「自分で体が動けていないと感じている」と明かすほどの状況に、陣営は以前のスタイルに戻すことを決断。ジムが練習を非公開としたことは、事態の大きさをうかがわせた。

ただ、再び公開されたころには動きも復活。山中は「やって合わなければまた戻せばいい、その繰り返し」「必要なかったというのも成長」と前向きな姿勢を貫き、1週間を切ったころには「この時点で自信がなかったことは世界チャンピオンになってからない」と口にした。

迎えた決戦、4回途中にタオルが投げ込まれ、プロ初黒星を喫した。だが、それから3日。「負けちゃいました」と笑顔で取材クルーを迎えた前王者は、「悔いは常に残っていない」と言い切った。

常に成長を続けてきた山中は、今回の試合でも「成長できた部分もありました」と語る。一方で、「子どもに『今回は負けちゃったけど、次やったらいけると思うよ』と言われて泣けてきたり」と、つらい心境もうかがわせた。

「プロに入ったときから一敗したら辞めるという覚悟」と話していた山中。21日時点で、今後の進退は明らかにしていない。