人的補償「甲斐野央」とFA「山川穂高」 “因縁の移籍”から3年で分かれた明暗…甲斐野は「西武躍進の原動力」、山川は「打率1割で2軍落ち」
西武ライオンズが強い。交流戦で14勝3敗1分と歴代最高勝率.824で球団史上初の優勝を飾り、ペナントレースでも首位を快走。その原動力のひとつとなっているのが、守護神を務める甲斐野央だ。150キロ中盤を常時超える直球とスライダー、フォークを武器にシーズン28試合登板で1勝2敗5セーブ16ホールド、防御率2.10をマーク。交流戦のV投手にもなった。ソフトバンクにFA移籍した山川穂高の人的補償で加入し、移籍3年目を迎えてブルペン陣に不可欠な存在になっている。一方でチームの主軸と期待された山川は46試合出場で打率.175、9本塁打、25打点と打撃不振から抜け出せず、今月1日からファームで再調整に。定位置が確約されない立場となり、両選手の明暗が分かれる結果となっている。

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V奪回のキーマン
西武を取材するスポーツ紙記者は、甲斐野についてこう語る。
「移籍1年目からチームに溶け込んでいましたね。明るい性格で積極的にコミュニケーションを図る。ベテラン選手が『あいつは西武の生え抜きだよ』と笑っていました。移籍してきた経緯を考えれば、心の整理をつけるのは難しかったと思いますが、新天地で活躍したい気持ちはヒシヒシと伝わってきました。度重なる故障で思うような結果を残せない時期がありましたが、投げている球は超一級品です。ソフトバンクに負けたくない気持ちは強いでしょう。V奪回のキーマンであることは間違いありません」
人的補償を巡って異例の展開
甲斐野が西武に移籍したのは23年オフ。西武の主砲として活躍していた山川がソフトバンクにFA移籍したことに伴い、人的補償で指名された。この一連の出来事を覚えている野球ファンは多いだろう。人的補償を巡り、異例の展開をたどったからだ。
「山川の人的補償で西武が当初、指名を打診したのが、和田毅でした。スポーツ紙がこの動きを報じると、ソフトバンクがチームの功労者を放出することに、SNS上で批判のコメントが殺到しました。球団の功労者で、将来の幹部候補でもある和田の流出は大きな波紋を呼ぶため、両球団が話し合って、西武が再び指名したのが甲斐野でした。ドラフト1位で入団し、プロ1年目に自己最多の65試合登板するなど救援で活躍してきた投手なので手放すのは大きな痛手でしたが、和田を出すわけにはいかない。断腸の思いで西武の要望をのむことになりました」(球界関係者)
戦力構想から外れる可能性も
山川は移籍1年目の24年に全143試合出場で34本塁打、99打点で2冠王を獲得し、リーグ優勝に貢献したが、その後は期待に応えるパフォーマンスを発揮できていない。昨年は130試合出場で打率.226、23本塁打、62打点。好調の期間が短く、スタメン落ちを経験。阪神と対戦した日本シリーズで3試合連続本塁打を放ち、MVPを受賞して日本一に貢献したが、1年を通じた働きぶりでは満足できるものではない。今年は5月以降に打率1割台と快音が聞かれず、右のスラッガーとして期待される正木智也に一塁の定位置を奪われる形に。現在は2軍で調整するなど、24年から4年契約を結んでいるが、置かれた立場は厳しくなっている。
「ソフトバンクは結果を出せなければ、FAで加入した選手に対してシビアです。横浜(現DeNA)からFA移籍してきた内川聖一は史上2人目のセパ両リーグで首位打者に輝くなど主力として活躍しましたが、20年は故障していないにもかかわらず1軍出場なしに終わり、出場機会を求める形で同年オフにヤクルトに移籍している。中日からFA移籍した又吉克樹(現オイシックス)も移籍1年目は中継ぎで14ホールドを挙げましたが、その後は若手の台頭でブルペン内での序列が下がり、1軍登板なしに終わった昨オフに戦力外通告を受けて退団しました。山川もこのまま下降線をたどるようだと、4年契約が切れる来オフに戦力構想から外れる可能性があります」
球界を代表するストッパーに
一方で甲斐野は西武移籍後、右肩上がりに結果を残している。移籍1年目の24年は右肘の違和感で離脱したため19試合登板にとどまったが、昨年は47試合登板で2勝3敗33ホールド、防御率2.47をマーク。今年は開幕からセットアッパーで稼働していたが、抑えを務めていたドラフト2位左腕の岩城颯空に疲れが見え始めたため、交流戦の途中から守護神となり4試合連続セーブを記録している。
ソフトバンクOBはこう語る。
「山川がFA移籍しましたが甲斐野を獲得できたので、西武は戦力面で中・長期的にプラスになると感じました。29歳と脂が乗り切る時期に入るし、持っている能力の高さを考えると球界を代表するストッパーになれます。たまにポカが出て余計な失点をするのが課題ですね。一方で山川は150キロを超える直球への対応力が明らかに落ちている。甘い球がきてもファールになったり、空振りが目立ちます。長距離砲は好不調が激しいタイプが多いですが、34歳という年齢を考えるとここから巻き返すのは容易ではありません」
西武はソフトバンクに昨年8勝17敗と大きく負け越したが、今年は8勝3敗と奮闘している。最後の砦を任された甲斐野がセーブを積み重ねてV奪回を果たせるか。リーグ3連覇を狙うソフトバンクは山川が復活できるか注目される。
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デイリー新潮編集部
